「ねぇ、今日さぁ、クラブ・・・行ってみん??」
気になる子の収録終わり、時計の針はてっぺんをやや過ぎたところだった。
ゆかちゃんがいきなり、あ〜ちゃんとわたしに目を輝かせながら小声でこう言ってきた。
クククラブですか!!??
確かにのっちも行ってみたいとは思ってた、、、けど、
確かもっさんが、「20歳になったらいろんなところに出入りできるようになるけど、
自分たちの立場をわきまえて。危ないとこには絶対行かないで」って・・・
イヤイヤ、クラブ=危ないってのがそもそもコドモの発想なんじゃ?
でもでも明日は授業も4限からだし?
行けない事もない?みたいな??
ってか、行っきたーーい!!みたいな!!
なんてことを口にも出さずモヤモヤ考えていると、
「行かん。あ〜ちゃん明日1限から授業じゃけぇ、
帰って寝んと。」
あ〜ちゃんは帰り支度をしながら、さらに言葉を続けた。
「のっちは行きたいって顔に書いてあるけど・・・絶対2人だけでは行かんでね?
行くならスタッフさん誰か誘って行きんさい。危ないけ。」
ってかあれ?のっちの顔にそんなこと書いてある?思わず両手で頬を押さえる。
あ〜ちゃんの顔は、疲れているけど、コレだけは言わにゃいけん、って顔。
同い年なのに、こういうところはホントお姉さんみたい。
しっかりしてて、優しい。さすがだな。
それより、あ〜ちゃんは行けないんだ、残念。
クラブとかあんまり好きじゃないのかな??
「うん。メイクさんとスタイリストさん、2、3人誘ってあるけぇ
平気よ。」とゆかちゃん。
そうなんだ。ゆかちゃんも抜かりないな。抜けてんのはのっちだけ?ですかね・・・
「そかそか、んじゃ気をつけて行ってらっしゃい」
あ〜ちゃんはのっちが誕生日にあげたストールをくるっと首に1周させると、
「ふぁ〜。リアルに眠いけぇ、、、先、帰るね。。。おつかれさま」
と、楽屋を出て行ってしまった。
ぽつんと2人残された楽屋では、
ゆかちゃんが念入りに化粧を直し始めていた。
おっと、のっちも直さなきゃ。
鏡を覗き込みながら、マスカラのふたをクルクル回し、問いかける。
「・・・ゆかちゃん、一緒に行くのって誰〜?」
「え?ゆかだよ」
「え?ち、違うよ。だから、一緒に行ってくれるスタイリストさんとメイクさん。」
「・・・・」
「ゆかちゃん?」
「のっちは、嫌?」
「ゆかと2人きりは、嫌?」
はっ!?
あっ、そうゆうこと?
「あっぁ嫌じゃないれすけろッ?なんでだってさっき・・・」
鏡越しに目が合ったゆかちゃんはくすっと笑い
「そんなあわてんでよ。スタッフさんいると
やっぱ気を使うけぇ、今日はそこまで気が回らんし
のっちだけで十分じゃ」
とプルプルのグロスで仕上げにかかっていた。
ふうん、そう・・・か。
なんかいまいち納得できないけど。
あ〜ちゃんが知ったら怒るんじゃないかなぁ・・・
ゆかちゃんは、「やっちゃダメ」って言われる危なっかしいことを
やりたがるとこがある。昔から。
スリルを楽しんでる?
なんか可愛いけど。子供みたいで。
いや、昔はただ可愛かっただけだったんだけど。
なんか最近、そーゆうときの小悪魔度が増したような。
今だってそうだし。「2人きりは嫌?」なんて・・・
のっち、ちょっとドキッとしちゃったよ。
ゆかちゃんはそのクラブには実は1回行ったことがあって、
フロアの他に個室もあるらしい。
VIPルームなんて!お忍びで行くにはもってこい。
こんなぺーぺーが行っていいのか?と思ったけど、
タクシーの中でゆかちゃんは
大丈夫だよ、と笑った。
むしろあ〜ちゃんが言うように、
女の子が、しかも(自分で言うのもなんだけど)清純派アイドルが
ふらふら2人で逃げ場のないクラブにいるほうが、マズい。らしい。
それにしてもゆかちゃんの私服は今日も可愛い。
ざっくり編みのミニワンピにレザージャケット。
甘辛MIXってやつ?ゆかちゃんによく似合ってる。
あ〜ぁ、また男の人に声かけられちゃうんじゃないのかなあ。
のっちじゃなくて、ゆかちゃんね。
ま、ゆかちゃんが変な男に絡まれたりしたら、
のっちが守るけぇね。
時計が午前1時をさした頃、
六本木のクラブに到着した。
でもゆかちゃん、誰と行ったんだろう?
なんかそこ重要なカンジがしたんだけど。
聞くタイミングを逃しちゃって、聞けなかった。
(続く)
最終更新:2009年03月29日 21:20