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私は、カレーを混ぜる。
グツグツ、グツグツ。
私は、カレーを混ぜる。
グツグツ、グツグツ。
何時間か前の、あなたの表情を思い出しながら…。


ーピンポーン

インターホンの音に、私は慌てて玄関に向かう。

「おかえりなさい。」

最高の甘い笑顔で、私は彼女を迎えた。

『ただい、んっ…!』

深く、深く、口づける。
毎日毎日、玄関で彼女に行う行為。
彼女が他の人と、たくさん会話した、汚れた吐息。
それを家に吐かれてしまうその前に、
私が消毒を、するの。

「クスッ…。」

ぎゅっと彼女を抱きしめると、その体から、知らない香りがツンと鼻についた。
一瞬で、カッと頭に血が昇るのが自分で分かる。
私は、勢いよくそのまま彼女の首に吸いついた。

分かりやすくビクッと固まる彼女。

「…つけちゃった。」

彼女は、目を少し見開き、固まったまま。
私は知ってる。
彼女は、浮気はしない。
絶対に、私から離れてはいかない。

「クスッ…。」

私は彼女の手をひき、リビングへと向かった。


リビングに足を入れると、彼女は再び、分かりやすく固まった。
私は気づかないふりをして、彼女を座らせる。

「…食べようよ。」

彼女は、戸惑いながらも、カレーを口に運んでいった。

『ゆかちゃんは、食べないの?』
「ゆかは、いいの。」

お腹、いっぱい。
そして、彼女も絶対に、お腹、いっぱい。
そんなこと、分かってる。
カレーを食べたくて、作ったんじゃない。

「…美味しい?」
『うん、お、美味しいよ。』

彼女は、嘘はついていない。
私はあまり、料理をする方ではないけれど、カレーくらいは人並みに作れる。
だけど、足りない、よ。

私は、ひとりキッチンに戻る。
まだ冷めていない鍋と睨めっこ。
今日の夕方、みんなで一緒に食べたお店のカレー。
美味しくて、美味しくて。
ただ、見たことのないくらいにあまりにはしゃぐ彼女の姿が、私の何かをかき乱した。

私は、再び鍋に火をかけ、グツグツとなる鍋の中心を、じっと見つめていた。
ポツポツと、カレーが煮詰まるのを見て、

ナ ニ カ ハ ズ レ タ

「きゃっ!」

私は、鍋に指をジュッとあてた。



『ゆかちゃん?』

優しく抱きしめてくれる彼女。
この温もり、全部全部、ゆかのもの。
誰にも、渡したくない。
いろんな感情が、一気に私を襲い、気づけば私は彼女の体を奪っていた。

彼女の中が、私を受け入れたその時。
私は指の動きを止めた。
うっすら唇を開け、うるんだ瞳で見つめてくる。
そのあまりの美しさに、私の心蔵は止まってしまったような感覚にさえなった。

「…美味しかった?」
『う、うん、美味しかったよ…?』

足りない。
足りない、よ。

「…美味しかった?」

私はじっと彼女を見つめた。

『…美味し、かったよ…』
『ゆかちゃん、の、カレー…。』

その一言で、私を支配していたドロドロとした黒い感情が、一気に快感に変わる。

『あっ…はぁんんっ!!』

彼女が登りつめたのを見て、私の心は満たされた。


グツグツ音のする鍋に、私は指先をサッとつけた。
そしてその指を、倒れ込み意識がハッキリしない彼女の口に入れる。

「…カレー、美味しいね。」

私は彼女に深く口づけをし、彼女の意識を奪った。

「のっち、は、ゆか、の。」

クスッ…

私たちの同棲生活は、まだ始まったばかりだった。

  • かしゆかの場合 END-





最終更新:2009年03月17日 17:49