アットウィキロゴ
「・・学校、辞めちゃうって、、、ほんと?」
「うん、、ほんと」
「なんでっ!?」
「・・・」


「・・のっちが、、、いけなかった?」
「違う!・・それは、、違うよ」
「じゃぁ、、なんで・・・」
「のっちは、、、全然、悪くない…
 悪いのは、全部、あたし・・・」


先生?


「・・・付き合ってる人、いるんだ」
「…知ってる、、、あ〜ちゃんから、聞いた、から・・」
「そ、なんだ・・・」
「そんなの関係ないよ!付き合ってる人がいたって——「結婚、、するの」

「え、、、」


結婚?・・・


校舎を飛び出した、足が止まる。


「・・先生、今、、、どこ?
 ちゃんと、話がしたい」
「・・・ごめん、、、もう会えない」
「なんでっ——「のっち、今、学校、だよね?」

「えっ、うん…」


しばしの沈黙。


「サクラの木、、、見える?」

校庭の隅
サクラの木に、視線をやる。

「うん、、見えるよ」


「初めて会った日のこと、覚えてる?」

「うん・・・」


自然と、サクラの木に向かって足が進む。


「・・・忘れられない人、がいるんだ」

そのコトバを合図に、先生は紡ぎだした。


今まで、決して見せてくれなかった
先生の想い。

サクラの花びらが
ヒラヒラと舞っていた、わけ。


「サクラが大好きな人、でね・・・
 あの日も、そのサクラの木を眺めて、、
 思い出してたの、彼の、こと」


「のっちが現れたとき、、、びっくりしちゃった。
 彼が“戻って”きたのかって、、、、そんなことないのに、ね」
「・・・実際、全然、似てないんだけど、、」


冷たい風が吹きぬけた。
けど、全然、寒さを感じない。


「おかしいよね。似てないのに、似てるような気がしたり・・」
「のっちのキモチ、、、最初からわかってたよ」
「あたしも、気になるってキモチは確かにあって…
 でもね、のっちのこと見てるのか、彼と似てるとこ、似てないとこを
 探そうとしているのか、、、わかんなくって・・」


「ちがう、、、いや、、うん、、、そうじゃ、なくって・・」


先生は、必死でコトバを探してるようだった。


「忘れられない、、、うぅん、忘れたくないの、彼のこと」
「・・・そんなに、好きだったんだ?」
「うん、、、高校の同級生でね、、、ずっとずっと、、
 3年間ずっと好きだった・・」
「大学も、一緒のとこへ。・・・ふふっ、、なんも考えてなかったんだよ。
 彼が行くって聞いたから、じゃ、そこで、て」
「・・・なんで、先生になろうと思ったのって聞かれたことあったよね?」
「うん・・・」
「自分がなりたかったわけじゃ、ないの。彼が、先生になりたかったから」
「志もなにもないんだ、、、、ダメな、先生でしょ?」
「・・・」
「彼が全てだった、、から」



好きだった?
うぅん、、先生にとっては
過去じゃなく、今もなお
好き、なんだ。



「・・・よくわかんないけど、、、その大好きだったって人、
 さっき、結婚するって言った人と違うんですよね?」

「うん・・・」

「いいんですか?そんな好きなのに、キモチ伝えなくって。
 てか、なんで、結婚なんて・・」

「もういないから」

「えっ?」

「もう彼は、いないの。大学3年生のときに、事故で、、ね」


これまでの先生が見せた表情が鮮明に脳裏を過ぎ去っていく。


吹き荒ぶ冷たい風よりも早く。


先生が抱えてる闇の深さを知る。


やっぱ、のっちはコドモだったんだ。

悔しくて、涙が溢れ出てくる。


そしてやっぱり
どうしてもわからない。

「・・・のっち?」
「うぅ・・・っ、、、なんで、結婚するの?」

そんなに大好きな人をココロに残したまま
結婚なんてできる、もの?


「いろんな、、、、事情、でね・・・」

「それに」と、先生は続ける。


「彼以外は、みんな同じだから・・・誰とでも、同じ」


「おんなじ、、って・・・・じゃぁ、、のっちでもいいじゃん」


痛い、痛いよう。

痛すぎて、
この痛みが自分のものなのか
先生のものなのか
わからない。



「…のっちは、、、ダメ」

「なんで!?」

「なんで、でも・・」

「じゃ、なんで、あの日、のっちとこに来たりし、た、、の?」

「・・・ごめん」



わけわかんないよ・・・


「最後の最後まで、勝手なこと言って、ごめんね。
 こんな、最低な先生のこと、早く忘れてしまって・・・」


最低じゃない、
先生は、最低なんかじゃない。


「のっちは、そのまま、、、まっすぐなままでいてね?
 ちゃんと、ステキなオトナになってね」


待って、待ってよ。
まだ、伝えたいことがいっぱいあるんだよ。

けど溢れてくる涙とは対照的に
想いも、コトバも、、、カラダのどっかで
せき止められて、出てこない。



「さよなら」


耳の奥
悲しい響きを残して
消えた、先生の声。




サクラの木の下。

声も出さずに、ただ涙が枯れ果てるまで
うずくまって、泣き続けた。



先生、先生、、先生、、、、


その電話を切るように


この想いも、ぷっつり切ってくれたらよかったのに・・・


だって、もう
ムリだよ。。


自分から、この想いを手放すなんてこと。


そうするには、
のっちたちは、近づきすぎたんだよ・・



先生?


先生は、そうじゃなかったのかな・・・






最終更新:2009年03月30日 00:20