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閉じた瞼の向こうに光が射してるのが分かる。
…もう朝かぁ。あ、でも今日は大学もバイトも休みだし…このまま二度寝しよ。
そうまどろんだ頭で思った時、瞼の向こうが不意に暗くなった。
「…?」
不思議に思ってそっと目を開けてみると、くりくりとこちらをみる黒目と視線が合う。
「ぅわ、!…ったぁ…」
びっくりして跳び起きた直後、後頭部に痛みが走った。…か、壁にぶつけた…。

痛みで涙で滲む目を開けて、今度は姿を捉えた。
「…ぁ、そっか…昨日連れて帰ってきたんだっけ」
昨夜の猫、確か、『ゆか』ちゃんを抱き抱えて家までひたすら走って帰ってきたんだ。
それからとりあえずタオルで濡れた体を拭いて、冷えた体をあっためる為に布団の中でぎゅうっと抱きしめながら、不安からなのか意識がはっきりしてもいないのにのっちにしがみついてくる小さい体を受け止めながら。大丈夫だよ、もう怖くないよって何度も呟いたんだっけ。

「えっと…もう、大丈夫?」
「……」
「あの……あ、私、のっちって言うんだ」
「…」
「えー…と………その、あの、よ、よろしく、ね」


頬が引き攣ってるのが分かる。
…こういう場合はどう接したらいいんかな…。
さっきから返答はない。更に無表情。
「……」
結局それ以上何も言えずにいると、ゆかちゃんはもぞもぞと布団の中へ入っていった。黒い尻尾だけ布団から出して。

…まぁ、しょうがないよね。昨日の今日だし、それに彼女は意識が無かったわけだし…。



ぐぎゅる〜



「え?」
今の、お腹の音…?

ぽかんとしてると、ゆかちゃんがもぞもぞと布団から出てきた。顔が真っ赤になってる。
「…ぶはっ!!」
その様子が可笑しくて可愛くて、思わず噴き出してしまった。
「あははは、いだっ!!」
猫みたいに引っ掻かれたけど、真っ赤になってぷくっと膨れる姿はまるで人間そのものだ。って、まぁ姿形は人間なんだけど。


「ごめんね、すぐ朝ご飯作るから」
「…」
とりあえずぽんぽんと頭を撫でて、朝食を作るべく台所に立つ。…あ、食材少ないや…目玉焼きでいっか。

冷蔵庫を眺めてると、背後にとてとてと近づく足音。…ゆかちゃんだ。
「…」
玉子を取り出してコンロの前に立つと、ゆかちゃんも付いてくる。
食器を取りに行ってもゆかちゃんは付いてきた。

…か、かわいい…。
なんて、感動しながら目玉焼きを作ってるとクイクイと服が引っ張られた。
「ん?」
見ると、ジーッとゆかちゃんが見上げてくる。大分警戒は解けてるみたいなその様子にホッとした。
「…おてつだい」
「?」
「ゆかも、する…」
「!!」
お、お母さーん!!可愛い事言ってますよこの子!!
「う、うん。じゃあこれ、あっちに持ってって」
「ん、」
そう言ってゆかちゃんはとてとてと食器をテーブルに持っていった。それはまるでお母さんを手伝う娘のような光景。
そんな幸せな眺めに目を細めた。

…お母さん。のっちは今、とても幸せです…。

「って、焦げてるし!!」

  • つづく-








最終更新:2009年03月17日 18:47