AM 9時00分。
今日も、うっとおしいアラーム音で目覚める。
すぐに携帯をチェックするのが私の日課だ。
だけど、彼女から連絡が入っていることはほとんどない。
ボタンを押すと、マネージャーから留守電が入っていた。
えー…今日、オフなん?!
昨夜は早めに寝てしまったこともあり、電話に気が付かなかったようだ。
突然のオフ。
だけど、私のすることは決まっている。
とりあえず、家を出る準備を進めることにした。
お風呂に入り、メイクを済ませ、準備が終わったのは11時半。
そろそろ起きたかな、と彼女に電話をかけた。
…留守電になった。
もう一度、かける。
…やっぱり留守電。
ードクッ
体の中を、何かが駆け巡った。
私は家を飛び出し、タクシーに乗り込んだ。
マンションに着くと、私はまるで自分の家かのように操作をし、足を進める。
もとの関係に戻ってから、私は合い鍵をもらっている。
エレベーターに乗るあいだ、鍵を開けるそのあいだでさえも今は長い。
早く、早くのっちに会いたい。
ーガチャ
案の定、彼女は部屋にいなかった。
ベッドの上には、着信を知らせるランプが光ったままの携帯が置き去り。
どこ行ったんよ…!
心臓ドクドクと波打ち、私の体を支配していくのが分かった。
その時、鍵を開ける音が聞こえ、私は慌てて玄関へと走った。
「どこ行ってたのっ…!」
愛しいその人に抱きつく。
待ちわびていたその感触、匂いに辿り着き、私はめまいがするようだった。
だが、触れた唇が甘い味をしたことに、私の胸はまた波打つ。
「何で…のっち、甘い味するん?」
起きてすぐに歯磨きをする彼女の朝のキスは、必ず歯磨き粉のミントの味がする。
彼女はさっき、起きたばかりだと言った。
起きてすぐ…って嘘ついたん?
出かける前に何か食べたん?
ゆかの連絡には気づかんのに?
それとも…今、誰かと会ってたん…?
「起きたとこって…言ったのに…。」
いろんな意味を込めてつぶやいた。
彼女は何て言うのだろう。
感情にのまれそうになりながら、彼女を見つめた。
『ゆかちゃんに会いたいなって考えながら…、ひとりでココアを飲んで外歩いてた彩乃ちゃんは…』
『どれくらい、寂しかったでしょうか…。』
そう言い再びキスをくれた彼女に、私は悦びを感じた。
彼女の中を、私でいっぱいにしたい。
もっと、もっと、私で溺れてほしい。
久しぶりにできたオフ。
前から約束をしていた指輪を買いにいくことにした。
店に入ってすぐ、蝶の形がついた指輪をひとめで気に入った。
蝶々…蝶々…。
私のワガママに振り回される彼女が愛しい。
私の言動のひとつひとつに、戸惑いながらも合わせていく彼女が愛しい。
私は彼女にはめる指輪に一度口づけをした。
これは、私の魔法…。
差し出された右手に、今度はちゃんと指輪をはめた。
「もう逃がさない…」
『…え?』
私は顔をあげ、最高の笑顔を彼女に向けた。
「お揃い、だね。」
蝶々…蝶々…
どうかのっちが、ゆかのもとから飛んでいきませんように…
「ふふっ…」
私は彼女の手をぎゅっと握って、再び歩きだした。
最終更新:2009年02月23日 03:41