アットウィキロゴ
〔N〕
一人でいることが好きだ。そう思われてる。そう思われてるし、それに実際そうだ。確かに私は一人でいることが好き。仕事がおわって疲れた体を休めるベッドの上に自分以外の誰かがいるなんて考えたくない。自分のベッドなのに広々使えないのは嫌だ。だから私は今日も一人で眠りにつく。だけど、、。
仕事がおわって眠りにつく前。眠る前。その時間に一人でいることなんて滅多にない。むしろ一人でなんかいたくない。そのほんの二時間か三時間の間、私は一人でいたくない。
それに、、。まわりの人間たちは私をほっとかない。そう。いつの間にか気が付いた時には私は人から好かれる立場になった。うん。わかりやすく言えば、要はもてるってこと。
そしてそれに、いつの間にか気が付いた時には私は人の体温が好きだった。うん。わかりやすく言えばやりたいってこと。
誰でもいいんだよ。
知ってんの。普段はヘタレでイジられキャラの自分が、本当はタラシでイジるのが好きなこと。ふっ。やらし〜ね、自分。


だから今日も部屋に招き入れる。むしろまわりの人たちは私の部屋に入りたがる。なんで自分がそんなに求められるのかまったくと言っていいほどわからないけど、私はこの好都合を最大限に利用する。
『どうぞ、あがって』
ニコッと笑顔を作って彼女に言う。今日の相手は照明のアシさん。
『あ、ありがと・』
ん?年上のくせに緊張してんかな?
『・・・』
優位に立ちたいからだまっとこ。
『・・あ、えっと、え〜・・』
どう切り出せばいいかわからないのかな?でもしたいことは一緒でしょ?なんも言わないなら言うよ?
『あの、もう抱き締めていいですか?』
シレッと言い放った私。
とたんに耳まで真っ赤に染まる彼女。
——落ちた。
こうなればこっちのもん。

彼女の体を隅々まで堪能し、私は言う。
『今夜ずっと一緒にいたら苦しいくらい愛しくって体もたんからまた今度会いにきてくれん?』
そうやって気持ちもないのに相手に思わせ振って私はうまく相手に帰ってもらうことに成功する。
明日も仕事だ。早く寝よ。


〔A〕
私が好きで好きでしょうがない人はもてる。
自分では気付いてないらしいけど。
見た目ももちろんだけど、さりげない優しさだとか、笑うと垂れる目だとか、甘えたな声だとか。
女の子がきゅんってなってしまう仕草をあなたはいつもしてる。
ほら、また今も。
『あ〜のっちさんちょーーかっこいいってか可愛い』
照明のアシスタントさんが騒いでる。
あたしに聞こえてますけど?いいんですか?
もちろん本人には聞こえてない、みたいだけど?
でも、そんなふうに口に出して言えるその人が羨ましかった。
私は言わない。ううん。
言えない。言えないだけ。
勇気がない。うん。
それに、きっとのっちは私のものにはならない。
私だけのものには。
私知ってるんだよ?
のっちが遊び人だってこと。
だけどそれでも好きって、自分で自分がおかしい。
きっと慣れてるから、扱いがうまいから、誰にでも素直に優しくできる。
そんなとこも好き。
もうどーしよーもないくらいに好き。


〔K〕
私が愛して愛して愛しまくってる人は遊び人だ。
私のことが好きと言いながら他の女に会いにいく。
勝手な人だ。
だけど私には何でもよかった。何番目でもよかった。
ただのっちと肌を合わせられる距離にいられることが嬉しかった。
彼女に触れることも出来ない人たちから見れば私は勝ち組だ。
決して私だけのものにはならないのに。
愛しくってしょうがない。
あなたはいつも気まぐれで、次いつ会えるかもわからない。
私は今何番目?
あ、ほら今日もまた違う女に声かけて。
クールで照れ屋なふりをして。
だけどあなたからは口が裂けても誘わない。
めんどくさくなった時の予防線をひいてる。
向こうから言ってきたんだから、責任なんかない!って意味の。
ああ、いいな、あの人。
今日あの冷たく冷えたベッドでのっちの熱を感じられるんだ。
はぁ〜、私もどーしょもないね。


