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  • Side K-


あのおでこへのキスから数日、相変わらずのっちをからかっては遊んでいる。

前と違うとしたらあたしの心に少し余裕が生まれたくらいでのっちの態度はそのままなのだけれど。

でもまったく脈ないならあんな照れた顔しないよね……?

一人思い出してはニヤつく自分が恥ずかしい。

明日が待ち遠しくて仕方ない。
どんな風にアプローチしようか、そんな事ばかり考えて学校からの帰り道を歩く。

ふと、何気なく周りを見渡すと道路の向かい側にのっちの姿があった。
まだあたしには気付いてないみたいで、

……脅かしちゃえっ。

といたずら心が湧いてきた。

……あれ??

よく見ると何か違和感を感じる。

のっち…、だよね?

違和感の正体はいつもしている眼鏡をしていない事だった。

珍しい事もあるもんだぁ、とのん気に見ていたら男の人に小走りで駆け寄って行く。

えっ?!ま…、さか。

さっきまでの高揚した気分は一気に冷たいものへと変わっていた。

や、やだっ、見たくないっ!

心とはウラハラに目は二人を捕らえて離さない。

眼鏡を外してるのっちはあたしには見せた事のない顔で笑ってた。

……っ。

唇を噛み締めその場に立ち尽くすあたし。
何かが音をたてて崩れていくのを感じた。


昨日の光景が目に焼き付いて離れない。
泣きそうな顔のままあたしはのっちと並んで勉強するフリをする。
今日ののっちは眼鏡をしてる……。

K『今日はコンタクトじゃないんだね。』
N『……いつもですよ?』

のっちはもちろんなんの事だかわからないからそう答える。
それが無性に腹立たしくて惨めで。
一人舞い上がっていたんだと思うとほんとにやり切れなかった。

K『……嘘、昨日見たもん。』
N『??』

なんでこんなに子供じみた言葉しか出せないのか。
こんなだから見向きもされないんだろうね。

自嘲気味に鼻で笑い彼女を睨み付けるように見据え、
K『あれ、彼氏??』
そう、冷たく言い放つ。

K『楽しそうに歩いてたよね。……あたしには見せた事ない顔して、もちろん眼鏡なんてしてなくて。』


あたしは何の権限があってこんな事を問い詰めるのか。
別に付き合ってる訳じゃないのにまるで、
浮気だ!と言わんばかりに。

N『……あぁ、見つかってしまいましたか。』
やけに落ち着いた口調があたしを煽る。
取り乱す必要はどこにもないから当たり前なんだけど。

K『なんで嘘ついたの?普段はコンタクトなんてしない、って……。別に本当の事言えばいいじゃん、隠す必要ないじゃんっ。』

何も言わずおもむろに立ち上がりあたしのベッドに座った。
それがまたあたしの怒りを誘う。

N『別に彼とは付き合ってませんよ…。』
柔らかく笑うその顔が今は憎らしい。

K『そんな事聞いてないっ。まともに相手するのがめんどくさかったのっ?だから話合わせたみたいな感じではぐらかしたの?
………ごめんねっ、こんなめんどくさい子供のお守りさせちゃって。』

こんな見苦しい姿見せたくないのに想いは止まらなかった。


沈黙が痛い。

あたしはいまさらながら自分の吐き出した言葉に深く後悔した。

嫉妬丸出しの子供そのものの行動。
だからのっちはあたしを相手にしてくれないのに。

N『……樫野さん。』
こんなに醜いあたしをなおも優しい眼差しで見守ってくれるのっち。

N『こっちに来て貰えますか?』
言われたままあたしは歩みを進めのっちの側に立つ。

N『まぁ、座りましょう。』
素直に隣に座ろうとしたら、
N『あぁ、違います。”こっち”にです。』
と自分の膝を指さした。

K『なっ?!何でそこなのよっ。子供扱いすんのもいい加減にしてよっ。』

N『……子供扱いはしていませんよ。』
優しく笑いあたしの腕をひっぱった。

向き合うように彼女の膝の上に座らされたあたしはどうしていいかわからなかった。
のっちを跨いだ格好で座り、ただ黙りこくるしかなかった。

N『樫野さん。私が眼鏡をしてる本当の理由知りたいですか?』
やけに静かな口調が変な緊張を生む。

急に怖くなってあたしは無言のまま首を横に振った。

それに応えるようにのっちも無言のまま眼鏡を外す。

あたしが恋に落ちたその時の顔がそこにあった。
真剣な眼差しであたしを見てるのっち。
大好きなはずのその顔を見れず下に目線を落としたあたしに、のっちがこう言った。

N『……意識、するでしょ?』


??


その言葉の意味が何なのか必死に探してみたけど見つからない。

N『……きみに意識させるためだよ。』

えっ!?

思わずのっちの顔を見ると見た事ない表情を浮かべこっちを見ていた。


K『え……っ。』

戸惑っているあたしに少し意地悪な顔をしてみせるのっち。
いつもの優しいのっちはもうそこにはいなかった。

N『まだわかんない?』

口調もいつも見たいな敬語ではなくなっていて、
N『じゃあこうしたらわかる?』
戸惑うばかりのあたしの顔を両手で捕らえさっき以上にたくらんだ顔をして見せた。

K『の、っち?!』

戸惑うあたしなんてお構いなしにのっちはあたしにキスをした。

!!!


N『……これで少しはわかった?』
K『…。』
放心状態のあたしに呆れたように笑いあたしの唇に指をはわす。

N『じゃあ、もっとわかりやすい方法で説明しようか……。』

心臓が破裂しそうなほどバクバク言ってる。

事態を飲み込めないあたしはのっちにされるがまま身を委ねるしかなかった。

次に何をされるのかわからないまま、ただぼうっとしてたらのっちと目が合った。

N『可愛いね、ゆか、ちゃん。』
K『!』

初めて呼ばれた下の名前に顔が真っ赤になる。
パニックに近いあたしをあやすように優しいキスをしてくるのっち。

今のあたしにはもう理由とかそんなの考える余裕はなくて、のっちのくれるキスに溺れるしかなかった……。


(続く)






最終更新:2009年02月23日 05:16