(N)
今日は新曲のジャケット撮影の日で
個人撮影の間、自分以外の人の撮影中は
楽屋におるか、そばで見てるかどっちかで
今日はなんとなく楽屋におる
あ〜ちゃんも同じく楽屋におる
ゆかちゃんの撮影、見たいけど
なんか…照れるんよ
普通に話してる分にはどうもないんだけど
遠くにいるゆかちゃんと目が合ったりしたら…やばい
見てたの気付かれるのも
見られたことも、どっちも恥ずかしくて
あの日から着実に、のっちの目は
ゆかちゃんを追う事が多くなっていて…
自分の番がくるまでの間
のっちとあ〜ちゃんは一つの雑誌を一緒に見てた
この服が可愛いだの、この人がタイプだの
そんなたわいもないいつもの風景
「この中でじゃったら誰が1番かっこいい?」
「えー?あ〜ちゃんは?」
「んじゃせーので、指さそ」
そんな事でぎゃーぎゃー騒いで、
やっぱあ〜ちゃんといるの楽しいな
この陰のある感じがたまらんとか
さえない感じが落ち着くとか
いつもみたいにギャンギャンしゃべり倒すあ〜ちゃんが自然に
本当に自然にサラっと、とんでもない事を聞いてきた
「あってかさーのっち、」
「なにー?」
「ゆかちゃんと」
ゆかちゃんっていう単語に、
一瞬心臓が止まる
「なんか、あった?」
止まった心臓が、凍り付く
「…なな、何が?なんで?」
「…いや、勘違いならいいんじゃけど、なんか…違う気がして」
「ななんかって、えっ違う?べ、別になんもないよ?」
「…」
「…」
…何あ〜ちゃん…!
「目、泳いどるけど」
「泳いどらん!泳いどらん!」
「ホンマになんもないん?」
「ないないない!ないよホンマ!」
「…じゃあいいけど」
あ〜ちゃんは納得いかない様子だけど、
再び雑誌に目を落とした
何、急に…なんで?
のっちたち、別に普通にすごしてるはずじゃけど…
凍っていた心臓はなんとかその機能を再開したけど
今度はドクドクと、
心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかってくらい鳴ってる
あ〜ちゃんは何か、感づいてる
何かは分からんけど、何かがあった
そう思ってる
どおしよ…
「次、あ〜ちゃんさんの番です」
スタッフさんが呼びに来て、あ〜ちゃんは行ってしまった
それと入れ代わりで、ゆかちゃんが戻ってきた
「おおおつかれ!」
「ふはっ何噛んでんの?」
さっきのあ〜ちゃんの件で、動揺しっぱなしだったあたしは
そうやって笑うゆかちゃんを見て少し癒された
「どしたん?」
「え…」
「汗…すごいよ?」
いきなりの質問に焦ったあたしの額には汗がじんわり滲んでいて
我ながら格好悪い…
「ゆかちゃん…今日終わったらのっちん家きて?」
一人じゃ考えきれない、
そう判断したあたしは
急遽ゆかちゃんと作戦会議を開くことにした
あ〜ちゃんに…なんて話せばいいんじゃ!
「あ〜ちゃんさ、なんか気付いとるんよね」
「うん…」
ゆかちゃんはこっそり、のっちの家に来た
今日あ〜ちゃんになんかあった?って聞かれてから
なんかやけにあ〜ちゃんの視線が気になるようになって
特にのっちとゆかちゃんが2人並んでる時とか
なんだろ…こう、
雰囲気を探るような感じがして
「うーん…」
のっちとゆかちゃんはベッドに座って、
口元に手をやって考える人みたいなポーズで並んでいる
それに気付いておかしくなったけど、
今はそんな事考えてる場合じゃないのは明らかだ
右にいるゆかちゃんに顔を向けると、
ゆかちゃんも同じくこっちを向いた
「のっちたちの…バレてんのかな?」
「わからん…」
「バレとらんとしても、やっぱ…感づいてるんよね。」
「…うん」
「なんか、話した方がいいんかな…」
正直なところ、のっち達の関係は微妙って言うか
付き合ってる訳ではないから、
なんて説明したらいいんかが分からないでいた
「のっち…ゆか達さぁ、」
「うん?」
「なんなんじゃろうね、これ」
「…」
本当なんなんだろ
自分がまいた種なのに分からん
でも、じゃあ付き合う?
