あ〜ちゃんちでゆかちゃんと遊ぶ約束をしてて、学校帰りにゆかちゃんと家に帰ってくるとテーブルの上に一枚のメモ。
『お祖母ちゃんが具合悪いようなので、お母さんは様子を見に行きます。お父さんも出張だし、たかしげも部活の遠征中なので彩華をお願いします。明日には帰ります。
母より』
の下に
『と、言うことで友達の家にお泊まりしてきますV
ちゃあぽんより』
「って、どんだけ!」
正直、女の子だけで留守番なんて…。
「うち来る?」
それまで黙ってたゆかちゃんが誘ってくれる。
「うん!行く!」
「じゃあ…あっ…」
さっきまで笑顔だったゆかちゃんの顔が途端に渋くなる。
「今日、ゲストルーム一杯なんよ」
「なにかあるん?」
あんだけあるゲストルームが一杯になるなんて。
「会社の設立記念パーティー。今年で百周年なんよ」
「そんなんあるん?」
「ゆかも主席せんといかんのよ…」
「そっかぁ…まぁ、仕方がない。一人で頑張るよ」
「んー…」
ゆかちゃんは納得してない感じだけど、しょうがないものはしょうがない。
「のっち…のっち貸すよ!」
「はい?」
貸す?と言うことは…
「あんなんでも、おったほうが良いと思うよ?1人より、1人と一匹のほうがw」
一匹?
あれ?のっちって人間だよね?
「と言うことでよろしくお願いします。綾香様」
あれからゆかちゃんはのっちに電話して…
「一大事なの!早く来て!飛んできて!てかむしろ飛べ!」
とわけの解らない事を言い、のっちを呼び出した。
のっちも本当に飛んできたんじゃないかぐらい早くて、慌てすぎて玄関先で転んでた。
「ごめんね?のっち」
「?何が…ですか?」
「いや…何がって、一大事じゃないし…正直面倒じゃろ?」
「いえW綾香様がお一人でお留守番なんて、充分一大事ですよ?面倒なことなんてありません。」
爽やかだ…
爽やかすぎる…
これじゃ、ファンも増えるわけだ…。
「じゃ!のっちしっかり、番犬するんよ?」
「はい、もちろんです!!」
ゆかちゃんはのっちが来るなり早々と車に乗り込む。
「ゆかお嬢様、今日のパーティー用のドレス、クローゼットの一番右端にありますから」
「のっち…今はあ〜ちゃんの執事でしょ」
ふにっ…っとゆかちゃんはのっちの鼻を摘んだ。
「すんまぁせん」
「よし、良い子w」
のっちが車のドアをバタンと閉めると、車は走り出し、走り去る車に向かってのっちはお辞儀してた。
車が見えなくなると、のっちは顔を上げ、
「あまり、外に出て居られると風邪ひいてしまいますよ?綾香お嬢様」
なんかもう、爽やかすぎて、のっちに後光がさして見えるよ…。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「アフタヌーンティーはいかがですか?」
数字の宿題をしていると、のっちが紅茶を煎れてくれた。
「あー、ありがとう」
のっちは良く気が利く。執事だから当たり前だけど…。
「綾香お嬢様はミルクですか?レモンですか?」
「んー…ストレートで」
「はい、かしこまりました」
どこから持ってきたのか、配膳用のカート(正式名称しらん)にティーポットとティーカップ。
慣れた手つきで紅茶を煎れていくのっち。
思わず、見とれてしまった。
ゆかちゃんの家に遊びに行ったりすると、部屋の片隅で煎れているのは見るけれど、こんな間近は初めてだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
のっちの煎れる紅茶はハンパなく美味しい。
リプ○ンなんて比じゃない。
「綾香お嬢様、夕食はいかがいたしますか?」
「ん?あ〜ちゃんが適当に作るけん。」
「いえ!そういうわけにはいきません!」
本当、のっちはどこまでも優しい。
「じゃあ、お言葉に甘えてw」
「綾香お嬢様、ご夕食の準備が出来ました」
ダイニングテーブルを見て、あれ?此処は高級レストランか?と錯覚した。
ダイニングテーブルには白いテーブルクロスが…そして、その上に広がる料理の数々。
「普通で良いって言ったのに…」
「?普通ですよ?」
普通がフレンチのフルコースって、、、
樫野家恐るべし、、、
のっちが用意してくれた夕食はどれも美味しくて、あっという間に食べ終えてしまった。
すかさず、のっちが食器を下げてくれて、
「お風呂の準備出来てますよ」
お風呂はテレビでしか見たことのない泡風呂になってて、
「ベットメイキングも済んでおりますので、いつでもお休みになれますから」
ベットもふかふかで、
本当、至れり尽くせり。
凄くありがたいし、
嬉しいし、
楽しい…
けど…
なんでだろ…
なんでかな…
なんか、違う気がしたんだ。
どこか、モヤモヤした気持ちを抱きながらも、ふかふかのベットに潜り込むと私は直ぐに眠りについてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ふと、目が覚めて辺りを見回すとのっちの姿がなくて…
たしか、のっちは床に布団を敷いて寝ていたのに。
階段を下りると微かにのっちの声がした。
誰かと喋ってる?
階段から覗くと、玄関座っているのっちの後ろ姿が見えた。
「はい、解ってますよ」
携帯電話で誰か話しているようだ。
誰?誰と喋ってるの?
いけないとは解っていても、聞き耳をたててしまう。
「明日も早いですから、もうお休みにならないといけませんよ?ゆかお嬢様」
そうか、ゆかちゃんか…
私は何故かホッとして、少し寂しくなった。
「では、失礼します。」
電話を切って、立ち上がったのっちに声をかけた。
「起こしてしまいましたか」
ハの字眉で謝るのっちに私は首を横に振る。
「ちょっと、目が覚めただけ…」
すると、困ったような笑顔で私に近寄ると、ヒョイと…
「んな!」
持ち上げられた。
「なっ何しとるん!」
「お嬢様抱っこですけど…?」
知っとるわ!
そうじゃなくて!
なんで、その…お、、お嬢様抱っこをしてるのかってことで、、、
ワナワナしている私をよそに、のっちは軽快に階段を上る。
そして、ゆっくりと私をベットに下ろすと、私のおでこを撫でた。
「もう、遅いですから…。早くお休みにならないと、、、」
凄く恥ずかしかったのに、のっちの寂しそうな優しい眼差しに今度は泣きそうになった。
涙が頬を伝う前に、私はそっと瞼を閉じた。
いつだったか…
ゆかちゃんに言ったことがある。
「ゆかちゃんはいつも執事がそばにいて羨ましいなぁ…」
執事が…
のっちがいて…
羨ましいなぁ…。
ゆかちゃんは笑って、じゃあいつでも貸すよvなんて、言っていたけど。
私も笑って、貸して、貸してwと言っていたけど。
実際、苦しいね…。
のっちの手が瞼を閉じても流れた私の涙を拭ってくれるのがわかった。
(続きは後程…)
最終更新:2009年03月30日 01:08