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◆A-side◆

ちゃあぽんが真っ赤な顔して「お母さんには黙っとくから安心して!」と言ったあの顔はこの先一生忘れないだろう。
…夜9時。
さて、これが最大の山場だと思うんだ。
さっき部屋にお母さんがやって来て「お風呂早う入りんさいね~」と笑顔で言った。空気が凍り付いた。
「お、お風呂…」
繰り返す様に呟くのっち。その顔はみるみる赤くなる。あ~ちゃんも赤くなる。って、そんな場合じゃない。
「ど、どうしよっか…」
お風呂に入るって事は、つまり裸になる訳で。体洗ったりとかもする訳で…。
「目隠し、すれば良ぇよね…?」
「いかん」
「じゃどうするんよ」
目隠しだけじゃ不安過ぎる。のっちを信じて無い訳じゃない。だけど、裸で体を洗ったりするんだ…あんな所やこんな所も手を延ばさずとも届く訳で…。
決めた。仕方無い。面倒だけど、やるしかない。

◆◇◆◇

「のっち動くな」
ここは浴室。あたしは服を着たまま、裸ののっちを風呂用の椅子に座らせる。もちろん、のっちの目には目隠しを。裸を見られた時には…責任取って嫁にもらってもらうしかない。なーんてね。


自分の裸をこんな形で見る事になるなんて、なんか新鮮。あ、ちょっと太った?なんて考えながらゴシゴシ洗ってく。
もしも。あくまでももしもの話。もしも、エッチする時が来たとしたら。こんな姿をのっちに見られるって事だよね。…ちょっと待て自分。なんで相手がのっちなんよ。まぁそれ以外考えれんけどさ。
などと一人で想像して、一人で恥ずかしくなった。これじゃアホみたい。のっちに負けんくらいムッツリじゃ。
なんかムカついて、ゴシゴシする手に力を込めた。
「痛い痛い痛い!」
叫ぶのっち。
「静かにしんさい、バレるじゃろ」
ちゃあぽんには、違った意味でバレてしまったけど。変態カップルだと思われただろう。しかも、ドMなお姉ちゃんとドSなのっちって。あぁ、終わった。
泣きたくなるのをグッと堪えて、あたしは自分の背中を流すのであった。

◆N-side◆

こんばんは。のっちです。今、自分の欲望と戦っています。バカみたく強い欲望です。超強敵だ。それはと言うと、
【あ~ちゃんの裸が見たい。】
ごめんなさい。前にも言ったかと思いますが、大本はあ~ちゃん限定のド変態です。ムッツリスケベです。


てゆーか。変態とかでなくて、好きな人の裸を見たいとか思うのは普通の人間の精神だよ。生理現象なんだよ。だから、あ~ちゃんの裸を見たいとか、あわよくば触ってみたいとか、それは人として当たり前の事だと思うんだ。人間の三大欲求の一つは性欲じゃんか。
どうにかして、この目隠しを取りたい。いやいや。そんな事してみろ、あ~ちゃんに嫌われるよ絶対。「エッチなのっちなんて嫌いじゃ!」とか言ってさ。
のっちの頭の中で天使と悪魔が死闘を繰り広げている。
『見たいんじゃろ~見てまえや~』
『ダメじゃよ!あ~ちゃんに嫌われても良ぇの?』
『あ~ちゃんの体は、綺麗なんじゃろうな~スタイルも良ぇし』
『のっち!惑わされちゃダメ!!』
『うるっさいな天使』
『黙ってよ悪魔さん』
ドタバタドタバタ…。喧嘩はやめてよ。のっちは平和主義だからさ。だけど、ヤバいな、悪魔が明らかに優勢だ。
くっそー!見たい!!
「のっち、鼻息荒いよ?」
「…うん、だね」
上手く日本語が話せない。もはや限界に近い。入浴剤の良い香りと、温かいシャワーの湯が、さらに胸を高鳴らせる。


「あの…さ、目隠ししとったら、顔が洗えんよね…?」
我ながら見事な選択。やれば出来るじゃないか。そうだよ、顔を洗うには目隠しを取らなくちゃ。恐る恐るではあるが、あ~ちゃんに尋ねた。
「顔はお風呂上がってからでも洗えるじゃろ、」
即答だ。その言葉に、悪魔がダメージ。甘かった。爪が甘かった。でもこんな所で引き下がるか。頑張れのっち、負けるなのっち!
「目ぇ痛いんじゃけど、これ緩めても良ぇ?」
「もう少しで終わるけぇ我慢しんさい」
「…うわっ目にシャンプーが!痛たたたた!」
「まだ頭洗ってないから」
……。
こんなんじゃダメだ。こんな最高のチャンス、逃す訳にはいかないよ。くそう、どーすれば…。
「あ、シャンプー切れとる…ちょっと取ってくるけぇ動かんでよ」
そう言って、あ~ちゃんは浴室を出て行った。ま、まさかの…まさかのチャンス到来!あ~ちゃん破れたり!悪魔が応援してる。天使は…、何処行ったのかな。
どうしよう、これを取れば…あ~ちゃんの裸が…。目隠しに手を延ばす。その手がワナワナと震える。は、早くしないと、あ~ちゃんが戻って来ちゃうよ。


よし、覚悟を決めた。ごめんね、あ~ちゃん。裸を見た暁には、責任持ってのっちがお嫁にもらうからね。安心してね。
「あ~ちゃんの裸、オ~プ~ン!」
念願の、念願の…!ゆっくり目隠しを外す。外して、閉じていた目をゆっくり開く。あ~ちゃんの裸が、そこに…。ってアレ?真っ暗。
「なんで…コレじゃあ~ちゃんの体が見えん!」
なんてこった。
「のっち…何をしとんかな君は」
ビクッ。まさかのご本人様降臨。早過ぎるよ。冷静になって、気が付いた。目の前が真っ暗なのは、あ~ちゃんが手で目隠ししてるから。怒りのオーラを感じる。背中に、ビシバシと。
「え、えっと…」
「何をしてるんですか」
声に迫力を感じる。めちゃくちゃ恐い。けど、さっきも言ったけど、これは人間として正しい行為なんだ。開き直るのは私の特技ですから。
「裸見してよ!」
「嫌に決まっとるじゃろ」
スパーン。あでっ。なんか固い物で頭を叩かれた。うぅ…今のでアホになったかも…前からアホだけど。
また大人しくタオルで目隠しをされ、頭を洗う。いつか見れる日が来る事を夢見て。
勝負は、最終回の満塁さよならホームランで天使の逆転勝ち。

◆4:End◆






最終更新:2008年10月10日 15:28