「のっちぃぃーーーーー!!!」
遠くにいる彼女を大声で呼ぶ。
恥ずかしそうにこっちを振り向いた。
あたしは駆け寄る。そして腕を組む。
「な、何?急に?か、かっしー、のっちに対してキャラ変わってね?」
あたしのいつもと違う態度に、戸惑っているのっち。
あたしは形だけの否定する。
これは見えない罠。
蛇男を落としたように、のっちをあ〜ちゃんに遠ざける為の罠。
これからのっちと二人の時は、あ〜ちゃんみたいに人なつっこくなるようにするの。
「そうだ!映画見に行こう!!ゆか、今見たいやつあるんよね」
本当は映画なんてどうでもよかった。
見たい映画なんてなかった。
とりあえず、のっちと二人っきりになることを考えた。
強引にのっちを映画館へ連れてった。
のっちを動揺させる為に手を握った。
文字通りのっちは驚いてあたしの顔を見た。
あたしは気づかないフリして映画を見る。
のっちは振り払わなかったし、握り返してもこなかった。
ただ、あたしに握らせてただけだった。
映画が終わっても、のっちは手を握ってきた理由を訊いてこなかった。
いや、あたしが訊かせない雰囲気にしたから、訊けなかったんだ。
「あっ!のっち、映画見たことあ〜ちゃんにはナイショね?」
あたしとのっち二人だけの秘密を作る。
秘密を共有すれば親密になれる。
「でも別にあ〜ちゃんは、そんなコトで仲間はずれされたなんて思わないんじゃない?」
のっちがあたしと共有するのを嫌がった。
「そうだとしても!!それに、ナイショにしてた方がドキドキして刺激的じゃろ?」
あたしは無理やり納得させた。
のっちは黙り込んでしまった。
たぶん、あ〜ちゃんに秘密事を作りたくないんだろう。
あたしも本当は、あ〜ちゃんに秘密なんて作りたくない。
でも一度作ってしまうと、後には戻れない。
のっちの手をひいて大学に戻る。
授業が終わるとすぐバイトの時間。
あ〜ちゃんとのっち二人一緒にしとくのは心配だったけど、バイトだから仕方ない。
「じゃ、お先失礼します」
バイトを終えて挨拶する。
「あ!樫野さん!ちょっとちょっと」
あたしの名前を呼んだ店長が手招きをしてる。
「何ですか?」
「あのねー、メーカーさんから新商品貰ったのよー。沢山あるしバイトの子全員分ありそうだから・・・これ樫野さんの分ね」
店長の手にはチュウーハイやらカクテルやらのお酒の缶が入ったビニール袋。
家で呑む習慣はないけど折角なんで貰った。
重いビニール袋の中身を、ゴロゴロ音を立てながら家路に着く。
汗と居酒屋の臭いを落としたくて、すぐシャワーを浴びる。
あたしは貰ったお酒の対応に困った。
ひとりで呑むには多すぎる・・・。
ふと、壁に掛かってた時計を見る。
針は22時を指すところ。
あたしは携帯を手に取り、電話をかけた。
最終更新:2009年03月29日 21:22