(N)
ゆかちゃんの髪はなんでこんないい香りなんじゃろ
いや、髪だけじゃない
ゆかちゃん自身もいい香りがする
のっちはそれを吸い込むたびに、なんだか切ない気持ちになるんだ
さっきまでの深刻な雰囲気はどこへやら
ゆかちゃんから放たれる甘い匂いについつられてしまう
つむってた目を開けたら、視線が重なった
こんな至近距離で見つめ合うのは、あの時以来で…
空気が変わった気がした
のっちは掴んでた髪を離して、
またゆかちゃんの耳もと辺りに手を差し込んで髪を撫でた
目をぎゅっとつむって
何かに堪えるみたいなゆかちゃんが、可愛い…
「今日は…ちゅーせんの?」
言ってしまってから、しまったと思った
のっち何言ってんだ!
それが原因で今日の話し合いが発生したと言うのに…
「あ、やっいやあの、」
「…今日は、いい。ただ…」
「…?」
「ぎゅってしとって、」
ベッドの上で向かい合わせ
ゆかちゃんは恥ずかしそうにそう言うと、
のっちの胸元に頭を擦り寄せてくる
…何これめっちゃ可愛い
力の限り抱きしめると、んっなんて声が聞こえた
「…なんでせん、の?」
いいと言われてしまったらなんだか寂しい
「…したいん?」
「!違っ」
「声おっきいよ」
「…ごめん」
「やっぱね…こないだはなんだかんだ、ゆか悪いと思うんよね」
「…」
「のっちだってテレビに出る人なのに…あんないっぱい痕つけちゃって」
「…うん」
「だから…当分、自分への罰」
罰か…そっか
「そっ…か」
力無くため息混じりに出たその言葉に反応するみたく
ゆかちゃんは少し顔を上げて、のっちを見た
「そう、だよ…?」
「…ほっぺにも…」
「え?」
「ほっぺにも、せんの…?」
目をじっと見つめたままゆかちゃんは動かない
「…ほっぺには、する」
頭に手が回って、
ちょっと引き寄せられるみたいに力が加えられた
ちゅっと1回きりの感触が、なんか…物足りん
「…はい、おしまい」
「ん…」
もっとしたい
そう思ったけど言葉にはできず
「…のっち?」
「……」
「のっちも…する」
(K)
のっちはんしょって体をひねって、
ゆかの上になった
あの日と一緒だ
あの日、ゆかが崩れてく原因になった日
同じ体制で、同じように頬にキスをされてるけど、
あの日と180度違うのは、
のっちがゆかの気持ちを知っているということだった
そっと、優しいのっちの唇の感触に息が詰まってしまう
バクバクと心臓が跳ねてる
「やっぱやおいね」
「…」
「マシュマロみたい…おいしい」
「!」
その言葉に、思わず頭が反応してしまう
ちゅっちゅ…と休むことなく落とされる唇の感触
…いけない衝動にかられそうだ
「あ、の…」
「ん?」
「…なんもないです、」
「なんで敬語っ」
顔を上げて、ふふって笑ってゆかを見下ろすのっち
ねぇのっち、ゆかはね
そんな笑顔を見れる今に、奇跡すら感じるんだよ?
ふって笑って上がってた口元が下がって、
まゆもハの字にしたかと思ったら
のっちはゆかをぎゅって包んだ
重みが、心地いい
甘えるみたいに、ゆかの首元に顔を埋めたかと思えば
はぁっとため息をついた
「ゆかちゃん…のっちね正直なところ
ゆかちゃんのこと…好きかどうかまだよく分からんの」
「でも愛しいと思うんよ…おかしいかな」
愛しい
その感情は、ゆかの中にも存在していて
それはのっちに向けてのもので
同じ感情がのっちの中にもあるんだ
ゆかを愛しいと思ってくれてるんだ
今はそれだけで、十分だった
「…なんでもいい…」
「のっちがそう思ってくれるんなら、なんでもいいけえ…」
ゆっくり頭を上げて、またゆかを見下ろすのっちの瞳は
小さく揺れていた
そんな目で見つめられると…だめだよのっち
「やっぱ、…」
「ん?」
「したい…キス…しよ?」
「…っ」
「して?」
当分しないだとか、罰だとか
自分から言ったくせに
心臓がむずむずする感じには、逆らえない
我慢できんのはゆかのせい?
のっちのせい?
(N)
ゆかちゃんの腕がそっと
のっちの首に回された
ゆっくり力をかけられて
ただでさえ近かった距離がさらに近くなる
して?ってことはのっちがするってこと?
なんて考える暇もなく
赤い唇は目の前にあった
高鳴る鼓動に気付かないふりなんてできなくて
息を吸うタイミングを逃したまま、
そっと…唇に触れた
柔らかい感触に、頭の中がとろけそうになる
でも息苦しくなってすぐに離した
胸が痛いよ
見下ろしたゆかちゃんは頬を赤く染めていて
目を伏せたその表情に、動けなくなってしまう
…可愛い
「…と、」
「え?」
「もっと…して?」
耳を真っ赤にしてそんなこと言うから
のっちにも移った
顔が熱い
「…かわいい」
そう言うと、ゆかちゃんは小さく首を横に降った
「んーん、じゃない…かわいいよ」
「ん…」
唇が触れ合うたびに、
背中に回された手に力が入るのがわかった
(K)
のっちがくれるキスは柔らかくて優しくて
その一瞬一瞬に思わず泣きそうになる
ゆかものっちが愛しいよ
愛しくて、仕方がないんだよ?
