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タン、と音を立てて閉まる障子。
ゆかちゃんはあたしを部屋に招き入れると、座布団の上に座り、あたしにもそうするよう促した。


彼女とは、あたしが中学生の時に引っ越してから7年も会っていない。
…なのに、何故あたしが大学の夏休みを利用してこうして彼女の家にやって来たのか。
それは彼女のお母さんに、帰郷するのなら暇な時にでも彼女の家庭教師をしてくれないか…と、頼まれたからだ。


「ちっとも変わっとらんじゃろ?ゆかの部屋」
「ほぅじゃね〜、模様変えもせんかったん?」
「だってお母さんに怒られるけぇ…。おまけに『元はお母さんの部屋じゃけ、勝手に模様変えせんでよ?』って釘刺されたし」
ゆかちゃんがぷくーと不満げに膨れた。
彼女の昔から変わらない癖に、笑みが零れる。
「あ〜ちゃん今、ゆかの事子供みたいって思ったじゃろ」
「うん、思った」
「もぉ、あ〜ちゃんは昔からゆかの事子供扱いじゃ。ゆかより四コ上なだけじゃん」
「だって、ゆかちゃんまだ高校生じゃろ?子供だよ」

「…子供じゃないよ」

ぽつり、と彼女は呟いた。


今までに見た事のない表情をして。
「ゆか、は…いつになったら、あ〜ちゃんの中で子供じゃなくなるん…?」
「ゆかちゃん…?」
俯くゆかちゃんの表情は、綺麗に切り揃えられた前髪に隠れて見えない。
そんな彼女の心理を窺いたくて、そっと覗き込もうとした瞬間。
「ゆかは子供じゃないんよ…あ〜ちゃん」
顔を上げたゆかちゃんは、にこりと笑った。
それは、まさに妖艶。

「…っ」
ドクドクと体中を駆け巡る鼓動。
気が付いた時には距離が詰められていて、手を握られていた。
「ねぇ…あ〜ちゃん、ゆかの事知りたい…?」
「っ…もう…ゆかちゃんの事、知っとるよ…」
頭の中に響く警鐘。

…誘われている。

あたしの直感がそう告げている。
しかし、防衛線を張ろうとするあたしにどんどん距離を詰めるゆかちゃん。
先程の妖艶な笑みを絶やす事なく、じりじりと。

「ゆ…っ、ゆかちゃん…!」
「子供が、知らない事しよ…?」

  • 続-






最終更新:2009年03月30日 00:49