—20:05
「じゃ、明日8時に向かえ行くから」
「はーい。もっさん、ありがとう。ゆかちゃん、のっち、また明日ね〜。」
もっさんが運転するPerfume号から、あ〜ちゃんが降りた。
「「ばいば〜い」」
あたしとゆかちゃんはいつものようにハモってあ〜ちゃんにお別れの挨拶。
—20:27
「はい、着いたよ」
「ありがとう、もっさん。んじゃ、のっちお疲れね〜」
ゆかちゃんもPerfume号から降りる。
「は〜い。お疲れ〜」
あたしは右手をヒラヒラ振って見送った。
—20:41
「はい、お疲れ。明日は寝坊しないようにね」
「・・・はい、わかってます・・・」
もっさんに注意されながら、あたしもPerfume号から降りた。
—20:48
一人暮らしの自宅へ戻ってきた。
あーあ、相変わらず散らかった部屋。
見ててゲンナリするよ・・・。
でも片付けなきゃ。彼女が来るまでにやっとかないと怒られちゃう。
—21:21
ふう、なんとか間にあったみたい。
よかった、よかった、これで怒られないですむ。
—21:27
ピンポーン。
あっ!!来たー!!
扉を開けると目の前にはさっき別れたばっかの、あ〜ちゃん。
手にはコンビニの袋。
「いらっしゃーい」
そう言ってあ〜ちゃんの手にあったコンビニの袋を受け取って、あ〜ちゃん部屋の中にあげた。
「あら、部屋散らかってないんじゃね。えらい、えらい」
あ〜ちゃんがあたしの頭を撫でてくれた。
あたしは、あ〜ちゃんに褒めてもらうのが嬉しい。だから面倒な掃除も頑張ったんだ。
「ねぇあ〜ちゃん、とんぼ返りでのっちの家来たけぇ。クタクタじゃ〜。」
「あっ、ごめん・・・。」
「そ〜んな、ハノ字眉にならんでええのに。大丈夫じゃけ、あ〜ちゃんプリン食べたら元気になるから」
あ〜ちゃんはまたあたしの頭をよしよしと撫で、ソファーに座りコンビニの袋の中からプリンを取り出した。
「ほらー、のっちも座るー。一緒にプリン食べるよー」
ハノ字眉で落ち込んでたあたしを促す、あ〜ちゃん。
「・・・うん」
あたしは言われた通り、隣に座ってプリンのフタをペリペリ開けた。
—21:34
「ごめんね、のっちのワガママきいてくれて。やっぱり・・・来週の休みまで待てばよかったよね・・・」
今日は朝から学校で、午後は新曲の振り付けのレッスン、夜は雑誌の取材で一日忙しかった。
そんな忙しかったのにあたしは、あ〜ちゃんに仕事終わりに会いたいから家に来てとメールをした。
だって、もう2週間も二人っきりで会ってないんだもん。そりゃ、仕事では会ってるけどそれは『Perfume』としてだから何か違うんだ。
『のっち』のあ〜ちゃんと会いたかったんだよ。
そう、あたしたちは体を重ね合う関係。同じメンバーのゆかちゃんでさえ知らない、あたしたち二人だけの秘密の関係。
これは知られちゃいけない関係。だから誰にもバレない様にこうやって、ひっそり会うしかない。
「だから〜、大丈夫じゃって!ほらあ〜ちゃんプリン食べたから元気になったじゃろ?」
あ〜ちゃんはいつでもどこでも誰にでも優しい。みんなのプリンセスだ。
あたしはその優しさに甘えてしまって、あ〜ちゃんを困らせてしまってるんではないか?といつも考えてしまう。
「ほんまに?・・・あ〜ちゃんのこと困らせてない?嫌だったらちゃんと言って?のっちそういうこと鈍いからわからんのよ・・・」
「もー、のっちはネガティブさんじゃね。困ってないし、嫌じゃないけぇ。あ〜ちゃんものっちと会いたかったんよ・・・」
あ〜ちゃんは凹んでるあたしを抱き寄せて、父親に怒られた子供をあやす母親みたいに慰めてくれた。
「あ〜ちゃん、のっちのこと好き?」
「うん、大好きじゃ」
「のっちもあ〜ちゃんのこと好きだよ」
「そんなもん、知っとるけw」
あたしは昔からあ〜ちゃんのことが好きだ。誰にも言えないけど、友達じゃないこの関係になれたのは嬉しかった。
みんなのプリンセスが、あたしだけのプリンセスになったのだから・・・。
—21:52
「あ〜ちゃん、好きだよ。愛してる」
「のっち、のっち・・・好き、大好き」
「どこにも行かないで。のっちのそばにおって」
「どこ、にも行かないよ・・・大丈夫、だよ」
あたしたちは2週間ぶりに激しく体を重ね合った。
何度も何度も、あ〜ちゃんにキスして抱きしめた。
あ〜ちゃんもあたしに2週間出来なかった分の沢山のキスをくれた。
あたしはずっとずっと、あ〜ちゃんの温もりを感じていたかった。
でも、そんなことは出来ないのは知ってるよ。
そう、あたしだけのプリンセスになっている時間はあとわずか。
—23:11
あ〜ちゃんが帰る仕度を始める。
あたしのプリンセスがみんなのプリンセスに変わろうとしてる。
シンデレラは24:00で魔法が切れてしまう。
あたしのプリンセスはそれより30分早い23:30に魔法が切れてしまう。
—23:22
そろそろ、あ〜ちゃんが乗る終電の時間が迫ってきた。
「じゃ、のっちまた明日ね。」
「うん、駅まで送ろうか?」
「大丈夫じゃよ。歩いて5分かからんじゃろ。平気平気」
そう言ってあ〜ちゃんは玄関を出た。
—23:30
あたしだけのプリンセスはガラスの靴を置いていかず、みんなのプリンセスに戻る現実の世界行きの電車へ乗り込んだ。
— Fin —
最終更新:2009年02月23日 04:21