「う〜ん・・・どうしよう・・・」
お昼に何を食べるか、あたしは悩んでいた。
「ゆかちゃん、決まったん?」
あたしに声を掛けたのは、小学校からの親友のあ〜ちゃん。
「・・・うん、きつねうどんにするわ」
「ほいじゃ、みんなと一緒に席取っとくから買ってきてええよ」
「はーい」
あたしはうどんを買いに列に並ぶ。
「カレーライス、ひとつ」
前に並んでた子はカレーを注文したみたい。
何故かその子が気になった・・・。
あっ、わかった!
後ろ姿ではわからなかったけど、横顔を見たらピンときた。あ〜ちゃんたちがいつも噂してた女の子だった。
あ〜ちゃん曰く、その子は『講義中いつも遅刻してきて居眠りする、何の為に学校に来ているのかわからない子』
その子を見かける度に、声掛けて友達になろうかな〜って言ってたっけ。
だからいつもあ〜ちゃんと一緒にいるあたしも、その子の顔だけは覚えていた。
あたしはきつねうどんを注文して、あ〜ちゃんたちがいるテーブルに戻った。
「あっ、今日はいたよ!」
「ほんまじゃ。午前中の講義いなかったのにね〜」
「あ〜ちゃん、声掛けてきなよ〜。」
「えー!あ〜ちゃんがするの?みんなで行こうよぉ」
「みんなで行ったら、大本さんビビるんじゃない?」
「そうだよ、こういう役目はあ〜ちゃんが適任じゃん」
「そ、そうなん?」
席に着くと、どうやらその子の事で盛り上がっていた。
「あっ、ゆかちゃん。あそこに座ってる女の子も一緒にお昼食べてもええ?」
あ〜ちゃんはあたしに気づくと、カレーの子を連れてくるのに同意を求めた。
「・・・ええよ。」
本当は嫌だ。声を掛けてほしくない。
でもここで嫌だなんて言ったら、このハイテンションの空気を変えてしまう。
あたしは空気の読めないバカじゃない。それにあ〜ちゃんの頼みは断れない。
「んじゃ、あ〜ちゃん行ってくるけ!」
「いってらっしゃ〜い」
他の子があ〜ちゃんを見送った。
あたしはきつねうどんを食べ始める。
横目であ〜ちゃんとカレーの子のやり取りを確認する。
カレーの子はやっぱりちょっとビックリした様子。
あ〜ちゃんはすごく楽しそうだ。そんな姿に少し胸が苦しくなった。
程なくすると、あ〜ちゃんがカレーの子を引き連れて戻ってきた。
友達になるのは成功したみたい。
本当は成功なんかしてほしくなかったけど、仕方なくあたしはカレーの子を迎えた。
あ〜ちゃんがあたしたちを、カレーの子に紹介し始めた。
「じゃ、最後はゆかちゃんね?」
あ〜ちゃんがこっちを見ながら言った。
「樫野有香です。」
あたしは自分の名前しか言わなかった。あたしから仲良くする気はない。だからそれだけで十分だと思ったから。
「あっ大本彩乃っす。」
ほら、その子も名前しか言わないじゃない。
「え〜、ゆかちゃんそれだけなん?大本さんのことは『のっち』って呼んであげてね」
あたしはめんどくさく、OKと指でサインしただけの反応。
「のっち、ゆかちゃんのことは『ゆかちゃん』とか『かっしー』とか呼べばいいから」
あ〜ちゃんがツッコんで、あたしの呼び方を勝手に決めてしまった。
「うん、わかった。よ、よろしくね、かっしー」
のっちって子はたどたどしく、あたしに笑いかけた。
あたしは社交辞令の笑顔でうなずいた。
彼女との出逢いはあたしにとって、きっと残酷な出来事。
のっち・・・あんたに、あ〜ちゃんの隣は渡さない。
最終更新:2009年03月17日 17:57