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梅雨に入った。
毎日雨、雨、雨。
ムッとするような湿度の中、放課後の教室では舞台発表の練習が行われていた。
のっちは目立ちたくないから照明担当になった。
ゆかちゃんは文化祭委員で忙しく、役にはついていない。
練習の動きを見ながら照明をどう当てるか、
どのタイミングで照らすのか、担当同士で話し合う。


『ごめん、今日塾だから帰るー』
『あ、うん。じゃあまた明日ね』


そんなやり取りが至る所で始まって、だんだん教室にいる人が減ってくる。
仕方ないもん。
受験生だし。
ついに照明担当の子たちもキリが良い所で話し合いを止め、
のっち以外は帰ってしまった。



こうなるとすることが無い。
ゆかちゃんは委員の集まりに行ったっきり戻って来ない。
どーしよ。
帰っちゃう?
でもなー…。
あ、そうだ。
あ〜ちゃんって何すんだろ。
静かに教室を出て隣の教室に向かう。
廊下側の窓越しに手に台本らしきものを持ったあ〜ちゃんと目が合った。
小さく手を振ると、あ〜ちゃんがこっちに向かってきた。


「あ、あ〜ちゃん何しと…」
「他のクラスの人は出入り禁止、偵察禁止。」


目の前で思い切り窓を閉められる。
ちょっとショック。
あ〜ちゃんは台本を開け、クラスの子たちと話し始めた。


あ〜ちゃんも忙しい、と。



本格的にどうしようか悩み始めた時、背後から名前を呼ばれた。


「のっちー!」
「ゆかちゃん!!委員会終わったん?」
「うん。やっとね。あ、のっちに良い情報があるんよー、聞きたい?」
「聞きたい!聞きたい!」


ふふんと鼻で笑ったゆかちゃんは、あ〜ちゃんを指差しながら満面の笑みを浮かべる。


「あ〜ちゃん、ヒロインやるんよ。ヒロイン。」
「えー!!ヒロイン!?待って、あ〜ちゃんのクラスってシンデレラじゃなかった?」
「そーよ。ってことは?」
「あ〜ちゃんがシ、シンデレラ?」
「ピンポンピンポーン!そして、あ〜ちゃんがシンデレラってことは?」
「あ〜ちゃんのドレス姿が…み、見れる」
「ふふっ、良い情報じゃろ?」


あ〜ちゃんのドレス姿を想像して、思わずにやけてしまう。
ゆかちゃんは王子様役の子に嫉妬しちゃ駄目だよ、なんて言って笑ってる。


ゆかちゃんはのっちの恋の相手があ〜ちゃんだと知ってから、
積極的に応援する訳でも協力する訳でもなく、
なんだか優しく見守ってくれてるみたいで、
その距離感が嬉しかった。

そうか。
あ〜ちゃんがヒロイン。
鬱陶しいこの季節も、それを希望に乗り切っていける気がした。
まぁ。
気がしただけなんだけど。


つづく







最終更新:2009年03月30日 18:58