膵臓病には独特の膵臓痛があります。膵疾患には急性・慢性の膵炎や膵臓癌、膵臓良性腫瘍、膵臓嚢胞などがありますが、近年増加が目立つのは膵臓癌で、この40年程の間に4~5倍になってい.ます。また、胆石などによって発症する急性膵炎や、アルコールの多飲などが影響する慢性膵炎も増加傾向が認められます。
これらの膵疾患は40歳以後に多く、特に膵臓癌の悪性度が高いのはもちろんですが、急性膵炎でショック死をしたり、慢性膵炎で長期間の一進一退を繰り返す例も珍しくないため注意が必要です。
急性膵炎以外は初期症状が現れにくく、日常の痛みを見逃さないことも大事です。
膵がんをはじめ膵臓病はなかなか自覚がないのですが、
- 主に心窩部や左季肋部におこる。
- 背中や腰、肩などへ放散する痛みを伴うことが多い。
- 2~3日間続く持続痛がよくみられる。
- 背臥位で痛みが強くなるため前かがみの姿勢をとりやすい。
急性膵炎では腹痛はほぼ100%にみられ、激烈な痛みのために絶望感を伴うことすらあります。
慢性膵炎は、多くの場合膵機能がある程度保持される代償期が5~10年続き、その後膵の荒廃が進み、非代償期へと移行します。
この場合代償期には激痛を反復する症例や、比較的軽度の腹痛で経過する症例などがみられます。痛みが軽いものではむしろ「重圧感」、「張る・凝る」などの不定症状を訴えることが多く、なかにはほとんど自覚症状が出ない人もあります。
膵臓癌では、初期にははっきりした自覚症状が出ないことが多く、手遅れになるケースも多いものです。ただし全身倦怠、食欲減退、上腹部鈍痛や重圧感、体重減少などの症状がみられることがあります。
心窩部痛のみられる主な疾患
痛みの性質
疾 患
起こり方と誘因
他 症 状
緩 解
疝 痛 急性胃炎
過食・薬・酒・タバコ 悪心・嘔吐 絶食
消化性潰瘍
ストレス。周期性空腹時痛 胃・十二指腸後壁の潰瘍の際は背申の絞扼感や放散痛。吐血・下血 摂食
胆石発作
初期に心窩部持続痛として漸次増強し右季肋部に限局。過食・脂肪食・激動によって誘発される 発作後発熱・黄疸・疼痛性胆嚢腫脹を触れる 突然緩解することもある
持続性
激痛
急性胃拡張
腹部手術後とか重症感染症時などに急激に起る 黒褐色液大量嘔吐、上腹部
著しく膨隆、乏尿
消化性潰瘍の穿通
とくに小網内穿通は持続性激痛 背部へつき通る痛み
急性胆嚢炎
胆石発作に続発するか、単独に急に生じることもある過食・脂肪食,大酒、ときに胆石発作に続いて起る 胆嚢腫脹・圧痛。黄疸は認められないことが多い 絶食
急性膵炎
過食・脂肪食・大酒、ときに胆石発作に続いて起こる 悪心,嘔吐が激しい。背部痛な伴うこと多し 上半身を起して前屈すると多少楽になることがある
膵 癌
上腹部・背部の不定愁訴が長く続く 痩せ,背部痛。腫瘤を触れることあり 上半身を起して前屈すると多少楽になることがある
浸潤性の癌
漿膜を破るか、周囲臓器とくに腹膜へ浸潤 痩せ。腫瘤として触れる不定の上腹部症状
鈍 痛 慢性胃炎
過食過飲で再燃しがち 絶食
慢性膵炎
過食・脂肪食後に起る。持続性の心窩部痛 消化不良性下痢・脂肪便を起しやすい。痩せ 上半身を起して前屈すると痛みが和ぐ
横隔膜裂ロ
ヘルニア
臥位で起こったり、増強することが多い
肥満 むねやけを訴えることあり 立位をとる
最終更新:2008年04月17日 08:25