はぁ、と彼女から甘い溜め息が漏れた。
「ぁ〜、ちゃ…」
「なん?」
柔らかく優しく肌を撫でていく。
あたしの中で沸々と湧いてくる欲望。…だけど。
「ん…」
「くすぐったい…?」
「ぅん、でも…き…もちぃ…」
とろりと蕩けた瞳は、あたしを誘っている。…だけど、あたしの手は彼女の体をゆっくりなぞってるだけ。
服を脱がせるわけでも、胸に触るわけでも、キスをするわけでもなく。ただ、本能が望むままにゆかちゃんの体に触れていく。
「あ〜ちゃん…っ」
「…」
焦れた彼女があたしを呼んでも、それを止めようとはしない。
別に焦らす気はないのだけど…。
「おねがぃ…、も…っゆか…」
ふる、と彼女の体が震えた。…こくん、と喉が鳴る。
「がまん…でき、ん…よぅ…」
甘い甘いおねだりに、頭の中がびりびりと痺れた気がした。
「…ゆかちゃん…」
そっと服に手をかける。…と。
「ゆかー?」
どきりと心臓が跳ねた。
思わずゆかちゃんに覆いかぶさっていた体を起こす。
「は、はぁーい」
おばさんに呼ばれたゆかちゃんは、慌てて部屋を飛び出していった。
…はぁ。
ついた溜め息は熱い。
今になって、額にじんわりと汗をかいている事に気付く。
「…あ〜ちゃん」
「ぁ…なん?」
ゆかちゃんが部屋に戻ってきた。手にはお皿にのったスイカが。
「お母さんが、あ〜ちゃんに持っていきんさいって…」
そう言う彼女の頬は、スイカのように紅かった。
「もう帰るん?」
「スイカご馳走になったし、今日は顔見に来ただけじゃけぇ」
「そっか…」
しょんぼりする彼女に、さっきまでの甘い空気はもう存在していない。
あたしはひとまず、心の中で安堵した。
「それじゃあ…明日はあ〜ちゃん用事あるけぇ、明後日ね。その時はちゃーんとお勉強してもらうけぇ、覚悟しときんさい」
なんて、お姉さんぶって(といっても実際お姉さんではあるんだけど)言うと。
「…今度はちゃんと教えてね、あ〜ちゃん」
彼女は頬を紅く染めてそう言った。
外はもう夕暮れだった。
辺りにはひぐらしの鳴き声が響いている。
…はぁ、と息をつく。
優しい風が頬を掠めて、熱くなった体を包み込む。
「……あつい」
まだ。
まだ、彼女が残っている。
この手に、目に、耳に、彼女がいる。
「……なにしとるんじゃろ…大人なのに」
…でも、あたしはどこかで期待してたのかもしれない。
彼女と再会する事で、何かが変わる事を。
「……」
…それはまるで、子供みたいに。
最終更新:2009年03月30日 01:10