雨に打たれた翌日。
あたしは風邪を引いた様子はないので、朝から学校へ行った。
のっちに合わせる顔がない。
でも今日はのっちは授業がなくて学校に来ないはず。
そう思うと少し気が楽になった。
「ゆかちゃ〜ん、おはよ〜」
あ〜ちゃんだ。
「おはよー」
「昨日雨すごかったね。ゆかちゃんバイト帰り降られなかった?」
「あー・・・大丈夫だったけぇ」
「そっか、よかったね」
あ〜ちゃんは太陽のようなキラキラした笑顔で、あたしのコトを心配してくれてる。
その笑顔に胸がキュンとなる。触れたくなってくる。
昨日はのっちのコトを想うと胸が苦しくなった。
だからもうあたしは、のっちのコトが好きなんだと思っていた。
でもあ〜ちゃんを目の前にすると、やっぱりあ〜ちゃんが好きなのかな?って感じる。
あたしはゆらゆらゆれてて、何をどうしたらいいかわからなくなっていた。
「・・・なんか飽きてきちゃった」
珍しく授業中にあ〜ちゃんが話し掛けてきた。
席は一番後ろに座ってるから、小声で喋ってる分には先生にはわからない。
あ〜ちゃんは机に寝そべって、ノートに落書きを始めた。
あたしは頬杖をついて、あ〜ちゃんとその落書きを眺める。
落書きはお世辞にも上手いとは言えない、目の前で授業をしている先生の似顔絵だった。
「あ〜ちゃん、下手w」
そう言ったら、あ〜ちゃんは拗ねて不貞寝してしまった。
不貞寝したあ〜ちゃんの髪を触る。
髪はフワフワで柔らかいのに、ふれる指先は今にも切れそうだ。
あたしは髪を触るので精一杯。それ以上触れてしまうと、全身が切れちゃいそうだ。
昼休みになり、いつもの通り食堂へ行く。
そこには今日来るはずない、のっちの姿があった。
「あっ!!のっちじゃ!!」
あ〜ちゃんは指をさしてあたしに教えてくれた。
のっちもあたしたちに気づいたらしく、手を振ってる。
「ゆかちゃん、行こ」
あ〜ちゃんに連れられて、のっちが座ってるテーブルへ。
あたしはどの面下げて、のっち会えばいいのかわからず戸惑った。
のっちは一足早く昼ごはんを食べてた。
手元には魚の煮付けの定食。
「なんで、のっちいんの?今日授業ないでしょ?てか、その絆創膏どうしたの?」
あ〜ちゃんは一気に沢山の疑問をのっちに投げかけた。
「えっと、ノート借りようと思って来たのれす。
でも二人とも授業中だったから、丁度お昼だしお腹空いたからご飯食べてる最中で・・・
この絆創膏は、昨日雨で・・・コケたから・・・以上れす」
「ふ〜ん・・・コケて、顔擦りむく人ってほんまにいるんじゃね」
あ〜ちゃんは不思議そうにのっちの頬の絆創膏を見る。
あ〜ちゃん、のっちはコケてそうなったんじゃないの・・・。
あたしを助けてくれた代償なの・・・。あ〜ちゃん、言えなくてごめんね。
ふと、のっちと視線がぶつかる。
昨日みたいに困ったような優しい笑顔を返された。
その顔はまたあたしの胸を苦しめるだけ。
「めずらしいね。魚食べてるの」
あ〜ちゃんがのっちに問いかける。
「う〜ん、さすがにいつもカレーと揚げ物肉じゃ体が可哀相だから、たまにはヘルシーな魚でも、と思ってw」
「そうだよ。ちゃんとバランスよく食べないと健康に良くないけぇ」
そういえば、のっちがカレー、揚げ物、肉以外を食べているのはめずらしい。
今まで気付かなかったけど、のっちは箸の使い方がキレイだ。
ウインナーみたいな指で、器用に魚の皮と骨を取っている。
「え?な、なに?かっしー?あっ?もしかして食べたいの?」
あたしはいつの間にか、のっちを直視してたらしい。
「あ・・・い、いらない」
「そう?」
