昨日の事をぼんやり思い出し彼女の事を意識する。
なんとか平静を保ってみせてるけど明らかに雰囲気が昨日とは違ってるあたし。
多分、優しい彼女はそんなあたしを問い詰める事はしないはず。
前と変わらず接してくれると思うけどやっぱりなんか息苦しさを感じてしまう。
唯一の救いは週に何回かしか会わなくて済む事。
逆に寂しい気持ちもあったりするんだけど……。
『樫野っ。』
ざわつく放課後の教室の中、ふいに呼ばれ声の主に目をやってみる。
クラスメイトの男の子が立っていた。
K『…何?』
これ以上ない微笑みを向けてみると顔が赤くなった。
同じ歳の男子になら通じる技も、年上の彼女にはまったく通じない。
それどころか相手にさえされていない…。
『いや、用事は特にないんだけど…。おまえ今日元気ないじゃん?だからちょっと気になって……。』
K『気にしてくれたんだ?…ありがとうっ。』
『い、いや、何もないならいいんだけど、あ、あの何かあったんなら話くらいは聞くからさっ。』
ほらね、簡単に落とせた。
前までのあたしなら恋愛で悩む子の事が信じられなかった。
いつもどっか冷めてて、そんなに誰かを好きになった事がなかったから。
でも今のあたしには凄く気持ちが解る。
たった1日しか恋してないのに苦しくて苦しくて息も出来ずに溺れそう。
四六時中頭に浮かぶあの人が愛しくて切なくてどうにかなっちゃいそうで。
K『今日…、一緒に帰る?』
少しでも気を紛らわせたくてあたしはクラスメイトと一緒に帰る事にした。
帰り道、並んで歩く同じ歳の男の子。
交わす会話は子供じみていてひどく詰まらなかった。
へ〜…。
そっかぁ…。
ふ〜ん…。
生返事を隠す事もせずやっぱり頭は彼女で一杯になってた。
『……やっぱ今日変だぞ、樫野。大丈夫か?』
『……俺といてもつまんないよな、ごめんな。』
とか、隣のクラスメイトは必死で空気を変えようとしてる。
これも優しさなんだろうけど、あたしの知ってるそれとは全然違う。
多分こんな時、彼女なら何も言わず黙って側にいてくれる。
何も聞かずただ優しく頭を撫でてくれる。
何も求めずただ与えてくれる。
それは幼い子供をあやすのに近い優しさ……。
K『あたしって子供っぽいのかな…。』
独り言のように呟いたそれに戸惑うクラスメイト。
K『ごめん、何でもない。聞かなかった事にして?』
上目使いでねだるような視線に彼は顔を赤くした。
あの人には見せない顔で男を誘う。
いっそあの人にこんな顔出来たなら…。
K『じゃあまたね。』
笑顔で手を振りまた思考を飛ばす。
あーっもう、のっちめっ!
なんであたしがこんなに悩まなきゃいけないのよ…。
うん、決めた!
あたしはあたしらしくのっちを振り向かせる。
悩んでてもしょうがないっ。
子供扱いしかされないのならそれをフル活用させて貰うしかないよね……。
覚悟しててよ、のっち!
(続く)
最終更新:2009年02月23日 04:53