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日曜日。
今日は、先生と郊外にある大型ショッピングモールでデート。
そこはあたしが前から行きたいって先生にねだってた場所。
ようやく先生が車を出して連れてってくれたの。

ショッピングモールに着いたのはお昼すぎた頃。
お昼は車の中で、あたしが作ったサンドイッチを食べた。
本当は朝から行きたかったけど、先生が寝坊したからこんな時間になっちゃった。

もう!あ〜ちゃんは朝早くに起きてサンドイッチ作っちゃったくらい、ずっと楽しみにしてたのに・・・。
先生は寝すけなんだもん。
あたしだけが楽しみにしてる気がして、ちょっと寂しいよ。
先生は、あたしとのデート楽しみじゃないのかな?気になるよ・・・。

「のっち!このお店見てええ?」
あたしは可愛い雑貨屋さんがあったので、のっちと一緒にそこのお店に入った。
「あ〜、かわいいー!!」
そこには本当にかわいいネックレスが置いてあった。
一方、先生はこのお店は合わないらしく、向こうでぬいぐるみをいじって一人遊びしてた。

う〜ん、これ欲しいな・・・。
でもこの値段は高校生にはちょっと高いよな・・・。
      • 本当は先生にプレゼントとして貰いたいけど、自分から催促するのってイヤラシイ感じだもんね・・・。
あーーー!!どうしよーーー!!欲しいーーー!!

あたしが悶々と悩んでたら先生が声を掛けてきた。
「あ〜ちゃん、もうええ?違うお店行かない?」
「えっ・・・うん」
あたしは後ろ髪を引かれる思いで、そのお店を出た。

それからあたしたちは色んなお店を覗きながら、ショッピングモール内を歩き回った。
ちょっと疲れたから、フードコートで一休み。
飲み物を買ってテーブルに座る。

「あ〜ちゃん、ちょっとここで待ってて。」
「え?何?のっちどこ行くん?」
「あ〜、ちょっとトイレ♪」
「え?さっき行ったばっかじゃろ?」
「うん。でもまた行きたくなっちゃたのよ〜」
そう言って、先生はトイレへ行ってしまった。


もう・・・落ち着きないな〜。
あたしは手に持ったホットココアを口にする。
ふと、周りを見渡すと皆楽しそうな雰囲気。
あたしだけ一人、その楽しそうな雰囲気に取り残されてる感覚に陥ってしまう。

先生!!早く戻ってきて!!お願い!!寂しいよ・・・。
って、そう願っても先生はすぐに戻ってこなかった。

「いや〜、ごめんごめん。遅くなっっちゃわw」
程なくして、何故か満足げな表情で先生が戻ってきた。
「・・・遅いよ。どこのトイレまで行ってたん?」
あたしは不機嫌気味に訊いてしまった。
「ごめんね・・・。トイレ混んでたのよ〜」
先生はハノ字眉になって両手を合わせて謝ってきた。

なんだか、今日のデートは楽しくない・・・。
先生のコトは大好きなのに、どうしてだろ・・・。

「なんかお腹へらん?ちょっと早いけど晩飯食べて帰ろうか?」
先生が腕時計をチラっと見て話しかけてきた。
あたしもつられて携帯のディスプレイを見る。もう18時すぎだった。
「・・・うん」
あたしは素っ気無い返事をする。
「よっしゃ!じゃ、あ〜ちゃん何食べたい?」
そう言いながら、ショッピングモールの案内パンプレットをあたしに見せる。
「あ〜ちゃん、何でもええ・・・」
この人は、あたしが不機嫌なのを気づいているのだろうか?
「う〜ん、何でもいいか〜。それが一番困るんだよな〜」
ポリポリ頭を掻きながら、考える先生。
こういう『一番困るんだよな』って些細な言葉も、今は更に不機嫌を加速する燃料。

「んじゃ、ここでええ?」
先生が指さしたのは、レストラン階にある洋食屋さん。
あたしたちはそこの洋食屋さんへ向かった。
移動の最中は、先生が喋ってあたしが生返事する、微妙に気まずい雰囲気。