〔N〕
いつから自分はこんな最低な人間になったんだろ?
とゆうよりいまだに自分のしていることが最低だとも思っていない。
ん?末期ですか?w
やっぱり少しは胸が痛む。
誰かを心から深く愛せたらな〜とも思う。
だけど私にはまだよくわからない。
私が抱き締める女の子たちは皆がみんな口を揃えて『好き』だとか『愛してる』を言うけど。
みんな本当にわかって言ってる?
それ本気?嘘じゃない?
気付いてるんだ。
多分私は自信がない。
だから誰彼かまわず抱く。
求められていることを実感して優位に立って自信をつけようとしている。
だけど最近新たに気付いたのは、
それは逆効果だってこと。
虚しくなるばかりだ。
あ、自分の中の何かが弱まってる。
あ、涙が出そうなくらい寂しくなっている。
こんな時私は必ずと言っていいほど誰かに頼りたくなる。甘えたいんだ。
そしてその相手は必ずと言っていいほどに『ゆかちゃん』だ。


ゆかちゃんに最初に触れたのはいつだっけ?
そう、多分去年の夏のおわり。
春頃から女遊びが盛んになった私に最初に気付いたのはゆかちゃん。
てかゆかちゃん以外には気付かれてない。
なんでバレたんだろ?って内心ドキドキして、
やばい怒られるってびくびくして、
『なんで気付いたん?』
て、おそるおそる聞いたら
『・・だって、のっちのこと見とるけぇ、・・嫌でも気付くよ・・』
意外な答えが返ってきた。
顔をほんのり赤く染めて言うゆかちゃんの表情は、
私を求めてくる女の子たちのそれと一緒で、
私はゆかちゃんにまで手を出した。


〔K〕
のっちと最初に抱き合った日のことはよく覚えてる。
いつからか好きで好きでたまらなかった気持ちを、
もう抑えることが出来なかった私は家に押し掛けた。
のっちが仕事おわりに毎日のように女の子に会ってるのを見つけてしまった日から。
あの長くて白い腕に抱かれるのは私だ!って。
だらしない笑顔もゆかだけのものにしたいって。
だけど本人を目の前にしたら、そんな強きな台詞は言えなかった。
『・・だって、のっちのこと見とるけぇ、・・嫌でも気付くよ・・』
のっちに何でバレたん?って詰め寄られたその視線に、
私は素直になってしまった。
『・・ゆかちゃん』
『・・・』
『それってさ・・』
『・・っつ・・』
『のっちのこと好きなん?』
『・・』
『違うん?』
『・・』
何も言えないでいる私。
『あれ?違った?』
ちょっと嬉しそうに話すのっち。
その表情が嬉しくて、
『・・ち、違わん、よ・・』
また素直な気持ちが出てしまった。
『んじゃ好き?』
急に冷静な眼差しで聞くからもう誤魔化せなかった。
『・・す、き』
やっとの思いで伝えた。
息があがる。
まさか自分がこんな臆病だとは思わなかった。
恥ずかしくて左手で顔を覆ったら、
『あれ?言われるほうも結構照れるね?』
なんて言って、
『可愛いんだから、顔かくさんで、よ?』
クールにしてるつもり?
だけど疑問系になってるよ?
そんなのっちがたまらなく愛しかった。


のっちの長い腕に導かれて
抱き締められる。
普段からは想像できないくらいスマートに、スムーズに。
ああ、いつも誰かにこうやってるんだって思って
ちょっとだけ切なかった。
『・・のっち』
『ん?』
『・・いつもこんな事しよるん?』
『へ?』
『なぁんか、て、手慣れてるってゆーか・・』
『あ、ああ・・あかんの?』
『えっ?』
『手慣れてたら、あかん?』
『・・や、あ、いんだけど、さ・・』
のっちはふっ、て笑って、
優しい顔をした。
『ゆかちゃんしか見てないよ?』
ああ、もう。だめだ。
そんなん嘘に決まってる。嘘が確実なのに嬉しくなってしまう。
うつむいた私を覗き込むようにして、
のっちの唇が私の唇に触れた。







最終更新:2009年03月29日 22:38