Side N
ベットの中でまどろみを彷徨っていると、唇にいつもの柔らかい感触。
ずっと感じていたいけど、それはすぐに離れていく。
だって、このキスはただの合図だから。朝ですっていう…それだけのモノ。
「お早うございます。彩乃様。お時間ですよ?」
まだ眠い瞼を上げて、あたしは声の主を確認する。
「ぅwwん。今日は学校休みじゃろ?」
「そうですが、お休みだからといって寝ていては、生活リズムが崩れてしまいますよ?」
いつものように柔らかい笑顔で話してくる。
いつまでもうだうだ言っててもしょうがないから、とりあえず体を起こす。
「ふあ〜。あやちゃんは、いつもきちんとしとるね?」
「もう身に着いていますから。」
ふふっと笑うこの子は、あたし専属のメイドさんで、身の回りの世話をしてくれている『あやちゃん』
まあ、あたしが勝手に呼んでるんだけどね。
本人は呼び捨てで構わないって言ってたんけど…。こっちのが可愛いじゃん?
年はあたしのいっこ下なんだけど、あたしより全然しっかりしてる。
他にも家には何人かメイドさんがおるけど、あたしの周りのことはあやちゃんだけにお願いしている。
基本、一人で居るのが好きだから、あんまり周りに人が居るとその内鬱陶しくなってくるけど。
ずっと側に居てもあやちゃんだけは鬱陶しくならないから。
「旦那様と奥様は、もうお出掛けになられましたので、朝食はこちらにお持ちしてあります。」
あ〜、そういえば今日は朝から忙しいとか言ってたっけ?
「あ、ねぇ。あやちゃん。今日さ、一緒に出掛けない?」
あたしは、持って来てもらった朝食をとりながら、あやちゃんを誘ってみる。
「そんな、とんでもありません!私なんかがご一緒しては…。」
「いいじゃん。家の中に居るだけじゃつまらんじゃろ?」
それに、あたしが居なくてもメイドさんて結構やることあるみたいで、外に出る機会なんてあんまり無いみたいだし。
「ですが…。」
「あたしが一緒にってお願いしとるんけぇ。誰も文句は言わんてぇ。ね?行こ?」
「彩乃様のお願いでしたら…。」
あたしのお願いを断れないのを知ってるから、ちょっとずるい気もするけど。
今日はあやちゃんと行きたいんだもん。
「よし!じゃあ決まりじゃね?あ、ゆかちゃんも一緒じゃけど良いよね?」
「はい。」
快く返事をしてくれたあやちゃん。
ゆかちゃんは何度か遊びに来てるから、少しは慣れてるし。
なにより、自分一人ではなんとなく心配で…。
せっかく、外に遊び行くんだから楽しんでもらわんと。
朝食を食べ終わって、出かける準備をする。
片付けに部屋を出ようとするあやちゃんを呼び止めて。
「そうじゃ、今日の服。あやちゃん決めてよ?」
「私がですか?」
「うん。あたしに着て欲しいやつ。選んでって?」
少し考えて、かしこまりました。って言って迷わずクローゼットからあやちゃんが持ってきたのは…。
上はいつも通りな感じのジャケットで、下が…フリーツのスカート。
あたしスカート苦手なんけど…。あやちゃんも知ってるのにぃ。
あやちゃんから受け取った時、ちょっと固まってしまって。
「綾乃様が私にお願いされたんですよ?可愛いんですから、ちゃんと穿いてくださいね?」
たまに今みたいな、少し悪戯な笑顔をするんだよねw。
「わっかりますた…。」
ま〜、フリフリじゃないだけましかぁ。
そして、部屋を後にするあやちゃん。
あたしは、あやちゃんが選んでくれた洋服に着替える。
ん?そういえば、出掛けるってコトは、あやちゃんも着替えてくるんよね?
メイド服以外って、もしかして見るの初めてか?
支度も終って玄関で待っていると、小走りでやってくるあやちゃん。
「お待たせしてすみませんっ。」
か、可愛いw
シンプルな感じなんだけど、花柄の可愛いワンピ。
「あやちゃん可愛いw似合っとる。」
「え。そうですか?ありがとうございます。」
ちょっと、照れ気味に返事してくるあやちゃん。
「なんか、着慣れないもので、変な感じです。」
「全然変じゃないよぉ。」
「ぁの、彩乃様も思ったとおり、良くお似合いです。」
「あ。そぉお?見立てが良いけぇね。」
頭に手を置いて、あはは〜って照れ笑い。あたしの方こそ穿き慣れないから変な感じ。
「そんなことありません!彩乃様はもともとお可愛いですから。なんでもお似合いになりますよ。」
あやちゃんの言葉はいつでも真剣。
だから、お世辞とかじゃないって思うとなんか嬉しい。
「へへwありがとぅ。…そいじゃ、行こっか。」
「はい。」
あたしたちは車に乗り込み、ゆかちゃんとの待ち合わせの場所へと向かった。
—つづく—
最終更新:2009年03月30日 01:31