アットウィキロゴ
「のっち、」
頭がぼーっとする。
無表情で雑誌に耽る君が、不意にこちらを向いた。
「なに見とるんよ。」
意識していたわけじゃない。
無意識に君を見てたの。

漫画にゲーム、こんなにも魅力的なあたしの部屋でも、君はあたしを夢中にさせるでしょ。

「あ~ちゃん、あの…」
「今読んどるけぇ待って。」
あたしをするりかわして、視線を記事に落とす。
つまらんよ。

開け放たれた窓。
少し冷たい風が君の髪を遊ぶ。
「寒い。」
一言、言い放つと立ち上がった。
風に吹かれてワンピースが翻る。


薄い 羽のように
軽くしなやかに

「暑いん?」
暑くはない、けど熱いよ。
「閉めんでもええから。」
あたしの目の前を、ワンピースが通りすぎた。
遅れてきた甘い香り。

ふわり 香り残し
飛んで消えるように

窓の死角にあたるベッドに近づいて。
「借りるね。」
こういう時だけ柔らかく笑う。
あたしの返事は聞かずに、君はベッドに沈み込んだ。

すっかり空気に溶けた、君の香り。
あたしは虚しいよ。
すがるような気持ちで、君を見るけど。
2度は気づいてくれない。

くす、と漏れた笑い声がやけに響く。
シーツに広がる髪は、あたしを刺激する。
部屋の電球はあまり明るくないのに、眩しいよ。

甘い 光の粉
まるで誘うように

取り残されたあたしも、体が冷えてきた。
……気がする。


だから、ねえ、あたしもそっちに。
「行っていい?」
眉がぴくりと動いて、ちらっとあたしを横目で見た。
「狭いけぇ。」
「…あたしのベッド。」
手を伸ばして、あと少しで君に触れられる。

伸びきった指先がかする。
ひょいと肩を上げて逃げられた。
「やーだ。」
あたしのベッドなのに。
君もあたしのなのに。

君はベッドの上で少し回って、あたしに背を向けた。
遅れてついてゆくワンピースが、あたしを切なくさせる。

fry away
捕らえられない

「ほしーぃ…」
君の消えるような独り言にハッとする。
もぞもぞと動くたび、揺れる髪。

ああ 美しい

あたしが悪いんじゃない。
魅力的なのも、引き寄せるのも全部、
全部…あ~ちゃんじゃけぇ。

強い磁石みたいに
君は引き寄せる



ベッドが軋む音。
あたしは上半身だけベッドに乗り出す。
「…何するんよ。」
少しだけ乱暴に取り上げた雑誌。
あ~ちゃんの手が届かないところへ放る。

「遊ぼ。」
そっと、あ~ちゃんに跨る。
少し顔をしかめるものの、抵抗はない。
心の内が透けとるんじゃね。

「ねえ。」
柔らかいあ~ちゃんを潰してしまわぬよう。
あたしは硝子を扱うみたいに、そっと抱きしめる。

愛したいの
ギュッとしてるの

一旦、体を離す。
「あ~ちゃん」
あたしはあ~ちゃんの王子だから。
王子は姫に無理強いなんてせんよ。
捕らえたものは逃がさないけど。


あたしの姿で埋まる黒目が、わずかに揺れた。
「…何。」
なに、大したことじゃない。
決めるのはあたしじゃないし。

采配は君だけ

「あ、そ、ぼ」
意地悪してるわけじゃあないんだけどな。
耳元で呟いたそれに、電気が走ったような反応をした。
いいんよ、別に。
姫のお好きにどうぞ。

選んで 単純に
感情の 方向は

「好きにしんさいや」
やっとこさ素直に笑んで、あたしの髪を撫でた。
あたしは、それを求めてた。
んじゃあ、遊ぼっか。
「…ん」
目を閉じたお姫様に、キスを落とす。
同時に、一際大きく鳴った心臓。

try the new world.

あたしはあ~ちゃんと、新しい世界にいく。
だから、あたしから離れないでね。

let's play the game…







最終更新:2008年10月10日 14:29