Side N
あの後、ゆかちゃんも追いついて来て。
「なんなん?あんたら?」って二人で睨んでやったら、ビクビクしながらどっかに退散していった。
ふんっ。ご主人様をなめんな!
せっかく楽しんでもらおうと思ってたのに、なんだかやな思いさせちゃったな〜。
あたし達は気分を変えるために、ファミレスでご飯を食べる事にした。
「あやちゃん、ごめんね?」
注文したものが来る間に、きっと不安な思いをさせてしまった事に謝る。
「?何がですか?」
きょとんとするあやちゃん。
「ほら、さっきの三人組の男に絡まれて、やだったでしょ?」
そう言うと、あ〜って顔をして
「いえ!ぃや、少し怒ってしまいましたけど…。彩乃様が来て下さって、彩乃様にあのように言って頂いただけで、私はとても嬉しいです。」
ホントに嬉しそうに言ってくれるから、あたしの気持ちも安らぐ。
「ゆかもごめんね?ゆかがもっと気に掛けてあげとったら、はぐれんで良かったのに。」
「そんな!ゆかちゃんは悪くありません!私が勝手に止まってしまったんですから。」
「…もう。あやちゃんは、ホンマにええ子じゃね〜。」
ゆかちゃんはぽんぽんとあやちゃんの頭を撫でてあげてる。
あたしも撫でたい。けど向かいに座ってるから、届かん。
「あ、ゆかちゃん。あたしの分も撫でといて?」
「撫でるで良いの?」
ふいっとこっちを見て聞いてくるゆかちゃん。
「うん。他に何を?」
「のっちの場合…こっちじゃろ?」
がばっとあやちゃんを抱きしめるゆかちゃん。
「ゆ、ゆ、ゆかちゃん!」
びっくりしたあやちゃんが、声を上げる。
あたしも思わず口が開いてしまった。
それも、間違いじゃないですけど…。
「あれ?違うん?さっきもしとったし。」
まったくで、しかも公衆の面前で堂々と…。気付いた時はちょっと恥ずかしかったw
「…じゃあ。それで。」
「ん。そういう訳で、もう一回♪」
また、ぎゅっと抱きつくゆかちゃん。ニコニコ楽しそうなゆかちゃんを見て。
「ってぇ、ゆかちゃんがしたいだけなんじゃぁ…?」
「えへwばれた?」
「はぁ〜、まったく〜。」
そんなゆかちゃんに呆れながらあやちゃんを見ると
「ふにゃぁ〜。」
さっきから、撫でられたり、抱きしめられて真っ赤になってるあやちゃん。
見てるだけで、なんて微笑ましいんですけど。
「おまたせしました。」
注文したメニューが運ばれてきた。
あやちゃんはいつもは持ってくる方だから、なんだか申し訳ないらしい。
なんだかんだで、おなかも一杯になって、もう少しお店を回って帰る事にした。
帰りの車の中では、見たものや感じたことを目をキラキラさせて話してくれるあやちゃん。
でも、途中で何か気付いたらしく。
「あ…。申し訳ありません。私ばかりお話してしまって。」
「ん?別に気にしなくて良いよ?あやちゃんが話してるの聞いてるだけで楽しいけぇ。」
「そうなんですか?」
「うん。そ〜なの〜。」
家に着くと、あやちゃんが先に中に入って、迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。ご主人様。」
礼儀正しく礼をして、ちょっと違うのがメイド服じゃないってとこ。
「一緒に出掛けてたのに、わざわざせんでもw」
「ぃえ!これが、私の仕事ですから。」
「ははwそうだね。」
この辺、あやちゃんはキッチリしている。
これからまた、あやちゃんはメイドに戻る。まあ、外でもそうだったけど…。
外で、家では見れない表情がたくさん見れたから、ちょっとだけ寂しいと思ったんだ。
それでは、後ほど伺います。そう言ってあやちゃんは行ってしまった。
あ。コレ渡すの忘れてた。
