アットウィキロゴ
やっと
やっとだよ。

ようやく週が開け
今日は先生に会える。


先生のコトバ通り
結局、先週はあれから部活には行かなかった。


補習もさぼり
久々に、自由な放課後を過ごすはず、、、だった。


けど、うちに早く帰っても
考えるのは先生のことばっかで
大好きなゲームすら手につかなかった。



脳裏に浮かんでくるのは
万華鏡のようにくるくると変わる表情の一つ一つ。
耳の奥で響き残ってるのは、あの甘い声の余韻。

そして気を抜くと、あの日、
初めて重ねた唇からやわらかさ
抱きしめた体温、が蘇ってきた。


はぁ・・・


どんよりとした曇り空を眺め
自然と洩れた、ため息。


季節は、梅雨になっていた。

最近は、雨続きだったから
こうして、屋上で空を見上げるのも久しぶりだ。


ようやく、先生に会えるというのに
嬉しいキモチの中に見え隠れする、戸惑い。


さてさて、、、、どんな顔して会いにいったらいいんだろうか・・・



「のっち?」

見上げた視界に、あ〜ちゃんの姿が入り込んできた。

「おまたせ。ごめん、授業長引いちゃって」
「全然、大丈夫だよ」
「先、食べちゃった?」
「うぅん、あ〜ちゃんと食べようと思って待ってた」


3年生になって、あ〜ちゃんとはクラスが離れてしまった。

なかなか、友達ができないあたしを見かねて
こうして、週に何回かは、一緒に昼ごはんを食べてくれる。
毎日となると、のっちは必死になって友達をつくろうとしないから。
ほんと、あ〜ちゃんはのっちのことよくわかってるよ。


「いいかげん、友達できたん?」
「うん、、、まぁ」
「まぁって・・ま、いいけどさ。
 …で、、、写真のほうは、どうなん?」
「うん、、、まぁ、楽しくやってるよ」
「…ふーん。で、そのカメラは買ったん?」
「いやいや、部のを借りてんの。
 あ、あ〜ちゃんのこと撮っていい?」
「は?なんで?」
「いやぁ、、、撮りたいと思ったものを撮りなよって
 言われてるんだけど、、、あんまり思いつかなくって」
「で、あ〜ちゃん?」
「うん」
「ヤだ」
「えっ、なんで!?」
「普通に恥ずかしいし」
「えぇー」
「てか、あんたさぁ・・・“写真”に興味あるから転部したんでしょ?
 撮りたいものが、思いつかんってどうなんよ?」
「うっ・・」


おっしゃるとおり・・・

あ〜ちゃんの視線は
呆れたようにも見える。
けど
何か、言いたげなようにも見えた。



「・・・きっと、のっちは考えすぎなんよ」
「えっ?」
「何か撮らなきゃって思うとわかんなくなっちゃうんだって」
「・・・」
「別に、このどんよりした空でも、目の前にある校舎とかでもいいんよ」
「…はぁ」
「・・なんなんよ。そんなマヌケな顔して」

うわ、相変わらず厳しい。

「いや、なんかすごい写真のこと知ってるような口ぶりだから・・
 それに、あ、そっかって妙に納得してる自分がいて」

ん?
あ〜ちゃんの表情が少し変わった。


「あぁ、、、、昔、知ってる人に聞いたことある言葉を
 そのまま言っただけだよ」
「あ、そうなんだ」
「てか、あんた。せっかく転部したんだからがんばりなよ!
 先週、部活サボっとったでしょ!?」
「うわぁ、、、よくご存知で。いやいや、はい。
 今日から、またちゃんと活動しますよ」
「今日から?」
「うん」
「ふーん・・・」


待ちに待った放課後。
補習を終え、足早に部室へと向かう。

いろいろと考えたものの
先生に会いたいってキモチが揺らがない限り
考えたって仕方ないって結論に達した。


—きっと、のっちは考えすぎなんよ
確かに、そうかも。
ま、あ〜ちゃんは、“写真”に対して言ったんだろうけど。


考えてもわからないことは放っておこう。
わかってるキモチに素直に。



「失礼しまぁす」


扉を開けると、椅子に腰をかけて
写真を眺めている先生の姿。


「あ、きたきた。休んでる間、少しは写真撮った?」


      • 拍子抜けするほど、普通、だ。


ホッとして、その場に立ち止まったままのあたしを見て


ぷはっ、と
おかしそうに先生は笑い出した。


「えっ、なんなんですか?急に・・」

「いやぁ、、、今日はいったいどんな顔して現れるのかなぁって思ってたら…
 予想通りだったから、おかしくって」

「予想通り、、、て、どんな顔してました?」

「んー、それは秘密だよ」


まいったな、、、
やっぱり、先生の方が一枚も二枚も上手だ。


「でも・・・」

そう言いながら、先生が近づいてくる。

「?」

「もしかしたら、、もう来ないのかもって
 ちょっと、ほんのちょっとだけど、そうも思ったんだ」

「それはないれす!」

思わず大声を出してしまった。

「ないれすってw」

先生は大爆笑。そして

「うん、、、ありがと、のっち」


そう言って、先生は
のっちの頭を撫でた。


まるで、小さい子をあやすように・・・



先生?

あなたが言ったように
のっちは、最後の最後まで、コドモだったのかな?






最終更新:2009年02月23日 05:38