席に案内されて座る。
まだお店の中は混雑って状態ではなかった。
メニューを渡されて、先生はカレー、あたしはオムライスに決めた。

「すいませーん」
先生がお店の人を呼ぶ。
すぐにウエイターさんが駆け寄ってきた。
「えっと、オムライスと・・・」
先生がオーダーしてる時、

「彩乃!?」

何故かオーダーを取りにきたウエイターさんが、先生の下の名前を呼んだ。しかも驚いた様子で。
先生も自分の名前を呼ばれたのをビックリしたのか、ウエイターさんをガン見。
「あ!!あ〜・・・」
先生はウエイターさんの顔を見て最初驚いたが、すぐにその人の下の名前を呼んだ。

「え〜、久しぶりじゃん。何年ぶりだよ?元気してた?」
「うん、元気、元気。あれからだから、3、4年?」
「そっか・・・。ちゃんと教師になれたのか?」
「勿論!ちゃんとなったよwそっちは?」
「おいおい、見てわかんねーのかよwったく、相変わらず抜けてんな〜。俺、ここの店長やってんだよ!」
「あぁっ、ごめんw名札まで目に入らんかったわ。」
ウエイターさんと先生は会話が弾んでた。しかもすごく楽しそうに。

『ムカついた』『腹が立った』『悲しくなった』
そんな言葉で、全部混じったような感情になった。

たぶん、あの人は先生の過去を知っている人。
きっと、あたしの知らない先生を知っている人。

「今日は遊びに来たんだ?」
「うん。ここに一度来たいって言うからさ、車でね。」
「ふ〜ん、そうか・・・。妹?あれ?でも彩乃一人っ子だったよな?親戚の子か、何か?」
先生の過去を知る人が、あたしの存在に気づいて先生にあたしの正体は何か?と訊いてきた。
てか、先生一人っ子だったんだ。
それすらも知らないあたしって一体、先生の何なの?


「あ〜、うん。親戚の子・・・」
「ふ〜ん。このお姉ちゃん、アホだから一緒にいて大変でしょ?」
先生を茶化しながら、その人はあたしに話しかけてきた。
「・・・いえ。大変、じゃないデス・・・」
あたしは、その人の顔は見ずに、俯き加減で答えた。
「も〜、いいじゃろ。早く仕事に戻らんさい」
「おう、おう。わかったよw」
先生は促してその人を厨房へ行かせた。

「なんか・・・ごめんね」
ハノ字眉で謝る先生。今日の先生は『ごめん』ばっかり。
「もういいよ。別に謝らんくても・・・」
先生の『ごめん』を突っぱねてしまうあたし。

『のっち!あのウエイターさん誰なん?』って言えない自分が嫌。
余裕持って、素直に訊けない自分が嫌。

食事が出されても、あたしたちは会話もなく黙々と食べ続けただけだった。
こんな楽しくないご飯は始めてだよ・・・。

会計は先生が出してくれた。
あたしは自分の分のお金を渡したけど、先生は受け取らなかった。
「彩乃!!」
お店を出る時、またあの人が先生の名を呼んだ。
「ちょっと、待ってて」
先生はあたしを外に待たして、自分はお店に戻った。

外にいるから二人が何を喋っているかわからんけど、やっぱりすごく楽しそう。
なんだか、あたしといるより先生は楽しそう・・・。
はぁ、もう嫌だ。他の人と楽しくしてる先生は見たくない。早く帰りたい・・・。

「ごめん。さ、帰ろ」
あたしたちは車が止めてある地下駐車場へ向かった。
先生はいつもの様に先に、あたしを乗せてくれる。
今日はその優しさまでもが、憎らしく感じでしまう。

いつもは先生が座ったら、すぐにエンジンをかけるけど今日は違った。
先生は両手をハンドルに乗せて、ひとつ小さなため息をついた。
そのため息は、あたしに突き刺さる。
変な緊張が車内を支配する。


「・・・あの人は、大学の時に付き合ってた人。向こうから付き合ってくれって言われた。
付き合ってた期間はたぶん2年くらい。別れたのは、互いに忙しくなって自然消滅みたいな感じ。」
あたしは何も訊いてないのに、先生はいきなりあの人のコトを語り始めた。
「他に訊きたいコトは?」
この言葉に妙にカチンときた。

