君の薬指にはあの日渡した指輪が光ってる。
私のズルイ行為の証であるそれは、誇らしげに存在を主張してる。
N『それ、気にいってくれた?』
何の脈絡もない問い掛けに君は予め用意されていたかのような応えをくれる。
K『もちろん。だってのっちの気持ちでしょ?』
優しく微笑み指輪に軽く口づける彼女は慈悲深い女神のようにも見えた。
少し胸が痛む。
私の打算めいた行動によって選ばれた指輪に慈しむようなキスは似合わない。
N『……。』
君は何も言えない私をみて、悲しそうに微笑んだ。
K『泣きそうな顔になっとるよ……?』
そう言って君は私に口づけた。
その指輪は捨ててくれていいよ。
また新しいのを上げるから。
一点の曇りもない気持ちを君に上げたいから。
もしも、この世にリセットボタンなんてものがあったなら。
私達の間で押されるべき時はいつなのか。
過去に何回あった?
もしくはこれから?
それには及ばない?
行き着く先にはどんな世界が待ってるかは分からないけれど、
君が望むのならば、
どこへでも。
今日はなんだか晴れやかな気分だから。
そうだ、あなたに何か買って帰ろう。
特に何かの記念日でもないし、節目でもない。
お互い誕生日でもないし、ケンカの仲直りの為でもない。
ごくごく有りふれた日常。
そんな日常がどれだけあたし達には贅沢か。
だから今日はあなたへの気持ちを形にしてみよう。
K『はい、これ。』
突然の出来事に目を丸くするあなた。
ガサゴソと音が鳴り中から顔を覗かせるのは、あなた好みのゴツめのリング。
N『えっ、これ、どしたん?!』
K『……お返しみたいなもんかな。』
それは建前。
真実は所有欲を具現化させたもの。
あたしのもの
そう思える何かが欲しかった。
ばかみたいだよね。
たった一つの指輪であなたの自由は奪えない。
分かってるけど何か形が欲しかった。
あたしは欲張りなくせに臆病だから、
言葉じゃ満足出来ない。
言葉じゃまだ足りない。
あなたの全てが欲しいくせに口に出せない。
そんなあたしの唯一の自己主張の形。
N『ありがとう。大切にするけぇ。』
そんな無邪気に喜ばないで。
N『……のっちは。』
沈黙を固唾を飲んで見守る。
N『きみを護りたい。』
あなたからの言葉はあたしの涙腺を刺激し
とめどなく涙が溢れた。
(続く)
最終更新:2009年03月17日 17:42