突然の雨だった。
「げ、今日雨降るなんて言って無かったのに」
ゴロゴロと鳴る雷の音は近い。これは走らんと駄目かな…。
なんだってバイト帰りに雨に降られなきゃいけないんよ、と心の中で落ち込みながら鞄で頭をガードし、家に向かってひたすら走る。
今日はラストまでいたからすっかり辺りは静かで、時折外灯がポツリポツリといくつかは点滅しながら、たまに消えてしまっていながら、暗い道を照らし出していた。
「…?」
そんな外灯の下に置かれたダンボール。
…捨て猫か犬か。
どちらかは分からないけど、私に立ち止まる意思はない。ただでさえびしょ濡れなのだから早く家に帰りたいし。
「…」
気にはなるものの、そのままダンボールの前を走り過ぎる。
視界の端に黒い耳が見えた。
…捨て猫か…。
ブンブンと頭を振って今見た光景を振り払った。
「……」
バシャバシャと音を立てて雨が地面に降り注ぐ。
更に強くなってきたみたいだ。
…あの捨て猫は大丈夫だろうか。ふと立ち止まる。
「…やっぱりほっとけないや」
なんでか分からない。ただ、ただ気になってしまって。それに、このままほっといては凍え死んでしまう。
今来た道を引き返す。更に濡れていく髪も服も鞄も、今はもうどうでもよかった。
「はぁ…はぁ…」
外灯に照らされたダンボールを覗き込む。
毛布が敷かれているものの、雨に濡れていてその機能は到底果たしているように見えない。
小猫みたいに小柄な体、つやつやの黒髪、可哀相なほどに震えている黒い耳。
そっと体を持ち上げてみる。…体は冷えてるけど、体温は感じる。
「…名前?」
毛布に埋もれたネームプレートには『ゆか』と書かれていた。
これが彼女と私の出会い。
突然の雨がもたらした出会いだった。
最終更新:2009年03月17日 18:41