卒業式が終わって、私たち3人は屋上に立っていた。
「なんか寂しいなぁ…」
私がぽつりと呟くと、あーちゃんが言う。
「卒業しても、うちらいつでも会えるし、そんな顔しんさんな」
「そうだけどさぁ…」
この学校で暮らした3年間。
私はいろんな経験をした。
泣いたり、笑ったり、怒ったり…。
十分すぎるほどいろんなことを経験したはずだった。
けど何か…
やり残したことがある気がして、
私は今日1日、ずっとやるせない気持ちでいた。
「西脇ー!」
先生の声が聞こえる。
「お前、教室に卒業証書忘れとるぞー!」
「あっ、はーい!」
あーちゃんが慌てて階段を降りていく。
その後ろ姿を見送っていると、床に寝ころんだのっちの姿が視界に入る。
何をやり残したのかが、分かった気がした。
「のっち…」
「ふぇー?」
気の抜けた声。
軽く肩すかしをくらった気分。
それでも私は続ける。
「あのね、私、のっちに伝えんといけんことがあるんよ」
のっちがむっくりと起きあがる。
「えー、なんじゃろー」
のっちが優しい笑顔でこっちを見てる。
いざ伝えようとすると、言葉が出てこない。
私は自分が情けなくなった。
何て言えばいいの?
のっちに嫌な顔されたら、私、どうしたらいい?
もし、もし嫌われたら、この先一生会ってもらえなくなるかもしれん…。
私が泣き出しそうになって下を向いていると、のっちがそばに寄ってきた。
「ゆかちゃんは、ほんまに、かわいい」
そう言うと、のっちは私を抱きしめる。
思わず私は泣き始める。
のっちはいつだって私の味方だった。
何だかんだで辛いときはいつものっちに頼ってた。
いろんな出来事が次から次へと思い出されて、私は涙を止められなくなる。
「泣かないで、ゆかちゃん」
のっちが耳元で優しく囁く。
私たちの真上をヘリコプターが通り過ぎていく。
その音にのせて、聞こえるか聞こえないかの小さな声で、私はのっちに想いを伝える…。
「好き………」
のっちがかすかにうなずいたのが分かった。
そして、柔らかくてあたたかな何かが、
かすかに、それでも確かに、
私の唇に甘酸っぱいものを残していくのを感じた。
あーちゃんの足音が聞こえる。
私たち2人は、そっと離れて、遠ざかるヘリコプターを見つめる。
これから先、私たちがどこへ行けばいいのかは誰も知らない。
何があるのかは分からないし、すごく、すごく不安。
だけど、不思議とコワくはない。
その先には、
光しか見えないから。
あーちゃんが私たちを呼ぶ声が、空に響き渡る。
≪END≫
最終更新:2008年10月10日 14:55