アットウィキロゴ
Side K
あのカラオケの日。あ〜ちゃんが最後に歌ったあの歌。
高校の時、歌詞にシンクロして泣いちゃう位、例の人のことを想って歌っていたあの歌だった。

それを歌うことに関しては、別にそこまで気にならなかった。
私の中の何かがざわついたのは、そこじゃなくて…。
のっちが歌い終わった時に、ふと見たあ〜ちゃんの表情だった。

何で?何でそんな眼差しでのっちを見てるの?
そこで流れ出したあの曲。
そして、これまでないくらいの切ない声で歌い上げたあ〜ちゃん。
今にも泣いちゃうんじゃないかってほどに…。

歌ってる最中にも数回向けられたあ〜ちゃんの熱い視線は、どれものっちへのものだった。

ねぇ、あ〜ちゃん。そういうことなの?

私の中で広がった疑問は、学校であ〜ちゃんと話したりあ〜ちゃんを見ることで、確信に変っていた。

のっちといる時、のっちの話をする時。どちらもあ〜ちゃんの表情が少しだけ違うくなるから。

もし本当にそうなら、のっちのあ〜ちゃんへの気持ちは無駄じゃない。
きっと、あ〜ちゃんに伝えたら喜ぶ。
でも、今のままじゃのっちからあ〜ちゃんに告白なんてしないだろうなぁ。
振られると思ってるんだから、のっちはしないかw
まぁ、一応効果があるか分からないけど、のっちを突いておこうかな…。

翌日、のっちと一緒の時に気持ち伝えてみたら?って言ってみた。
あとどうするかは、ホントのっち次第。


そして、あ〜ちゃんが講義がある次の日、私は自分の確信が当たっているか確かめるために、話があるからと、あ〜ちゃんと待ち合わせした。

よくのっちと居るベンチで待ち合わせて、その場所にやってきたあ〜ちゃんは、私の隣に座る。
最初に少しだけ話して、あ〜ちゃんが話って?と聞いてきた。

「…例の人のことなんだけどさぁ…。」
この言葉に少しだけ、顔を強張らせるあ〜ちゃん。

もしかして、聞かれたくないのかなぁ?
だとしたら、なんで?

「ん?何?」
いつもの表情に戻ったあ〜ちゃんが聞き返してくる。

「誰?」
答えてくれるかなぁ?

しばらく待ってみたけど、あ〜ちゃんは答えてくっれなかった。
いや、もしかしたら答えられないのかも…。
どんな理由なのか分からないけど、私に言えない何かがあるんだとしたら…。

答えられないことに謝って、視線を落としたあ〜ちゃんに
「…当ててあげよっかぁ。」
って言った私にビックリして顔を上げるあ〜ちゃん。
続けて、もし当たってたらお願いを聞いてくれる?と聞いてみると。

案外あっさり了承をもらってしまった。
ただ、応えられる範囲で。とだけ付け加えられたけど。
さほど難しいことじゃないから、と言ってもあ〜ちゃん次第なんだけどね。


私は一呼吸おいてその名前を口にする。
「のっち、だよね?」

今思えば、入学式の日、あ〜ちゃんの様子が変ったのは、私がのっちと話して戻ってきてからだったよね?

答えにくそうにしているあ〜ちゃんに
「何も言わないってことは、肯定と受け取るよ?」
それでも、何かに戸惑ってるあ〜ちゃんの視線はきょろきょろと、漂っている。
でもこのままじゃ話が進まないから、このまま話始める。

私がその答えにたどり着いたきっかけ、それから見てきたあ〜ちゃん。だから
「…間違ってないはずだよ?」
そう言って笑顔であ〜ちゃんの顔を覗きこむと、ようやく覚悟を決めたようで「ゆかちゃんには敵わないな〜。」って話し出すあ〜ちゃん。

「へへへぇ〜。そりゃ〜、あ〜ちゃんの事だもん。ちゃんと見てるよ?」
「ゆかちゃんの前で、あの歌歌わなきゃ良かったなぁ〜。」
あ〜あぁっておどけたように言ってくる。

そんなあ〜ちゃんに、疑問に思ってたことを聞きだす。
「ねぇ、ずっとのっちに話しかけなかったのって、私がいたから?」
「ん〜…まぁ、そうかな〜。」
「そっか、でも最初は無理でも、しばらくしてから言ってくれれば良かったのに。」
「ぃや、だってゆかちゃん…。」
「ん?」
「そのぉ…さぁ?」
「なに?はっきり言ってよぅ。」


すごく言い難そうにしてるあ〜ちゃん。顔まで赤くして、なんだろ?
そのあ〜ちゃんが突拍子の無い事を言い出して

「…ゆかちゃんも好き、でしょ?」

はい?
「私が?」

「うん…。」

「誰を?」

「のっちのこと…。」

予想もしてなかった言葉に呆気にとられてしまった私。

「ち、違うの?」
「ぷ…にゃはははwないないないwのっちはないわぁw」
大笑いしながら、顔の前で手をブンブン振って否定する。

「え、だって、すっごい仲良いし…。」
「まぁwそりゃ、仲は良いよ?のっちには気を遣わなくていいから好きだけど…。
それとは、種類が違うよぉ。」

私がそう言うと、ぽかんとした顔から、なんだか気が抜けたような表情になるあ〜ちゃん。
そっかそっか。それでなおさら、声を掛けてこなかったんだ。

「ホントに?」
「ホントもホント。のっちはただの親友だよ?だから、気にしなくっても大丈夫だよ?」
「でも…。」
「でもじゃないのっ。好きなんでしょ?のっちのこと。」
「…うん。…好き。」
まだ少し戸惑いながら、でもはっきり好きと言うあ〜ちゃんの顔が…なんだろう?
可愛くて。また胸がざわついた。


何?これ?
まだ、あ〜ちゃんを好き?
…違う。そんなんじゃない。
だったら、何でこんなにざわつくの?

