——それはとても単純でとても難しい方法、それは共に戦う仲間を増やすこと、あの少年は我々の仲間になってくれるだろうか。
私は彼に仲間になって欲しいと思っている、それと同時にあの少年には我々と関わらずに今まで通りの日常を送って欲しいと願う自分がいる。
怖いんだ、大切なモノを失うことが、私は弱いから、大勢を守り抜けるほど強くないから。今だってたった一人を守るので精一杯、自分の弱さに怒りすら覚える。
これから私達の戦いはより過酷なものになるというのに、こんな弱い自分で良いのか。
その時、一つの小さな——だけど無視できない疑問が私の中に生じた。今私の腕に抱かれているこの少女は強がっている私のことをどう思っているのだろうと、どうしても聞いておきたかった。
その時ローラが南の空を指差して「あ、ヘリコプター」と年相応にはしゃいだ声を上げる。
タイミングが良いのか悪いのか、それはやって来た、夜風を切り裂く回転翼、漆黒の機体、間違いないあれはクルースニクのものだ。
「予定時刻よりも早いようだけど」
「でも遅れて来るよりはましでしょ」
「それもそうね」
そんな会話をしている内にヘリコプターはみるみるホテルに近付いて、屋上ヘリポートの中央に描かれているHのど真ん中に着陸した。
「カミラ、ローラ!! 早く乗って!!」
そしてヘリコプターのドアが開くと同時、女の怒号が飛ぶ、少々面食らう私の横でローラは訳が分からないといった様子で呆然と立ち尽くしていた。
「——ナージャ、いったい何が!!」
「良いから早く!! 話は後で!!」
ナージャの言動・口調から寸刻を争う事態なのだと即座に理解し、ローラの手を引きヘリコプターに飛び乗った。
最終更新:2017年04月12日 16:04