…ま。後でいっか。
部屋に戻って、ベットに背中から身を投げる。
ふぅ〜。
『私のご主人様は彩乃様だけです!』
やばい。思い出すだけで顔がニヤケるw
あやちゃんのこと、好きだとは思ってたけど。
予想以上に好きになってたの、今日気付いた。
あやちゃんがはぐれた時、側に居なくて寂しかった…。
あやちゃんが男に掴まれてるの見たら、腹が立った…。
あやちゃんを抱きしめた時、やわらかくて、ドキドキした…。
顔が熱くなる。
「も〜、今さら何なんよ?」
夜になって、寝る前には必ずあやちゃんがやってくる。
「明日の準備は、お済になられましたか?」
明日は、学校だった。でも。特に用意するものはないし。
「うん。大丈夫。」
「それは、良かったです。」
あやちゃんを見てると、やっぱ可愛いな〜。
「あ。そだ。」
ふと思い出して、テーブルにおいて置いた袋を手に取り、あやちゃんへと渡す。
「これは?」
「今日、付き合ってくれたお礼。開けてみて?」
不思議そうな顔をして、袋の中身を取り出すあやちゃん。
「うわぁwこれぇ…。」
あやちゃんの手には、あの時その首元で揺れてた、ハートのネックレス。
「それ、着けたあやちゃん、めっちゃ可愛かったからw買って来ちゃった。」
「よ、宜しいんですか?私なんかが頂いて?」
「お礼なんだから、良いに決まっとるぅ。」
「あ、ありがとう、ございます…。」
あやちゃんが言葉に詰まる。と思ったらうっすら涙目のあやちゃん。
「ちょちょちょ、あやちゃん!何で泣くん?」
急な事で、焦ってあたふたするあたし。
「だ、だってぇ、彩乃様から、こんな素敵なモノを…だから、嬉しくてぇ。」
あ〜、もう、ホントにこの子はぁ…。
あたしは、あやちゃんを優しく抱きしめて、その髪を撫でる。
「彩乃様?」
「それ、あたしの変わりだから、ちゃんと着けてよ?あたしが居なくても、あやちゃんの側に居られるように。」
「は、はぃ。」
「それから、また遊びに行こうね?」
「宜しいのですか?またご迷惑をおかけするかもしれないのに。」
あたしは体を離して、あやちゃんの手を握ってみせる。
「大丈夫!次はこうやって手ぇ、繋いどくからw」
繋がれた手を見て、ドギマギしてるあやちゃん。
「絶対…離さないから…。」
真っ直ぐあやちゃんを見つめる。
「ぁ、ぁ、の、…ぇ…と…。」
びっくりしてるのか、言葉が続かないあやちゃんは、必死に言葉を探している。
「あやちゃん?」
そっと名前を呼ぶと
「あ!あの!すみません!失礼致します!」
繋いでいた手を離れて、勢い良く部屋を出て行ってしまった。
…まず、かったかなぁ?たははぁ…。
Side A
彩乃様のお部屋を出た私は足早に、自分の部屋へと向かい。
その間にも頭の中は、さっきの彩乃様の眼差しと言葉が離れないんです。
なに?
何なんですか?コレ。
私、おかしいです…。
ようやく部屋にたどり着き、ドアを閉めた瞬間、ペタンとその場に座り込んでしまう。
途端に、彩乃様に握られた手が熱いのに気付いて。
彩乃様の部屋に居る時からドキドキしていた心臓は、さらに激しく動いて。
何かが胸に突き刺さってるみたいに。なぜか…苦しいです。
分からないです。
手の中には、先ほど彩乃様から頂いたネックレスがあって。
『あたしの変わりだから。…あやちゃんの側に居られるように。』
その言葉を思い出して、また苦しくなる。
「彩乃様…。」
ネックレスをぎゅっと握り締めて、名前を呼んでみても、訳の分からない苦しさにただ涙が止まらないです。
彩乃様。これは何なんですか?
私おかしくなってしまいました。
—つづく—
最終更新:2009年03月30日 18:40