とかも軽々しくは、言えん
そんな軽く決めれるもんじゃないんよこれは
でもあんな風にしちゃったあたし達がいて
のっちは、自分の気持ちがわからないままで
何やってんだろ
(K)
のっちは黙りこくってしまった
なんなんじゃろうホンマ
ゆかの気持ちはのっちに伝わって
のっちもそれを嬉しいって、
ありがとうって言ってくれて
でも別に付き合うとか、恋人とか、
そう言うものではなくて…
「分からん、けど…」
「のっちは、ゆかちゃんが大事じゃから…それはホンマ」
「大事…?」
「うん」
じゃあ、あ〜ちゃんは?
そう思ったけど、口には出さないでおいた
そんなん、聞かずとも答えは見えてる
あ〜ちゃんも大事
そう言うに決まってる
でもそれはゆかも同じじゃけえ
だからこんなに悩むんだ
あ〜ちゃんの知らないとこであんな事したことを
けど、あ〜ちゃんがそれを知ったところで
どうなると言うのだろう
あ〜ちゃんに、なんの得があるのだろう
わざわざ言う必要はあるの?
いい気持ちにはならんのは目に見えとるのに…
「…あ〜ちゃんには、黙っとこ?」
「…でも」
「言ってなんになるん…あ〜ちゃんが嫌な思いするだけじゃ」
「…」
「それに、ゆかとのっちこんな事したんじゃけど、
あ〜ちゃんどう思う?とか、死んでも聞けんよ…」
「それはそうじゃけど!…隠し事あんのやだなって、」
ゆかも嫌だよ
けど、どうしようもないじゃん
…ゆかのせいで、のっちまでこんなに頭をかかえる事になってしまって
「…のっちは、後悔しとる…?」
「へっ?」
「ゆかのこと」
「っ!しとらん!」
「ただ…あ〜ちゃんも大事じゃけえ…!」
やっぱり
「ゆかだってあ〜ちゃん大事じゃもん!だから言わん方がいいと思うんよ!」
「…知らん方が幸せなこともあるんよ」
(N)
そう言ってゆかちゃんは、泣きそうな顔をした
それに、いてもたってもいられんくなって
引き寄せて抱きしめた
鼻をすする音がしたから、きっと泣いてしまったんだ
「ごめん」
「悪くないのに謝らんでよ…」
「…ごめん」
「…のっちぃ、」
「何?」
「もっとぎゅってして?」
ああ、なんでこの人はこんなに可愛いんだろう
ゆかちゃんの要望に応えて腕を強める
「…ごめん、ね」
「ん?」
「ゆかのせいで、のっちまで巻き込んで」
弱々しく言うゆかちゃんにショックを受けた
そんな風に思わしてしまうなんて
のっちは一体何をやってるんだ
知らないほうが幸せって
ゆかちゃんはそう思ってるんだ
「でものっちは…」
「のっちは、ゆかちゃんの気持ち知れて幸せだよ」
(K)
そんな事言われて、嬉しくないわけがない
のっちの腕の中、顔がニヤけてしまう
さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへいったのか
のっちに身を預けて、大きく息を一つ吸って吐いた
のっちの香りが脳にまで行き渡る
ゆかの大好きな、のっちの匂い
「あ〜ちゃんには…黙っとこうか」
「…いいの?」
「うん…今はどうしょうもないけえ」
「ちゃんとしたら…話そう」
「ちゃんと?」
「そう、ちゃんと」
「わ!」
のっちはゆかを抱きしめたまま、
ベッドに横たわった
横向きのまま向かい合わせで
のっちの腕の中にいるのには代わりなくて
真っ直ぐ目を見てくるのっちはすごく、キレイで
心臓がぎゅってなった
上になってる左手で、髪をそっと撫でられて
思わず目を閉じてしまう
「こそばい?」
「こそばい」
「でもこれ気持ちくない?」
「…気持ち、い」
耳の辺りから後頭部へかけて流れるその動きはもどかしくて
何度もやられると背中が浮く感じがなんとも言えんくなる
のっちはゆかの髪を一束掴んで、
そっと自分の顔に近づけた
「ゆかちゃんの髪の匂い…好き」
目をつむって深く息を吸うのっちから、
視線を反らす事はできなかった
最終更新:2009年02月23日 03:53