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〔N〕

鍵をあけ、先にゆかちゃんを部屋に通す。
瞬間、のびた自分の腕。
迷うことなく背中から抱き締めた。
彼女の体はやっぱり細い。
荷物だって床に放り投げて一心不乱に抱き締めた。
彼女の体はやっぱり細い。
自分の意志とは裏腹に、
勝手に息があがる。
“冷静にスマートで優しく”
なんて考えていたのに、
抱き締めた彼女から沸いている熱に、もうそんなことはどうでもよくなった。
彼女の軽い体を強引に自分へと向かせる。
間髪入れずに妖艶な唇に、自分の飢えた唇をなだれこむ。優しくなんて言ってられない。
我慢しきれないほどに唇を味わい尽くす。
抱き締めている彼女の体はやっぱり細い。
私の飢えた唇を受け入れた彼女はすんなりと舌を入れてくる。
どちらともなく洩れた吐息と一緒に。
キスをしたまま、いまだに自分たちが玄関にいることに気付き、慌ててかかとで靴を脱ぎすてる。足元なんか見もしない。
彼女はブーツを履いているからしゃがむとか、座るとかしなきゃいけないんだろうけど、私は舌の動きも抱き締める腕もやめるつもりはなかった。
————クスッ——
彼女は私が止まるつもりがないことを察したのか唇を離さないで小さく笑い、片足を持ち上げて片手で器用にブーツのジッパーをさげ脱ぎすてた。
もう片足のブーツが脱ぎおわり、彼女は私の首に両腕を巻き付ける。
“脱いだよ”のサイン。
キスはどんどん深くなる。
途中で私の熱が『・・はぁ・・・』と洩れたり、
彼女の笑みが『・・ん、ふふっ・・・』と洩れたりしながら、どんどん深くなるキスにめまいを覚えるほどだった。私は知り尽くしている自分の部屋で彼女とキスを繰り返しながら足を進めていった。
玄関から廊下。
『・・・ん、はぁ・・』
廊下からキッチンのよこ。
『・・・ふっ、ん、はぁ・・』
キッチンからリビング。
『・・・はぁはぁはぁ・・』
リビングを抜けて寝室。
『・・・ん、ふぁ・・ん、・・』
ベッドはもうすぐそこ。


薄目をあけた視界にベッドが見えた。
朝おきたままシーツはくしゃくしゃ。
まぁいいいや、どうせもっとくしゃくしゃになるし。
なんて思いながら、
舌を絡めながら、
薄目をあけて足を進める。
彼女は私の飢えた獣みたいなキスに答え、私に抱き抱えられながら、後向きで足を進めてくれる。
首に回された腕が心地よい。
縛りつけられるのは嫌いだ!!って思っていたけれど、経験がなかっただけで、もしかしたら心地よいのかもしれない。
いや、彼女になら縛られたいのかもしれない。
なんて考えては自分らしくない思考に戸惑う。
だけど多分、どんな私でも彼女は受け入れてくれるだろう。だって、、ねぇ??

ベッドはもう足元。
長い長いキスはやまない。
彼女の足がベッドにぶつかる。もう先にはベッドしかない。彼女の腰を抱く。
一度ベッドに座らせてから、すぐに押し倒した。
久しぶりに唇が離れた。
笑みがこぼれた。
なんて、なんて、
なんて可愛いんだ。
全てを受け入れてくれて、全てを愛してくれる。
なんて、なんて、
愛しいんだ。
あぁ、これが、
“恋”なんだなぁ。
なんて、恥ずかしながらも思っていた。


