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晴れた土曜日の午後って、なんでこんなにのん気で平和なんじゃろう…。
屋上で一人、ぼんやりしてると、何か自分だけ取り残されてるみたいな気分になる。
だから、ゆかちゃんがゆっくりあたしに近づいて来るのが見えて、あたしはほっとした。
ゆかちゃんのすうっとしてスラーっとしたスタイル。サラサラの髪がお人形さんみたい。うちはぷにぷにしとるから、ゆかちゃんのフォルムには憧れちゃう。
あたしは嬉しくなって手を振ったけど。ゆかちゃんは難しい顔をしてる。
…あ。怒られるかな。
ゆかちゃんは、あたしののっちへの気持ちも、のっちの…多分まあ…うちへの気持ちも知ってるから、あたしがゆかちゃんとのっちがお似合いなんて言うの、無神経に聞こえただろうな。


案の定、ゆかちゃんは少し厳しい顔で、
「あ~ちゃんが好きなのは、のっちなんじゃろ?」
そう確認するように強い口調で言った後、
「あ~ちゃんは自分の気持ちに素直でええんよ。大好きな人に、一番大事にされとったら、ゆかは安心出来るけえ」
…ありがと、ゆかちゃん。
でも。何でなんじゃろう。あたしはあと一歩が踏み出せないでいる。
好きになればなるほど、あたしは遠回りをしたくなる。キスを重ねれば重ねるほど、指が触れるだけのときめきに帰りたくなる。
…横顔を見つめるだけで、幸せだったのに。相手になんかされんくって、良かったのに。
ただ、好きなだけで良かったのに。
エンドレスに、一方通行な気持ちで。何も始まらなければ、何も終わらないから。
ゆかちゃんとのっち。大好きな二人が王子様とお姫様みたく並んでて、その横顔を眺めれたら、何も不安が無い気がした。
…なんか。ほんま、子供じゃ。


犬っころみたいなのっちを引っ張って振り回してるのは自分だと思っとったのに。
もうのっちは、昔みたく、あたしに恐る恐る触れない。
あたしは他愛なく、引き寄せられ、押さえ込まれ、かき乱される。
もうあたしは。のっちにとって、簡単な存在になっちゃったのかな。
…そしたら。その後はどこに行けばいいんじゃろ?


この間夜のプールで、何か二人の時間がとても大事に思えて。「帰りたくない」と口にしてしまって。
…その後、あたしは途方に暮れたんだ。
あたし達これからどこに行けばいいのかな?
あたし達がずっと一緒にいれる場所なんて、どこにあるのかな?
あたしはちっぽけで、子供で。のっちの手を引っ張って行ける場所なんて、無かった。
だから。ゆかちゃんのいるとこに、逃げ込んだ。
「行き場が無いんよ…」
あたしが新しい花火を取りながら呟くと、ゆかちゃんが自分の花火を近づけて火をつけてくれた。


「あ~ちゃんは、自分でどんどん進んじゃうとこあるけど、ゆっくりでええんよ」
ゆかちゃんが静かな声で言う。
ゆかちゃんは、うちに呆れとらんのかな?
多分。ゆかちゃんは、あたしが一緒に逃げようって言ったら、何だかんだと常識的なこと言いながら、着実に手はずを整えてくれそうで。あたしはいつも甘えてしまう。
…まあ、ゆかちゃんもいい加減、うちに避難所扱いされるの困っとるかもしれんけど…。
あたしはゆっくりとゆかちゃんにもたれかかる。
ゆかちゃんは、黙ったまま、花火の最後の光の玉を、落ちないようにじっと見守ってる。


のっちはあたしのことを太陽みたく言うけど。
ほんとは自分の行き場に迷うような子供で。わずかな風に揺らぐ線香花火みたいな、弱い光かもしれない。
真昼の花火みたいに。周りが眩しく光ってたら、見えなくなるような。
そう。見えないのは、あたしの気持ち。
どうしたいの?壊したいの?愛したいの?
…分かってるのは、たった2文字の感情。
それが、胸の奥で。ぱちぱちと火花を立てる。その、刹那的な光。かなしいほどの儚さ。
…どうすれば、永遠は見える?

終わり






最終更新:2008年10月10日 15:55