〔N〕
できなかった。
私にはできなかった。
言えなかった。
私には言えなかった。
ただ唯一ゆかちゃんだけは関係を切ることができなかった。
ただ唯一ゆかちゃんにだけは別れの言葉を言えなかった。
私は甘えているんだ。
他の子とは違う。
ゆかちゃんは他とは違う。
いつからか気付いていた。
いや、ずっと気付いていた。
だってそこらへんの子とは付き合ってる長さが、距離が、温度が、全てが違うもん。
そんなことは誰から見てもわかるけど。
ゆかちゃんにまで手を出したのは気付かれてない。
まさか、そんな、、ね?
誰も思わないよ。
ゆかちゃんは優しい。
あ〜ちゃんの優しさとは違う。
あ〜ちゃんは全てを包みこむ優しさ。まわりの人全てを。太陽みたいに輝いて、みんなを照らしてくれる。
だけどゆかちゃんの優しさは違う。
ゆかちゃんは、、、
ゆかちゃんは私に
『だけ!!』
優しい。
私の前でだけ!!いつも見せない優しさを出す。
私のことにだけ!!普段とは違う優しさをくれる。
だから私は甘えている。
ゆかちゃんが騙されてくれてる。
ゆかちゃんが照れてくれてる。
ゆかちゃんが甘えてくれてる。
多分それはゆかちゃんの気遣い。と、優しさ。
私に対してだけの。
それに気付かないように、私はゆかちゃんに甘えていた。だから、、もう今更退けない。
好きとか、、じゃ、、ない。。。多分。。
ゆかちゃんのくれる甘ったるい優しさに溺れていたいだけ。
好きとかじゃ、、な、い、、、よ?ね?
多分。。
〔K〕
二人きりの控え室。
完璧にゆかの中の何かは外れた。のっちは何を思って、何を考えてそんなこと言ってるんだろう?
何か外れた、のに、何も言えないでいる。
再び沈黙は続く。
(・・なんか言わなきゃ)
こんな時にうまい言葉が見つかってくれればいいのに。。あまりに無力で自分で自分にガックリきた。
やっぱり沈黙を破ったのはのっち。
『・・・あ、困らせた!?』
少し焦ってる。
『こ、困るよね・・・』
力なくつぶやく。
『でも・・・』
(・・でも!?でも、なによ!?)
『・・・・・・困ればいいけど』
(・・・!!!???)
『困れば、、いいよ・・・』
二人きり静かな控え室。
のっちの声が響く。
脳みそをガンガン揺さ振られる。な、なんか、言わなきゃ、、。
どうしよう・・・・
やっと口をひらく。
ひらいた口からは、なんの考えもなしに感情が飛び出た。
『・・・もう・・ずっと、困って、るよ・・・』
もうだめだ。そんなこと言ってものっちには届かない。そんなことわかってる。そんな言葉ひとつじゃのっちは揺れない。そんなこともわかってるのに。
三度目の沈黙。
痛い。辛い。
でも、なんも言えない。
『のっちも・・・』
へっ???!!
三度目の沈黙も破ったのはのっち。いや、でも、えっ?!なに?!
わけがわかってない私を、優しい目で、だけど真剣な顔でのっちは見てた。
『・・のっちもゆかちゃんに困っとる・・』
のっちが近づいてくる。
3メートル。
優しい目で。
2メートル。
真剣な顔で。
1メートル。
いつもと違う。
だって困ってるなんて絶対言わない人。
のっちの手が伸びる。
50センチ。
指先が震えてる。
30センチ。
その先にいるのは間違いなくゆか。
顔も体も頭の中も全部熱い。全部がのっちを捕らえてる。
のっちの手が伸びる。
10センチ。
のっちの息がかかる。
5センチ。
のっちの匂いがする。
4センチ。
のっちの指先が揺れる。
3・・・2・・・・・1。
指先はゆかの髪に触れた。
『ねぇ・・どうすればいい?』
最終更新:2009年03月30日 00:48