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放課後の保健室。
部屋は開いていたけど
担当の先生の姿は見えなかった。


とりあえず
先生をベッドに寝かせる。


さて、どうしよ?

ドアには、
すぐに戻ります
と、札がかかってあった。


ま、待ちますか。


必死になって連れてきたけれど
別に命にかかわるとかじゃないだろうし。


ベッドの傍ら
椅子に腰をかける。


      • 大丈夫、だよね?


ふいに心配になり
そっと、頬に触れる。


あたたかい。


よかった・・・


眠ってる先生を見てると
お人形さんのような佇まいに
もう、目を覚まさないのじゃないかって不安に襲われて・・



あぁ、、、キス、したい・・・


相変わらず、不謹慎な自分。



    • ん・・・


先生が目を覚ます。


「・・・のっ、、ち?」

「おはよ、先生」


今、できる限りの笑顔を。


ぼやっと、視線を漂わせる先生。


「覚えてますか?・・補習、終わった途端、倒れたこと…」


「あぁ・・・」


ゆっくりと、体を起こす先生。


「大丈夫、ですか?」

「・・うん」

「顔色、、悪いけど…?」

「・・うん」



やっぱり、さっきから
視線が宙を彷徨ってる先生。


「なんか、、あったんですか?」


ようやく、視線が交わる。


「…うぅん、、なんも、ないよ」


嘘、だ。
わかったけど・・


「そ、、ですか・・」


視線を伏せる。



自分を
見てくれていない
瞳、は好きじゃない。



最近、気付いてしまった独占欲。



「のっち?・・久しぶり、だね?」

「…あ、・・はい・・・」


“のっち”
やわらかに、耳の奥へと響く
トクベツな音色。


「さすがに、勉強が忙しくなってきた?」

「あ、、、はい・・」

「部活にも、来なくなった、、よね?」

「あ、、はい・・」


「ふふっ、さっきから“あ、はい”ばっか」


あ、やっと笑った。

顔を上げると
大好きな、笑顔。

ココロを惹きつけてやまない
曖昧な表情。


「あ、はい」


視線が交わり

同時に笑いあう。


「・・ふらっと、部室、立ち寄ったりも、してたんですよ?」

「・・あ、そう、なんだ・・」

「先生も、、忙しいんですね?」

「・・・うん」


また、伏せられた瞳。

まっすぐに、揃った前髪に隠れ
表情が見えなくなる。



夕日はもう落ちたのだろうか?
もう部屋は薄暗い。
日もずいぶんと短くなった。


「・・・電気、つけます、、ね?」

そう言って、立ち上がろうとした時


すっと、先生の手が伸びてきて


「ねぇ・・・」

「はい…?」

「手、繋いでても、、いい?」


そっと、握り締められる。


「あ、、、はい・・・」


すとん、と
再び腰をかける。


指先を絡め直す。


先生は相変わらず
顔を伏せたまま。


冷えていく部屋の空気とは反比例して

上昇していく体温。


うわぁ、、ぎゅっとしたい・・・


けど、そういうわけにもいかない。


担当の先生だって、いつ
戻ってくるかわかんないし・・・


互いに
なにもコトバを発さず・・


流れる時間に
伝わる体温に

身を任す。



ガラガラ


扉の開く音で
どちらからともなく
絡めた指先を、解く。



「あれ?どうしたの?」

「どうしたのじゃないですよぉ。
 樫野先生、補習ん時に倒れちゃって。
 保健室に来ても、先生いないし」

さらっと状況を説明。

「ごめんごめん。
 樫野先生?調子、どうですか?」

「いや、もう大丈夫だとは思うんですけど・・」


もう、のっちは必要ない、や。


「じゃ、あたしは、これで」


そう言って、保健室をあとにした。




先生?


あの時、保健室を去るとき
あなたが、すがるような瞳をしていたような気がしたのは

のっちの、勘違いだったのかな?






最終更新:2009年03月17日 19:16