約束どおり、数日後
あたしは、先生と部室の暗室で
写真の現像と格闘していた。
「へぇ、なかなかうまく撮れてるじゃん」
「そうですかぁ」
「もちろん、まだまだだけどw」
「そりゃ、そうですよ」
それしにても
被写体が浮かび上がってくる光景てのは
なかなか神秘的だなぁって思う。
ゆらゆら揺らめくそれは
なんだか、先生の瞳のようだ。
「あ、そうだ。明日から3日間、、、まぁ、今週いっぱい?
部活はお休みになるから」
「えっ?」
「新任の研修に参加しなきゃいけなくって」
「あぁ・・・そうなんですか」
そっか、先生に会えないんだ、なんて思っていたら
「ま、実際、部活はあるんだよ?」
「はっ?」
「だって、写真なんて自主活動みたいなもんだし」
まぁ・・・そっか。
すると、目の前の先生は、
いじわるそうな笑みを浮かべて、言った。
「でも、大本さん。あたしがいないと部活にこないでしょ?」
薄暗い空間。
現像液の薬品の匂い。
生暖かい湿度。
感覚が狂わされていたのかもしれない。
うぅん。
なにより、この人には、
取り繕えないって・・
直感的にそう思った。
「そうですね…」
くすっと
先生の口角があがる。
「“のっち”は、先生のこと好き、なの?」
「好きです、よ」
とんでもないことを言ってるはずなんだけど
驚くほど、さらっと・・・
唇から洩れたホンネ。
だって、迷いなんてなかったから。
「やっぱり・・・」
先生の影が近づく。
ほら、やっぱりバレてる。
それは一瞬。
唇にやわらかなぬくもり。
!?・・え、うわっ!
予期せぬ展開に
がたがたと、近くにあった椅子をなぎ倒し
しりもちをつく。
口元に手をあて、フリーズ状態。
思考回路が停止したあたしを見下ろし
「そんな反応、マンガの中でしか見たことないや」
そういって、くすくすと笑う先生。
そして
ちょこんと、目の前に腰をおろす。
口元にはいじわるな笑みを残したまま
でも、視線には何かを秘めたような・・
ホント無意識。
ぐっと抱き寄せる。
ココロが導くままに。。
鼻につくそれが
薬品の匂いから先生の香りに変わる。
想像以上に
細く華奢なカラダ。
すっぽりと、腕の中におさまる。
「…先生のことが、好きです」
「…うん」
それ以上、先生はなにも言わなかった。
換気扇の廻る音だけが
耳の奥の方で響いている。
ぎゅっと抱きしめてるだけじゃ
物足りなくなって
再び、口付けようとすると・・・
先生の細く長い指先で拒まれた。
「ふふっ、眉、八の字になってるよ」
諭すように笑われる。
でも、もう引けない。
そっと、唇をふさがれた指先を退ける。
「キス、してもいいですか?」
「ダメ、、、」
—けど・・・
先生は言葉を続ける。
「先生が、してあげる・・・」
そう、言い終わるかどうか。
再び、唇が重ねられる。
さっきよりも
長く、、、そして、強く。
すっと唇が離される。
覗き込んだ瞳は
やはり虚ろ、、、、、で。
余計なことを考えるよりも
もう一度、きつくきつく抱きしめた。
先生?
たとえ、あたしのことを見ていなかったのだとしても
放したくなかったよ・・・
離れたくなかったよ。
最終更新:2009年02月23日 05:29