のっちに声を掛けてからも、あまり深く関わらないように軽く手を振って挨拶するくらいにしていた。
そんなあたしに、同じく軽くぺこって頭を下げて返してくれる。
その動作が妙に可愛く思えて、そんなのっちを見れるだけで良かったのにな…。
一緒に居る、のっちファンの子に、バスの中でそれをしたのが見つかっちゃって。
『ちょっと!どういうこと?』みたいな感じになって…。
今度紹介してよって流れになってしまい。カラオケにのっちを誘う事になった。
数日後、帰りのバスが一緒になって。
先に乗ったのっちは、席は空いているのに相変わらず立っている。あたしはのっちの側に座った。
のっちも座っちゃえば良いのにって思うけど。
たぶんそれは、のっちが他の人に席を空けておきたいというのっちなりの優しさ。
のっちは人と話すのが苦手みたいで、その優しさを表すのがとても不器用みたい。
だから、カラオケも断れるかななんて思いながら聞いてみたんだよね。
しばらく何とも言えない顔で答えてくれなかったから、やっぱダメだよねってやめようと思ったら。
焦ったようにあたしの肩を掴んで『…行くよ!あ〜ちゃんと行きたい!』なんて言われて…。
必死なのっちが可笑しくて大笑いしてしまった。
こんなに面白いのに、普段はポーカーフェイスだから、周りから取っ付きにくがられてるのっち。
あ〜、もったいないなぁ〜。
それから、特に意味はないんだろうけど、あたしと行きたいって言ってくれたのがすっごく嬉しくってしょうがなかった。
でも、コレを欲しがっちゃいけない。だって…。
ふとのっちが『もう一人一緒に良いかな?』って。
ほらね。きっとゆかちゃんだ。
もちろん、断る理由なんてないからオッケーした。
ゆかちゃんは、たぶんのっちの事を好きだと思う。
付き合っている訳ではないけど、いつものっちにピッタリしてる感じがするから。
誰と?って聞けなくて、そのまま別れちゃったけど。
翌日、珍しくまた帰りが一緒になったから、念のため聞いてみた。
そしたらやっぱり、ゆかちゃんだった。
それを答えてから、のっちは気まずいみたいで少し俯いていた。
バスを降りてからも、後ろをトボトボと付いてくる感じで…。
ゆかちゃんとの事。聞いてるのかなぁ?それで気にしてるのかも。
のっちに聞くと『同じ高校』というのは聞いているみたい。でも、そわそわしてるのっちを見ると、それだけじゃないかなって思った。
案の定『ゆかちゃん誘ってくれてありがとね。』って言ったら『迷惑じゃなかった?』ってw
もう、ホント素直なんだから。
のっちが気にする事ないのにね?
そう言ったら、なんだか落ち込んだみたいな気配がしたから後ろを振り返ると、やっぱり軽く肩を落としているのっち。
そんに優しかったらダメだよ。これ以上好きにさせないでよ。
でも…。
「…そういう所、好きだよ?」
まるで告白みたいなセリフに、ビックリしてる表情。
あ、でもこのままじゃ誤解しちゃうかも。
そう思って「変な意味じゃないから。」ってフォローをいれておく。
違う…。ホントはホントに好きなんだよ?そう思っただけで顔が少し熱くなる。
その気持ちを飛ばすように、勢いにまかせて明日のカラオケ一緒に行こって誘ってしまった。
あぁ…、何言ってるのあたし。
しかも、モーニングコールまで…。
翌朝、準備もすっかり整ってしまったあたしは、約束通りのっちに電話を掛けるため、携帯と睨めっこ。
だって、時間まではまだ十分以上あるんだもん…。
はぁ〜、何やってんだろあたし…浮かれ過ぎ…。
両手で握り締めた携帯に、おでこを当てる。
「ふぁ〜…。オハヨぅ…。」
ちゃあぽんの声で、ふっと顔をあげて、挨拶を返す。
「ん〜、お姉ちゃん出掛けるん…。」
「んん。カラオケw。」
寝ぼけてたかと思えば、ヒョイと隣に座ってきて
「で?で?そんな赤い顔してぇ、今からのっちさんに電話?」
「な!!!」
「うわwお姉ちゃん顔真っ赤w可愛ぃ〜。」
自分でも、一瞬にして顔が熱くなるのが分かった。
「ほ、ほっといてよっ!」
ビシッと叩こうとしたら「おっとぉ。」って言いながらヒラリとかわされてしまった。
「へへw楽しんできてね〜。」
ひらひらと手を振って部屋を出て行く。
女の子同士。ちゃあぽんと恋ばなをする事もあって。
まあ、その、のっちの事も話しちゃってるから…。まったくもう。姉をからかうなんてwけしからん!
