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SIDE-N


彼女の家から二人が出てくる。
眠たそうにしている様子はあの日の私と彼女と重なる。


「のっち、おはよー」
「おはよ。」


昨日の返信されたメールの意味を聞こうとしたが、
彼女が大きく欠伸してウトウトしているのを見ていると
何だかどうでもよくなった。
やっぱり私は騙されてるのかな。
すぐ信じちゃう私も馬鹿なんだけど。
彼女だからこそ信じたのに。
小さな溜息をつく。


現場に着いてから淡々と仕事をこなした。
私だってプロだから笑顔ぐらい作れる。
でも正直面白くなかった。

「のっち?」
「…は、はい。」


彼女は見逃さない。
彼女に私の作り笑顔なんて通じない。
こういう時は必ず私に声をかけてくれる。
そんな優しいところが好きなのか。
改めて自覚して、もう遅いことにまた溜息が出る。


「ちょっと話があるんじゃけど。このあとのっちん家行っていい?」
「え…まぁ。」


そんな深刻な顔してた?
やっぱ私って駄目だ。
自己嫌悪。


「あ、ゆかちゃんに」
「ゆかちゃん?」
「その…ゆかちゃんにうちの家来るの言わなくていいのかなーって…」
「別にいいじゃろ」
「えっ、あ…そう?」


なんだ?
二人ともベッタリじゃないの?
返ってきた答えが案外冷めていて、拍子抜けした。


「ちょー、のっちこっち来て!」


スタジオの端でもっさんと話をしていた彼女に呼ばれた。
言いたいことはたくさんあるけど、仕事の話の方が優先だから。


「何?」
「あのさ…あ、もっさん。今からちょっと秘密の話するけぇ、どっか行って」
「どっか行ってって…」


もっさんは彼女の言い方に笑いながら他のスタッフさんの所へ行った。


SIDE-K


「仕事の話じゃないん?」

彼女はもっさんの背中を目で追いながら聞く。
本当は話したいこといっぱいあるくせに。


「のっち、あんたほんまにあほじゃ」
「な、なんでそんなこと急にっ」
「あほというか…お人よしというか…
仮にでもゆかに騙されてると思っとるんじゃないん?」
「…思っとる。」


あほで、正直者。
だから私は彼女に力を貸してやりたくなる。


「じゃあ何なんよ、さっきの話。」
「聞こえてたの?」
「騙されてると思っとる人の心配なんかせんでよ。」
「いや、あれは…」
「まぁええわ。」


彼女の優しさ。
無意識の罪。
これだけは彼女だけの罪。

「そんなことより。…たぶん今日、いいことあるよ。」
「え…?」
「話はそれだけじゃ。あっち行き。しっ、しっ」
「しっ、しって…のっち犬じゃないし!てかどういうこと?」
「はいはい、自分で考えてー」


私の推測が正しければ。
彼女が家に行くということが意味することは、
たぶん『いいこと』。


ハの字眉になった彼女を置いて、
私はさっきからこちらの様子を窺っている彼女の元へ向かった。



つづく





最終更新:2009年03月17日 17:51