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ある日の放課後、私とのっちは教室に残って、
美術の課題を仕上げていた。
油絵の具の匂いはキツいから、少し寒いけど窓を開ける。
冷たい風が、のっちの髪を揺らす。
くせのない、まっすぐな髪。

見とれていると、のっちが前を向いたまま私に声をかける。
「ゆかちゃん」
「へ…?」
驚いて変な声が出ちゃった。
「赤い絵の具、貸して」
ふと、のっちのキャンバスを見る。
もう完成しているように見えるけど、赤い絵の具、どこに使うつもりなんだろう。
のっちは、あれだけ何度も色を重ねて、苦心して描いていた空の上に、
赤い絵の具をべた塗りし始めた。
「ちょっ……、のっち!」
私は立ち上がって、のっちを止めようとした。
のっちは動きを止めず、一気に塗りきる。
「なんで……?」
私は、わけが分からずのっちを見つめる。

のっちの瞳に夕日が差し込んで、この世のものとは思えないほど、
美しく光っている。
宝石のような瞳をこちらに向けて、笑顔でのっちは言う。
「あたしには、こう、見えたの」

のっちは…、自分が見たものを、自分が感じたものを、
まっすぐに表現する。
私が描いているのは、写真で見た風景。
カメラのレンズを通して見た世界。
のっちが描いているのは、のっちが見た風景。
そのときの空気、そのときの感情まで含んだ、
のっちの世界。


今の私の感情を、あえて言葉で表現するなら……

それは、「恋」かもしれない。






最終更新:2008年10月10日 14:47