「ん、のっち…好、きだよ」
「はぁ、…ゆかちゃん」
角度を変えて何度も何度も繰り返す
合間に吐かれる息が熱くて、苦しくなる
ゆかの唇を挟んで、ちゅって吸うからっ…
もっと深くってなっちゃうじゃん
少し舌を伸ばすと、
簡単にのっちの口の中に入ることができた
(N)
急に舌の生暖かい感触がして
思わずちゅって吸うと
ビクっとゆかちゃんの体が震えた
…ああやばいな可愛いな
また絡まってくる舌に興奮してしまう
2人とも息が弾む
さっきからずっと、心臓の音がうるさい
「んぁ、のっち…はぁ」
ゆかちゃんの声は凶器だ
それだけで今まで一体何人殺してきたんだろう
のっちも今多分、殺されかけてる
「ふぁ…ゆか、おいしい?」
「!」
…殺られた
「はっ…おいしいよ」
(K)
「ゆかちゃん…」
絡み合う唾液の分量が多くなる
のっちでいっぱいになる
幸せ、だな
好きな人とこんなことしてる今は本当に幸せで
「ふっ…好き、好きぃ」
言葉にできるって、幸せだよ
そんなことを考えてると
ゆっくりと、のっちの唇が離れた
そのままのかっこうで荒い息を繰り返していたと思ったら
ゆかの横にごろって転がるのっち
天井を見たまま、呼吸をととのえるみたいに
息を大きく吸ったり吐いたり
「もう、やめ…?」
上下していた体がぴたっと止まった
顔だけこちらに向けて
困ったようにハニカむのっち
左手がゆかの顔にかかった髪に伸びて、そのまま耳にかけられる
手は耳から撫でおろされて、首まできて止まった
「…やめ」
「…なんで?」
「ゆかちゃんが可愛いから…やめとく」
(N)
そう言うとゆかちゃんは、
意味わからんって言ってのっちの肩におでこを当てた
なんとか理性がきいてるうちにやめとかないと…
中途半端な気持ちのまま、その…色々と
この先をしちゃうのはさすがにダメだと思うから
キスの先を…したくなってしまったから
「…あほ」
「うん」
ゆかちゃんの右腕がのっちの腰に回される
そのままぎゅって抱き着くみたいに体を寄せてくる
少し顔を横にやると
ゆかちゃんの頭が目の前にあった
手入れの行き渡ったサラサラな髪
無性に触れたくなって、後頭部に手を回して、
自分のおでこを擦り付けるみたく左右にゆらした
頭に回した手をまた髪にさしこんで、
5本の指先だけでそっと撫でる
「それっ、だ…め」
腰に回ってるゆかちゃんの手が服を握りしめた
「だめなん?」
「だめ…」
「なんで?」
「…」
(K)
何この人、確信犯?
答えないでいると、
またのっちは指の動きを再開させる
「だ、から…だめだってぇ…」
「気持ちいいて言ってたじゃん」
「そう、じゃけど…」
気持ちいよ気持ちいけど!
今のゆかには、この刺激は…結構辛い
体が疼くよ
でもそんなん言えん
「…じゃあ、のっちにもしたげるけえ」
ごまかすみたいに、話しをのっちにそらす
ゆかはのっちの腰に回してた腕を耳元に持っていった
ちょっと体を起こして、のっちを横から見下ろす感じで
のっちがしたみたいに髪に手を入れてといた
そっと撫でると、のっちは目をきゅっとつむる
「…ん」
「気持ちい?」
「…や、やめとこっか」
「なんで?」
やめさせようと、のっちの手がゆかの手にかかるけど
その手を掴んで下に降ろして、また撫でた
のっちは一瞬体を震わして逃げるようによじる
「気持ちいでしょ?」
「こっこそばい…」
「こそばいの嫌いだもんねぇ」
「だからやめ、」
「やだ」
「のっちがやりだしたんよ?気持ちいいでしょって」
「そうじゃけど…」
「気持ちい?」
「気持ちいい…です」
ゆかのひじ辺りの服をちょっとつまんで
目を固くつむってるのっちが可愛くて
ついしつこくしてしまう
何度もすると、だんだんとのっちの体の力が抜けてきて
固くつむった目も今は薄く開いていて、
ぼんやりと焦点が合ってない
「んん…なんか、眠くなって、きた…」
虚ろな目をしたのっち
こうしてると小さい子みたいで可愛いな
つい世話を焼きたくなってしまう
「眠たいの?寝る?」
「ぃや、寝るとか、そんなん…………」
むにゃむにゃと何言ってんのかわからん
その様子が愛しくて、ついつい顔が緩んでしまう
「寝ていいよ」
髪をといていた手を
おでこに移して前髪をそっと流すと
のっちはゆっくりと目を閉じていった
胸がきゅんてなる
のっちを寝かしつけちゃった
と思ったら、またゆっくりまぶたを開けて、ゆかを見てきた
でも眠気には逆らえないのか、目はトロンとたれている
「ゆかちゃん…」
「なぁに?」
「のっち寝たら、か、帰っちゃう?」
ちょっと上目使いが憎い
反則だよ、それ
可愛いすぎるよ
「帰らんよ。ちょっとしたら起こしてあげる」
「ん…ごめんなさい」
「いいから、ね?寝んさい」
「ありが…と」
そう言うとのっちは目を閉じた
こんな感じも…いいな
小さく寝息をたててるのっち
ぽんぽんと一定のリズムでお腹に手を落とすと
もぞもぞと体をこっちに向けて、少し丸まったから
ちょうどゆかの胸の辺りに頭がきた
すーすーと規則正しく動く背中に手を回して
またぽんぽんと叩く
手のひらからのっちの体温が伝わってくる
あったかい
…ちゃんとしたらって言った
ちゃんとしたら言おうって
期待してもいいんかな?
いいんよね?
ねぇ、のっち
最終更新:2009年02月23日 04:34