急に一人の思考の中に入ってしまったところを、あ〜ちゃんに呼び戻される。

「…で、正解したから、ゆかちゃんのお願い聞くんだよね?」
ほんのり頬を染めたあ〜ちゃんが尋ねてくる。
「ん。あぁ、えっとねぇ…。」

のっちにちゃんと気持ちを伝えてほしい。

そう言うつもりだったのに、私の口から出た言葉は…。

「私のこと、好きって言って?」
ってぇ!何言ってるのよ?自分でも意味が解らなかった。

そりゃあもう、ビックリ顔のあ〜ちゃんが出来上がったのも無理のないことで。
私は慌てて訂正しようとする。

「あっはっはwな〜んちゃってぇ。今のは冗談!ホントのお願いはぁ…。」
さっきできた変な空気を変えるために、笑いながら話を進めようとしたんだけど…。

「ゆかちゃん。あのね?…。」
そう話し始めたあ〜ちゃんの方を見ると、そこには真剣な表情のあ〜ちゃんがいて、聞かないといけない気がして言葉を止めた。

「あのね?あたしあの日…入学式の帰りゆかちゃんに、ホントはのっちの事じゃなくて、違う伝えたいことがあったの。」
私は、うんとだけ頷いてあ〜ちゃんの続く言葉を待つ。
「その前に、ゆかちゃんがあたしにキスしないで帰った日。あの後、あたし考えてて、ゆかちゃんのこと…。」
あ〜、アレ…。アレは失敗だったなぁ。苦笑いの私。


「それで、あたしちゃんと伝えなきゃって。
ゆかちゃんの事…キスしたいって思うくらぃ、好きだったんだよ?ってw。」

「え?」
今なんて?

「だからぁ。ちゃんとゆかちゃんが好きでしたってw」
クイッと顔を傾けて、満面の笑みでそう言ってくれたあ〜ちゃん。

その言葉と笑顔が、私の中にポンと収まって、すごく温かい気持ちになった。
なんだ、そっか。私はあ〜ちゃんが好きでいてくれたの、どこかで感じてたんだ。
でも、例の人の事を考えると不安で…。だから、あ〜ちゃんの言葉で聞きたかったんだ。
それで、好きって言ってもらえるのっちが羨ましかったのか。

「にへw…ありがとぅ、あ〜ちゃん。」
すごく嬉しくて、安心しちゃった。涙出そう…。少しの間でも好きになってもらえて良かったよ。

「今更でごめんねだけどぉ。なんか、ちゃんと言えて良かった〜。」
あ〜ちゃんはどこかで、言えずにいた事が気になっていたみたい。
はぁ〜、すっきりした〜。っていつものあ〜ちゃん。

そして、私もいつものようにあ〜ちゃんへ、予定していたお願いをしてみた。

「えぇ〜、でも、のっち好きな人いるって…。」
「だぁいじょうぶだってぇ。もし、振られたら、寂しくないようにゆかが付き合ってあげるよ?」
「もう、またゆかちゃんはw」
「へへぇ。それにぃ、告白してくれなきゃ、振られた私の想いも浮かばれないじゃん?」

む〜っと口を歪ませて、視線を上に向けながら考えるあ〜ちゃん。
「うん。分かった。お願い聞くって約束したし。のっちにちゃんと告白する。」
「うん。応援してる。」
「んwwwなんか緊張するww」
足をジタバタさせて、今から緊張しまくりのあ〜ちゃん。

大丈夫。のっちはとっくにあ〜ちゃんの事好きだから。
三年分。ぶつけたらいいよ。



Side A
お願い何か聞いたら、「私に好きって言って?」と言ってきたゆかちゃん。
突然の言葉にビックリして返せないでいると。
慌てて笑いながら、今のは冗談!って言うけど。きっと本音だよね?

だからあたしは、ずっと胸の奥にあった、あの日の言葉を伝えることにした。
『好きだよ。』とは言えないけど、『好きだったんだよ。』って。

今はゆかちゃんも、きっとわたしを好きな訳じゃないんだろうけど。
あたしが言い終わると、にへwって笑って嬉しそうにしてるゆかちゃん
その顔が、もう大丈夫って言ってるから、あたしも変に気を遣わずにいつものあたしへと戻ることができたよ。

うん。
あたしの中でゆかちゃんは、のっちとは違うあたしの一番なんだ。
これは、ずっとずっと変らない絆だよ?


Side A+K
—その12の場合—fin







最終更新:2009年03月30日 00:00