窓の外は、すっかり冬の色。
周りの受験への波に
自分も少しずつ飲み込まれ始めていた。
未来。
なにがしたいのだろう?
答えを出せないまま
ただただ、流れに身を任す。
—あわてなくてもいいじゃないかな。
—きっと、みつかると思うから。
いつかの先生のコトバ。
あ〜ちゃんが、部室にいた日以来、
先生とは会ってなかった。
まず、自分から部室に行くことが少なくなった。
—バレて、大変なことになるの、、、先生、だよ?
あ〜ちゃんの、このコトバが
ココロのどっかにブレーキをかけていた。
だって、実際
その通り、だ。
自分のことしか見えてなかった。
好き、なだけで、どうにかなるものじゃない。
それでも、
全く、部室に行かなかったわけじゃない。
ふらっと、立ち寄ったこともあったけど
活動の終わった、そこ、は
もう閉められていた。
避けられてるのか、、、な?
そうも思った。
けど
不思議と、辛くはなかった。
自分にも
少し考える時間が必要、だったから。
会ってしまうと
きっと、、、、あやふやになってしまう。
会わなくなって、3週間が過ぎようとしていた。
夏休みを覗くと
こんなに、先生が遠くなったのは初めてだった。
放課後の補習。
今日は、社会科のセンター対策。
現代社会と倫理。
さすがに、そんなに生徒はいないようだ。
そりゃ、まぁ、、、ね。
地理・歴史とは、違いますよ。
あたしは、
ただなんとなく
放課後の補習が日課になっていたから
こうして受けてるわけ、だけど。
視線が、校庭の隅にあるサクラの木に止まる。
葉が全て落ちてしまって、すっかり物悲しい雰囲気。
でも、脳裏に浮かぶのは
あの日の、桜色が舞う風景。
ガラガラ
扉が開く音。
「えっ、なんで先生なん?」
誰かの声につられ、教卓に視線を戻すと
先生が、いた。
さっきの声は、元写真部の子だった。
「あぁ、、中田先生が急遽出張になったんで、代わりです。
えっと、、、初めましての人がほとんどだよね?
普段は2年生を担当してる、樫野です。よろしく」
久しぶりの先生の姿に
胸の奥が締め付けられる。
あぁ、、、やっぱ
考えたって無駄、だ・・・
好きだ。
この人の、傍にいたい。
それが、のっちの全て。
一瞬
先生と視線が交わる。
独特の、あの
曖昧な笑顔。
授業が始まった。
まずは、予想問題を解く。
けど、のっちは
先生が気になって、問題どころじゃない。
どれだけ、解けるかは、、、、聞かないでください。
てかさぁ・・・
先生、、、ちょっと痩せた?
いや、もともと細いんだけど・・
なんか、顔色も悪い気がする・・・
なんて考えてるうちに
答え合わせ、そして、解説。
先生は
説明をしながら、すらすらと板書を始める。
少しクセのある字。
まっすぐに書くのが苦手なのか
少し上に上がったり、下がったり・・・
なんだか、とても先生らしい気がして
にやついてしまう。
黒板の上を自在に動く
チョークを携えた、白く長い指先。
ヒラヒラ、ヒラヒラ・・
まただ、頭ん中を、
花びらが舞い踊る。
てか、当たり前なんだけど
先生、やっぱ“先生”だったんだなぁ・・
そして、ここにいるのっちは
紛れもなく、“生徒”だった。
あっという間に、補習が終わった。
先生の授業を受けるなんて、
なんか、不思議な感じだな、、、
なんて思いながら、帰る準備をする。
「先生ー?ここんとこ、もう一回教えてぇ」
誰かの声が聞こえた時、だった。
ガタンッ
大きな音がする方向を見ると
倒れこんだ先生の姿があった。
ざわつく教室。
考えるよりも早く体が動く。
誰よりも早く、傍により
気を失ってるのだろうか、
意識のない先生を抱き上げる。
「保健室、連れていってくる」
ただそれだけ言い残して
空気が固まってしまった教室をあとにした。
最終更新:2009年03月17日 19:06