アットウィキロゴ
授業が終わった。

今日、補習はない。


今までだったら、時間つぶししてから
向かった部室。


けど、
部活が終わるのを待ってたら
先生は、また
いないかもしれない。


ちょうど当番だった
日直の仕事を終えてから
部室へと向かった。



「失礼しまぁす」

扉を開けると


わっ!のっち先輩だぁ!


なんて
後輩の子が騒ぐ。


「あ、ども」
相変わらず、どう反応したらいいか
わかんないや。


「どうしたんですか?」
「いや、ちょっと…」
「あ、座ってくださいよ!」
「あ、ありがと」


促されるままソファに腰掛ける。


若いねぇ・・
て、1,2こしか年変わんないけど。


「あ、樫野先生は?」
「今、暗室です。1年生に現像教えてるんです」
「そなんだ」



しばらく、後輩たちと
戯れていると
暗室から、先生と1年生たちが出てきた。


のっちを見つけた先生は
一瞬、びっくりしたようだったけど

「騒がしいと思ったら、、、なるほど、ねw」
と言って、微笑んだ。


あれやこれやで
活動時間が過ぎていく。


「のっち先輩、受験勉強どうなんですか?」
「んー、ま、なんとかやってるよ」
「今年は、クリスマスどころじゃないですね」
「あぁ、、、まぁ。。。」


「去年もすごかったですよね」
「誰と過ごすのかなっとか」
「今年も、手の込んだプレゼント用意してる子いるよ」
「受験の邪魔かなぁなんて言いながらねぇw」


きゃっきゃっ、と
好き勝手おしゃべりする彼女たち。


先生は、“先生”の顔で眺めている。


「大本先輩に夢中なのはいいけど、
 また、冬の展覧会近いんだから
 各自、きちんと作品の準備するんだよ」

「はーい」


そんなやり取りをしつつ
クラブ時間は終わった。



「先輩はまだ帰んないんですか?」
「うん、、ちょっと、先生に相談もあるし」
「じゃ、お先に失礼します」


そう言って、みんな
騒がしく部室を出て行った。



先生と二人きりになる。


「わかってはいたけど、すごい人気だね?w」
「んなことないですよ」
「誕生日の時も、すごいプレゼント攻撃だったじゃん」
「あぁ、、、正直、どう反応していいのかって感じですよ…」
「別に、ありがとうっでいいんじゃない?」
「はぁ・・・」

先生は、道具やらを片付けながら続ける。

「あ、相談、、、あるの?」
「あぁ、、、うん。相談っていうか、、、話がしたいなって
 そう思っただけなんですけど・・」
「・・・そっか」

「受験勉強はどう?」
「んー、、あんまり実感ないかな」
「もう来月にはセンターだよ?」
「うん、、、周りは、忙しない感じなんだけど・・
 どうも、、、いまいち現実感がなくって」
「志望校は?」
「ま、一応、決めましたよ」
「やりたいこと、見つかった?」
「いやぁ、、、まだ」
「そっか、、でもさ、それは大学行ってからでもいいんだよ」


一通り、片づけを終えた先生が
のっちの隣に腰を下ろす。


「そんなもんですか、ね?」
「・・うん、そんなもんだ、よ」


部室内の温度が下がっていくたびに
自分の中の、熱が高まっていくのが
リアルに感じられる。


手を伸ばせば触れられる距離に
先生が、いる。



「それより、先生?体調はもう大丈夫なんですか?」
「あ、うん。大丈夫だよ。この前は、ありがと、ね。
 お礼言ってなかったよね、ごめん」
「んなこと、いいですよ」


話したいことはいっぱいあったはずなのに
いざとなったら、なにも
コトバになってでてこない。


けど、さっきまでの心苦しさもない。


ただ、先生といるこの空間が
少しでも長く続けばいいのに、と
単純に、そう思った。


「ねぇ?」
「はい?」

先生がしばしの沈黙を破る。


「終業式前の、祭日。なんか、予定ある?」
「えっ、、、、別に、、、なにも・・・」
「…そっか・・・」
「それ、、が?」
「うぅん、、、なんもないけど」


先生の言わんとしようしてることが掴めない。


ヒラヒラ、ヒラヒラ。


あ、ダメだ、、、まただ・・・


サクラの花びらが舞い踊るたび
自分の感情の置き所がわからなくなる。


「あ、ちなみにクリスマス、は?」
話題を転換するように
先生が問いかけてくる。


「いやぁ、、、別に」
「受験生だもん、ね」

ふふっと、微笑む先生。


両手はソファについて
俯き、伏せ目がちなその姿。
長く黒い髪は、さらさらと
小さな顔を隠している。



「別に、受験は関係ないけど・・・」


先生は?
なんて、聞こうと思ったけれど
愚問だよね。
きっと、“彼氏”さんと、だ。


さて、と。

そう言って、先生は立ち上がる。


「部室、閉めちゃうけど、、いいかな?
 あ、相談なら、のるよ?ほんとに」

「いや、先生が元気だと確認できたから
 それで、いいんです」


先生の漆黒の瞳が揺らぐ


曖昧な、独特な表情。

あの日、一瞬にして
堕ちてしまった、それ。


先生の手が頭まで伸びてくる。


「心配してくれて、ありがと。
 受験、、、大変だろうけど、がんばってね」

そう言って、
やわらかく、頭を撫でてくれた。



先生?


今思えば、このとき
もう、あなたのココロは、決まっていたのかな。。







最終更新:2009年03月29日 22:02