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あぢぃ・・・


季節は、夏になっていた。


部室の窓から、外を眺める。
見える桜の木は、もうすっかり、緑色だ。
夏の日差しにきらきらしてる。


これはこれで、キレイだな。


そっと、一枚、カメラにおさめる。



「なに撮ってんの?」
びっくりして振り返ると、先生の姿があった。


「えっ、あぁ、、、桜の木」
「ふーん・・・桜、、、好き?」
「んー、、、そ、ですねぇ」
「そっか・・・」


窓越し、隣に先生が並ぶ。


「それにしても、めずらしいね。
 こんな時間帯に、部室にいるなんて」


たしかに・・
今は、昼休み中、だから。

4限目。
なんとなく、授業を受ける気になれなくて・・
ふと立ち寄った、部室。
鍵が開いていたので、さっきの時間
ここでのんびりしていたのだ。

で、、そのまま昼休みに突入。



てか、、、


「先生こそ、、、なんで、部室、に?」
「ん?んー、、さっきの時間、誰かさんが
 サボってるのが見えたから?」
「えっ?」


クスクスと、笑う愛しい人。



「ご飯は?食べた?」
「いや、、まだ、です」
「じゃ、一緒に食べようっか」



なんだか、歯痒い。
そわそわする?
だって、こんなこと初めてだもん。



先生は、机の上、お弁当を広げだした。
のっちは、相変わらず、パン食だけど・・


ふと目をやると、小さなお弁当箱。
彩りよい、バランスのとれてそうなお弁当。



「…自分で作るんですか?」
「うぅん、、、情けないことに、母親に作ってもらってんだよね」
ぺろっと舌をだして、肩をすくめる先生。
「そなんだw」

自然と頬が緩むのが、自分でもわかる。



全身。
頭の先から、足の指の先まで。
もうすでに、先生に侵されている。
全ての細胞が、反応する。
大袈裟なんかじゃく、
これが今のあたしの、リアル、だ。



パンをほうばる。


「のっちは?お母さん、お弁当作ってくれないの?」


“のっち”
先生がこう呼ぶときは
先生の中でなにかのスイッチが切り替わるときの『合図』
最近、一つ、わかったこと。


「あぁ、、あたしは一人暮らししてるから」
「え、そうなんだ?」
「うん、両親の仕事の都合で」



ぱくぱくとお弁当を食べる先生。


ん?


「先生、、、野菜キライなの?」


さっきから、野菜をお弁当箱の隅のほうによけてる。



「うん、キライ」

満面の笑みで言うものだから、思わず笑っちゃったよ。


「あ、バカにしたなぁー」
「いやいや、そういうわけじゃないですよ」


ただ、先生の新たな一面が見れて嬉しかっただけ。


「えー、じゃ、なんで笑うん!?」
「えっ、かわいいなぁって思って」


この頃にはあたしは、
先生へキモチを素直に表すようになっていた。


だってもう
完全にバレていたの、だから。


でも、今日の先生の反応は予想外だった。

耳まで真っ赤にして
「もう、、、いつもいつも、なに言うんよ」


思わずこっちがテレてしまった。


「あ、のっち、野菜食べる?」
そう言って、先生は、トマトをあたしの口元に差し出す。

されるままに、トマトを口にする。


「おいしいじゃん」


「えぇー、信じられん!!」



一瞬の間。


絡み合う視線。


沈黙の刹那。


そして


同時に微笑みあう。



おもむろに先生の手が
あたし向かって伸びてくる。


頬をかすめ

耳の後ろを通り過ぎる。


うなじから、後頭部をかけて
さらさらと、撫でる。


やさしい手つき。
なんだかキモチよくて
思わず目を閉じた。


「目、閉じちゃって・・・・
 んな顔したら、、、キス、しちゃうよ?」


声色には、まだ
おどけた色が混ざっていた。


あたしは、ただ

「…うん」とだけ、答える。


先生の表情は見えない。
けど
きっと、いつものように
困ったような笑みを浮かべてるんだ。



一呼吸の間をおいて


先生の唇があたしのそれにそっと触れる。


見えてない。
だからこそ、五感全てで先生を感じる。



唇を舌で撫でられ
隙間を狙って侵入してきた。


先生の体温が伝染ってくる感覚に溺れていく。



香水変えたんだ・・・

吸い込むと、胸が締め付けられ
息がうまくできなくなる。


されるまま
舌を絡ませる。



あぁ、、、ダメだ!


耐え切れなくなって
ぐっと
自分から、先生の舌を引き寄せようとすると


案の定
さらっとかわされ
すっと、唇を離されてしまった。



「残念でした。今日は、ここまで」

耳元で甘く意地悪な囁き。


頭ん中は、
もうとっくに、溶かされてしまっている。



そっと、目を開く。

きらきらとまぶしい光。

それ以上、まぶしい先生の笑顔が

目に沁みて、、、、

なんだか

ちょっぴりイタイ。



「あぁ、、、もう、、、、、」

思わず大きなため息をついて
机の上に突っ伏した。


手を伸ばして掴もうとすると
ヒラヒラと指の間をすり抜けていく。


斜め上の方から
くすくすと笑い声が聞こえる。


ささっとお弁当箱を片付ける音。


「じゃ、また放課後、ね。
 あ、昼からはちゃんと授業受けるんだよ」
「・・はーい」

のそっと体を起こす。


目の前には、部室の扉。


「てか、先生…?
 誰も、入ってこなくてよかったですね」



よく考えたら、いつ誰が来てもおかしくないじゃん。



「んー、、、そだねぇ・・・」

そう言いながら、扉に向かっていく先生。


「なんて、ね」


ガチャッ


えっ?



「あたしが、そんな危険なことするわけないでしょ?」



やられたっ・・・


あたしの反応を見ると


先生はくすくすと笑いながら
「じゃぁね、大本さん」


そう言って、
今さっき、自分で鍵を開けた扉から
立ち去っていった。




ヒラヒラ、ヒラヒラ



キレイな桜の花びらを
掴もうとするたび
この手のひらは、ただ空を切るだけで、、、


でも眺めているだけでは
胸のどっかが、キュンを締め付けられ、、


だから、何度も何度も
あたしは、繰り返し手を伸ばしてたんだ。


ヒラヒラ、ヒラヒラ、、、


あの暑い夏の日も
秋が過ぎ、寒い冬がきても


あたしは、ずっとずっと
桜の花びらに囚われたままっだったよ。。。



先生?


あなたはあの日、どんなキモチで桜を眺めていたの。。。?







最終更新:2009年03月17日 17:28