「う〜ん・・・どうしよう・・・」
お昼に何を食べるか、あたしは悩んでいた。
て言って散々悩んでも、結局は大好きなカレーライスになっちゃうんだよね〜。
「カレーライス、ひとつ」
食堂のおばちゃんに注文する。
そう、ここは大学の食堂。
あたしはいつものように奥の隅っこの席にひとりで座る。
大学に入学して約半年。
人見知りな性格が邪魔して、まだ友達が出来ない寂しいキャンパスライフ。
周りの楽しそうな会話を遮断する為に、ヘッドホンをしてカレーを食べる。
そりゃ友達がいないのは寂しいけど、とりあえずあたしはipodとPSPがあれば大丈夫。
大好きなカレーを一口食べ、今日のはイマイチかも・・・と食堂のおばちゃんに心の中で文句を言ってたら、人の気配がした。
カレーに奪われてた視線を人の気配をした方向に向ける。
目の前に立ってたのは、一度もしゃべった事がない可愛らしい女の子だった。
あれ?あたしに向かってなんかしゃべってる?
でも、何言ってるのか聞こえん。あっ、そっかヘッドホンしてるの忘れてた・・・。
あたしはスプーンを置いて、両手でヘッドホンを外した。
「あの・・・もしよかったら一緒に食べない?」
「・・・へ?」
「あっ、急にごめんね。大本さんいつも一人で食べてるから・・・」
えっ、なんでこの子あたしの名前知ってるの?
てか、やっぱりあたしってハタから見たらかなり可哀相に見えるの・・・。
「・・・はぁ」
「あっ、ごめん。・・・もしかして、迷惑だった?」
「い、いえ、め、迷惑じゃないっす・・・」
「そっか〜、よかった」
その子は、太陽のような笑顔になった。
一度もしゃべった事はなかったけど彼女の顔をよく見たら、いつもよく見かける『いかにも女の子!!』って感じのキラキラしたグループの子だった。
なんでそんなキラキラした子が、あたしみたいな残念な子に話しかけてるんだろうか・・・。
「えっと、あの、な、何であたしの名前知ってるんすか?」
「え〜大本さん知らんの?講義ほとんど一緒だよwあっ、あたしまだ自己紹介してなかったよね、西脇綾香。あ〜ちゃんって呼んで」
「・・・あ〜ちゃん?」
「うん!次からそう呼んで?」
「大本さんは、何て呼んだらええ?さすがに苗字で呼ぶのは味気ないよねw」
あ〜ちゃんと呼ばれる子はクスクス笑った。
「・・・えっと、高校の時はのっちって呼ばれてました」
「のっちか〜。かわいいね。じゃあ、あ〜ちゃんもこれから大本さんのこと、のっちって呼ぶね」
「あっ、はい。どうぞ・・・」
どうリアクションしていいかわからず、こんな返事しか出来ない自分に呆れる。
「なんかのっちって見た目と違っておもしろいね〜」
え?おもしろい?
「そ、そう?おもしろいなんて初めて言われてたよ・・・」
「うん。だって見た目はクールっぽいのに、しゃべってみたら噛み噛みなんだもんw」
あー、そういうことか〜。
「さっ、早く向こうのテーブルに行こ。あ〜ちゃんの友達も紹介するね」
ちょっと強引な子だけど、彼女のおかげで友達が出来そうだし楽しいキャンパスライフが過ごせそう。
あたしはカレーがのったトレイを持って、あ〜ちゃんたちのグループがいるテーブルに移った。
グループの子は3人いた。
あ〜ちゃんがテキパキとあたしに一人づつ紹介してくれた。
どの子もみんなキラキラ可愛らしい子達。
あたしはちょっと圧倒されぎみでペコペコ挨拶した。
最後の3人目の子は、キレイな黒髪のどこか妖しい雰囲気の子だった。
「樫野有香です。」
ちょっと怖いくらいの最小限の自己紹介。
「あっ大本彩乃っす。」
あたしもつられて最小限の自己紹介になってしまった。
あ〜ちゃんがすかさずツッコむ。
「え〜、ゆかちゃんそれだけなん?大本さんのことは『のっち』って呼んであげてね」
ゆかちゃんて子は無言でOKと指でサインした。
「のっち、ゆかちゃんのことは『ゆかちゃん』とか『かっしー』とか呼べばいいから」
「うん、わかった。よ、よろしくね、かっしー」
あたしは精一杯明るくゆかちゃんに伝えた。
ゆかちゃんはニコっと微笑んでうなずいただけ。
その笑顔はどことなく冷たい感じがした。
これがあたしたち3人の運命の出逢い。
いや、運命なんてそんなカッコイイもんじゃない。
本当は出逢わない方がよかったんだ。
あたしは、この時友達が出来る喜びが大きくて、二人の気持ちなんて気づく余裕なんてなかったんだ。
これからあ〜ちゃんが悲しんで泣いて、ゆかちゃんが苦しんで傷つくのがわかってたなら、あたしはノコノコとあなたたち二人の前に現れなかったよ。
あ〜ちゃん、悲しませてごめんね。
ゆかちゃん、苦しませてこめんね。
二人とも、ごめん。
あたしが早く気づけば、あんな事には・・・ならなかったんだ。
最終更新:2009年03月17日 17:40