離れた唇から笑みがこぼれたのは私だけじゃなかった。目をあけた彼女は、
ふふって笑って
『のっち、、獣みたいww』
優しく言う。
『・・・うん。多分狼あたりかも・・w』
なんてふざけて答える。
二人して小さく笑い合い、彼女は続ける。
『のっち、、。』
『ん、、、??』
『・・・たまってんの?ww』
『ふぇっ!!!!?』
いきなり変なこと聞くから、変な声でた。それを見て彼女はまた笑う。
『た、、たまってんに、き、決まってんじゃん。。』
そりゃそうだ。たくさんの関係を切ったんだから。
もうずーっとキスもしてなければエッチもしてない。
『ん、、ゆかも。。』
優しく微笑みながら、
ドキドキすることを言う。
『もうどこも行かない?』
私は一つ頷いた。
『絶対だよ?』
また一つ頷いた。
『もうゆかだけ、、ね?』
頷く。
『約束できる?』
『うん・・ゆかちゃんしか見ない、、ように、す、る?』
『なんよそれ〜ww』
恥ずかくてはっきりしない私に、彼女は怒るわけでもなく、笑ってくれた。
『ゆかは、ずっとずっとずーっと、のっちだけなんだよ?知ってるでしょ?』
上目使いされるとやばいって。かわいすぎです。
『うん。知ってる。ごめん。だけど、、もうゆかちゃんだけって思うし、、』
うまくしゃべれない。
『ん、ありがと。もう大丈夫だよ?わかったから』
いつまでも優しい彼女。
なんだか情けない自分に少し腹が立った。こうゆう態度が今までずっと彼女を苦しめていたんだ。変わらなくちゃ、いつも優しい彼女だって不安になるだろう。私は彼女を不安にさせたいわけじゃない。
『ゆかちゃん・・??』
呼んでおいて疑問系になってしまった。
『ん??』
優しい瞳でこっちを見て首を傾げてる。

『好きだよ。』
口にしたら簡単な言葉で、伝わるのか不安になった。
だけど、彼女の瞳が少しだけ潤んだのを見つけて、伝わったんだなって安心した。
安心したら興奮していた体が勝手に動きだした。
彼女の上に重なって、
またキスをした。
『もうどこもいかんよ。』
彼女の瞳からきれいに涙が一粒おちた。
うれしそうに笑う彼女を見て、本当に好きだなぁって思った。


何度も抱いたことのある
その細い体は、
少し熱を持っていて、抱き締めるとあったかかった。
涙を拭ってあげた自分の指が震えててかっこわるかった。
緊張してる。。
自分でもわかる。
気持ちがあるセックスはこんなにも緊張するのか。
何度も見たことあるくせに、まだ服だって着てるくせに、体は興奮してるし、頭は妙に冷静だしで、手順すら忘れた。
『・・のっち??』
名前を呼ばれて我に帰る。
『し、ないの・・??』
情けない。
『いや、するするする!!』情けなすぎる。
彼女は笑ってる。
『いやぁなんか緊張しちゃって・・・ごめ、ん。』
笑っていいよって顔をする。あぁ、かっこわるいこと言っちゃった。
ちょっと自己嫌悪。
彼女の首元に顔を埋めて、照れ隠し。
よし。
心の中で小さく気合いを入れて彼女にキスをした。
触れただけのキスはすぐに変わった。
獣みたいに飢えたキスに。


〔A〕

撮影中、私はのっちに気付かれたくない二つの思いを必死に隠した。無理に明るく振る舞った。
一つはのっちのことが
“好き”
なこと。
これはずっと隠し続けていることだから、そんなに難しくはないけれど、控え室の二人を見たら急に言いたくなってしまった。
幸せな空気をまとっている二人を見て私は自然と、
“壊したい”
そう思った。
二つ目は控え室の二人を
“見ちゃった”
こと。これはゆかちゃんとの秘密。
ゆかちゃんがどんなつもりなのかはわからないけど、私にはこの秘密は不幸中の幸い。最初は戸惑ったけど、考えてみたら、
知らん顔してのっちに近付ける。
ってゆう特典があった。
ずるいって言われてもいい。だって、、、




先にずるいことしたのはゆかちゃんだもん。


撮影も終わって控え室に戻る。スタッフさんと話をしていたから少し遅れて戻ったら、ドアをあけた瞬間、ゆかちゃんの手を引っ張るのっちにぶつかりそうになった。
のっちはそれを器用にかわし、急ぎ足で行ってしまった。
———悲しかった。
ゆかちゃんの手をとること。ううん、そんなことが悲しいわけじゃない。
バイバイも言わないこと。そんなのはたまにある。


“目もあわせてくれなかった”こと。
悲しかった。
のっちの目には私は映ってなかった。
のっちは今ゆかちゃんでいっぱいなんだ。
なんで、なんで?
なんでよ・・・。
あ〜ちゃんはいつだって
のっちでいっぱいなのに。
悲しい気持ちで力をなくした私はソファに崩れるように座った。
鞄をとり、特に用もないけど中から携帯をとりだす。
あ、メールきてる。
えっ!!??





『ゆかの、のっち。
とらないでね??(はぁと)』



あ、何か外れた。





絶対に、絶対に、、
絶対に壊してやる・・・。








最終更新:2009年03月30日 18:24