ゆかちゃんは、時間が止まったみたいに固まってる。
「…うそ」
「こんな時に嘘ついてどうするん」
「だっ、だってゆかの事好きな風に見えんかった…!」
「見せんかっただけよ」
あたしは困ったように笑ってみせた。
…引っ越してから、後悔ばかりしてたから。
しばらくは忘れられなくて、彼女に似てる人と付き合った事もあったから。
ずっと後悔してたんだ。
「……なんだ。ゆか達、両想いだったんじゃね…」
今度は彼女が困ったように笑った。
そして、あたしはまた後悔した。
…どうして、あの時言えなかったんだろう、と。
きゅう、と胸の奥が苦しくなって、唇を結んだ。
なんだか後悔ばかり浮かぶ。
「…ゆか、あ〜ちゃんに会わなきゃ良かったのかな」
彼女も同じように、後悔してるのかもしれない。
「そうかもしれんね…。あ〜ちゃんも、家庭教師断っとけば良かったのかも…」
「……なんか、何してるんだろう…ゆか」
「…」
ゆらゆらと揺れる胸の奥。
彼女を抱いてから、それはもっと速さを増してあたしを蝕む。
「でも…」
優しく風が頬を掠めた。
彼女の声が、綺麗に風に乗る。
「あ〜ちゃんに抱かれた事に、後悔はしてない」
真っ直ぐ目を見つめられる。
綺麗な黒目がちな瞳に、心が揺れた。
…ああ、お願いだからそんな目で見ないで。
「…のっちには、内緒にしてて」
あたしはもう、後に戻れなくなるから。
「え…」
「のっちに知られたら困るじゃろ?…だったら、内緒にしてて」
いや、もう戻れないかもしれない。
胸の奥のゆらゆらが、更に激しくなった。
「あ〜ちゃん…」
「もし知られたら、あ〜ちゃんのせいにしていいから……ね?」
…彼女の体だけでも、あたしのものにしたい。
カナカナカナ…と、ひぐらしの鳴く声。
うだるような暑さのアスファルトも今は身を潜め、じんわりとした暑さの残る空気だけが体に纏わり付いている。
「はぁ…」
…何してるん?
あたし、ゆかちゃんに何言ったんよ。
—もう一人の自分が問い掛ける。
こんな事したって、何も残らんくせに。
二人を壊すだけなのに、何で?
冷静にあたしを叱るあたし。
…とうとう、暑さでやられたようだ。
そう…だ。
これは夏のせい。
この気温のせい。
…あたしは…もう…。
「はぁ……あつい…」
狂ってる。
最終更新:2009年03月30日 19:06