「・・・別にない。てか、あの人に興味ないし!知らんでいいよ!先生の過去なんでどうでもいいんよ!」
あたしは喧嘩腰に喋り始めてしまった。
「でも、あ〜ちゃん明らかに機嫌悪くなったじゃろ?じゃ、なんであんなピリピリしとったん?」
「のっちが、あ〜ちゃんのこと『親戚の子』って言ったからじゃ!!」
「・・・だって、それはしょうがないじゃろ。世間体があるけ」
「そんな事わかっとるよ!!子供扱いしないでよ!!」
あたしはとうとう泣き出してしまった。
「わかっとるよ!生徒でしかも同性ってことくらい!!でも、あ〜ちゃんは不安なの!!
のっちが誰かと楽しそうに喋ったり、笑ったりしてるの見とうないの!!のっちがどっか行っちゃいそうで嫌なの!!」

あたしは今まで思っていたコトを、先生にぶつけてしまった。
先生は黙ってきいているだけ。
あたしはまだ続ける。
「あ〜ちゃんとのっちは付き合ってるけど、そんな事は、言えないのわかってる、けど、皆に知って欲しいの!
でも、出来ない事はわかってるの!でもそうしないと、でも・・・」
あたしは自分でも何言ってるんだか、わからず子供の様に泣きじゃくってしまった。

「・・・他には?」
先生は涙で濡れてるあたしの頬を右手で拭いながら、穏やかに尋ねた。
「なんで今日寝坊したん?あ〜ちゃんすごく楽しみだったのに・・・のっちは、あ〜ちゃんとのデート嫌なん?」
「・・・嫌なわけないじゃん。のっちもすごく楽しみだったけど、試験問題作ってたら寝るの遅くなってね・・・。
って言っても、ただの言い訳だね。ごめんね、あ〜ちゃん。次からは絶対に寝坊せん。約束するよ・・・」

「・・・他には?」
「お店出る時、あの人と何喋ってたん?」
「連絡先訊かれた。でも断った。」

「・・・他には?」
「こんなビービーすぐ泣くあ〜ちゃん、めんどくさくないん?」
「めんどくさいくないよ。」

「・・・他には?」
「あ〜ちゃんの事、好き?」
「すげー、好き」
先生はそう言って、涙と鼻水でグジョグジョなあたしにキスをした。
いくら車の中といえども、もし誰かに見られたら大変なことになるのに、先生はキスをしてくれた。


先生と目が合った。二人してはにかんで笑った。
先生はティッシュボックスから2,3枚取り出し、それをあたしの鼻に当てた。
「はい、チーンして」
先生が鼻をかませてくれた。まるでお母さんみたい。

「スッキリした?」
あたしはコクリと頷いた。鼻もかんで、思ってることを先生に言ったら、鼻も心も本当にスッキリしてしまった。
「・・・不安になったら今みたいに、のっちにぶつけていいからね。それで安心するなら、のっちはあ〜ちゃんの不安を受け止めるよ」
ビックリするほどの、先生らしい優しい言葉だった。
その優しさでまた泣きそうになる。

「あ!!!」
先生が急に大きな声を出すから、涙が引っ込んだ。
「な、なに?」
「これこれ、渡すの忘れるとこだったわ〜。よかった、思い出して♪」
そう言ってあたしの手を取り、手のひらに小さなかわいい箱を乗せてくれた。
「何?これ?」
「いいから、開けてみて」
あたしはワケがわからず箱を開けた。

中にはあの可愛い雑貨屋さんにあった、ネックレスだった。

「えっ?え?のっち、これ?何で?」
あたしは軽くパニック。
「あ〜ちゃん、さっきこれすごく欲しそうな顔で見とったじゃろ?のっちからの、サプライズプレゼント!たまにはこういうのもいいじゃろ?」
「もしかして、トイレ行くふりして買いに行ったん?」
「あ?ばれた?」
「ありがとう、先生」

先生、ごめんね。過去に嫉妬しちゃって。勝手に不安になっちゃって。
先生は、ちゃんとあ〜ちゃんのこと見ててくれてたんだね。

「よっしゃ!じゃ、帰りますよ〜」
「は〜い」

やっぱり、先生とのデートは楽しい。

— Fin —






最終更新:2009年02月23日 05:34