あ。話している間にちょうどいい時間だ。
一度深呼吸をしてから、携帯の通話ボタンを押す。
呼び出し音が鳴って…のっちと繋がる。
「お早ぅ。のっち。一時間前だよ?」
『ん・・。ぅ〜ん。…オハヨ。』
わぁ…。起きたての声だぁ。なんかドキドキするぅ。でも、そのドキドキを声に出さないように続ける。
「ちゃんと起きてる?」という問いかけに『起きてる…。』って返してくるけど、このままだと絶対二度寝しそう。
だから、ちゃんと起きてもらおうと思って、もう少し話そうとしたんだけど…。
あたしの中の悪戯心が働いちゃって…、思いっきり叫んじゃいました。
携帯越しののっちは無言だったけど、布団のワサワサッって音がして、のっちが勢い良く起きた音がした。
その様子を思い浮かべたら、すごく面白くて自然と声が笑ってしまった。
のっちもバッチリ目が覚めたみたいで『それは反則でしょぅ…』て言われたけど、それはのっちを起こすためだもん。しょうがないでしょ?
そんなのっちに「また後でね。」と言って携帯を切る。
なんだか、妙な錯覚に陥る。もしも付き合ってたら…みたいな…。
あぁ、あたしかなり重症かも…。そう思いながら頭を抱える。
そんな気持ちを振り払うように、顔を横にぶんぶん振ってみる。
気にしたらダメだ、どんどん深みにはまってしまいそう…。
何もしないでいると、つい考えてしまうので、時間まで全然まだなのに公園まで来てしまった。
公園には子供たちが遊びに来ていて、子供好きとしては一緒に遊びたくなってしまうわけで…。
のっちが来るまで、仲間に入れてもらうことにした。
時間になって、のっちの気配に気付いて立とうとすると、携帯を出して皆の事を撮ってくれたのっち。
男の子が変顔しよ?って言うから、変顔までしちゃって。
のっちも楽しそうに笑ってる。のっちも子供好きなのかな?
楽しかったものだから、カラオケの約束を忘れてしまうところだった。
子供たちとまた遊ぼうねって約束して、名残惜しくその場を後にした。
このまま歩いてると、間に合いそうにないから途中から走る事にしたあたし達。
「走るの苦手だよぅ。」なんて言いながら走るのっち。
そんなのっちに「ほらほら〜。遅れちゃうよ?」って言いながら手招きする。
のっちの新しい面を知るたび、あたしの中に入ってくるのっちという存在。
それだけで嬉しくなる。
見えてきた集合場所には、すでに皆来ているみたいで。
そこにゆかちゃんの姿を見つけて、少し緊張する。
先に、いつもの二人に「おまたせぇ〜。…」って声を掛けて、のっちが向かった先へと視線を向ける。
ゆかちゃん…。
ゆかちゃんと話すなんて、あの日以来だね?
あたしがのっちを見つけて、ゆかちゃんとお別れをしたあの日以来。
あたしはゆかちゃんと話しても良いのかな?
少し迷いながらも、話している二人の中にお邪魔してみた。
そしたら、のっちが気を遣ってくれたみたいで、他の二人と中へ入って行ってしまった。
必然的にあたしは、ゆかちゃんと二人になる。
Side A
—その6〜8の場合—fin
最終更新:2009年03月17日 17:31