のっちはまた器用に魚を解して口に持っていった。
その動きは妙に色っぽかった。
あたしは魚を丁寧に食べるのっちを見て、何か外れた。
「んじゃ、ノート置いとくね。」
「ありがとう、あ〜ちゃん。」
「食堂でやるの?」
「うん。あっ、授業が終わるまでにノート写すように頑張るから!」
「ちゃんとするんよ?寝ちゃダメだからね?」
「は〜い」
「あっ、ゆかちゃんはよ行こ!もう始まっちゃう」
のっちを食堂に残し、あたしはあ〜ちゃんと共に授業に向かった。
「あ〜ちゃん・・・ゆか、ちょっとトイレ行ってくるけ。先行っといて」
「うん、わかった。あっ、荷物持っとくよ。」
あたしはトイレではなく、食堂へ向かう。
食堂に戻ると、もうほとんど人はいなかった。
のっちはあ〜ちゃんから借りたノートを一生懸命写していた。
あたしはのっちの前の席に座る。
「あれ?かっしー、どしたん?忘れ物?」
あたしは首を左右に振る。
「なんで何も訊かんの?」
「・・・なにを?」
「昨日のコト・・・」
「あぁ・・・」
「軽蔑した?」
「・・・・」
「彼氏がいるのに、・・・シて!」
「ちょっ、かっしー、声でかい・・・」
のっちはハノ字眉になって慌てる。
「・・・今、ノート写さなきゃいけんから、また後で話そ・・・」
「嫌いになった?」
「・・・・」
のっちはまた、困った感じで笑って誤魔化そうとする。
「ちょっと、来て!」
「えっ!?」
あたしはのっちの腕を掴み、強引にトイレに連れてく。
そして個室に押し込んだ。狭い個室に二人で入る。物理的に体が近くなる。
あたしは首に抱きついて、むりやり唇を重ねる。
「・・・かっしー、ここトイレ。しかも学校の・・・」
「それがなに?」
「『なに?』って、人が来たら大変じゃろ・・・」
「そんなの知らん」
「ダメだよ・・・」
のっちは首に回ってるあたしの腕をどけた。
「軽蔑した?」
「・・・して、ないよ」
「嫌いになった?」
「・・・なって、ないよ」
「・・・なら、シてよ」
「だから、ここじゃダメだって・・・」
「なんでよ。じゃ、どこだったらいいの?」
「・・・・」
「答えてよ!」
「・・・声、でかいよ」
あたしはのっちの右手を取り、ウインナーみたいな指を舐めた。
のっちがその気になるように、感じるように舐めた。
左手はあたしの胸に触らせる。
「触って・・・」
そう言って、舐めてた右手をあたしのスカートの中へ運ぶ。
あたしはのっちが魚を食べている時に、すでに体は火照っていた。
これじゃ、ただの盛りのついた猫。
でも、もう止まらないの。
のっちを求めてる身体をコントロール出来ないの。
のっちが欲しいの。
ゆらゆらしてるあたしを捕まえて満たしてよ。
のっちはあたしがすでに濡れてたのがわかったのか、すぐに指を動かしてきた。
「なんで、もうこんなんなっとるの?」
「のっちが魚食べたから・・・」
「は?何それ?意味わからんw超ウケるww」
「笑わんでよ・・・」
最中なのに、色気も何もない会話・・・。
「キス、して?」
「うん・・・」
のっちとキスをしたら、口の中に何か入ってきた。
飴だ。
「飴舐めてたの?」
「うん。返して?」
またキスをして、舌を絡めながら飴を返す。
そしてのっちはあたしを絶頂に連れてってくれた。
あたしは急いで教室へ戻る。
下着が濡れてて気持ち悪いけどしょうがない。
結局、のっちは何も訊いてこなかった・・・。
あのハノ字眉の笑顔で誤魔化されたまま。
のっちに抱いてもらったけど、あたしの心はゆらゆら揺れたままだった。
最終更新:2009年03月30日 01:06