(11)406 『蒼の共鳴-綻んでいく絆 後編1-』

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&br() 里沙は睡眠不足による過労と診断され、2日程入院することになった。 医師が言うには、睡眠不足の原因は心労によるところが大きいらしい。 いかにも仲間想いな里沙らしいなと、笑い飛ばしたかったが。 れいなの心に広がる、里沙への疑念。 考えすぎと言われたらそれまでなのかもしれない。 だが、れいなの勘は告げている。 ―――里沙には何かがある、と。 里沙には両親はおろか、親戚もいない。 そのため、愛がリゾナントを臨時休業にして里沙の付き添いに当たることになった。 愛の里沙を心配する気持ちは痛いほど分かるので、れいなは愛がリゾナントを臨時休業にすると言った時、 素直にいいよ、愛ちゃんの好きにしたらよかとと言うことが出来た。 ジュンジュンやリンリンは回復したばかりだし、小春と愛佳は学生しかも片や芸能人。 絵里やさゆみは付き添いに当たることが出来ないわけじゃないが、愛がかたくなにそれを拒んだ。 4日間もの間、皆にジュンジュンとリンリンを任せきりだったことを愛が気にするのは無理もない。 そして、皆に任せきりだった分自分がという想いを引いても、里沙の側に愛が居たいという気持ちは 分かりすぎるくらい分かる。 リゾナンター結成当初からの、同期。 れいな達が合流するよりも前から一緒にいて、ダークネスと戦ってきた戦友同士。 皆がそれぞれにそれぞれの絆を築いてきたように、愛と里沙の間には他の人間が踏み込めない領域がある。 共に過ごした時間のトータルは、自分の方が里沙よりも長い。 だが、過ごした時間の多さで絆の強さが決まるのではないのだと、愛の姿を見ているとつくづくそう思わされる。 おそらく、れいなが入院するとなっても。 余程の重傷でもない限り、愛はリゾナントを臨時休業してまで付き添うことはないだろう。 リゾナントの収入がそのまま、愛とれいなの生活費に当てられている以上。 そして、店の利益よりも毎日のように訪れてくれるお客さんのために、 ギリギリのラインで経営している現状を踏まえると。 たった1日の休みが与える影響は、れいなが思っているよりも大きいに違いない。 それを分かっていて、愛は里沙のためにと臨時休業を決めた。 里沙に対する想いの深さ、その強さには嫉妬する気すら起こらない。 だからこそ、里沙のここ数日の不可解な行動や態度が気になって仕方がなかった。 この嫌な予感が当たってしまうことがあれば―――愛が誰よりも傷つくのは目に見えている。 共に生活をする仲間、姉のような存在である愛が傷つくのはとても辛い。 そして、愛を傷つけるのが仲間であり愛とは違った意味で姉のような存在の里沙であったら。 何もこの身を縛るようなことはないのに。 雁字搦めに縛られて身動きが取れないような。 そんな感覚に襲われて、れいなは小さく短く息を吸った。 そうしたところで、この感覚が軽くなるわけではないと分かってはいても。 れいなは朝からずっと暇を持てあましていた。 リゾナントが臨時休業ということは、すなわちれいなには降ってわいた休日が出来たわけなのだが。 今の現状を考えるとどこかに出かけてこようなどと思えるわけもなく、時刻は既に夜の11時近くであった。 ロフトで音楽を聴きながら、ゴロゴロ過ごすれいな。 瞬間、携帯から奏でられるけたたましいメロディ。 珍しい相手からの電話に、れいなは不思議に思いながら通話ボタンを押す。 「もしもーし、絵里が電話って珍しいけど、どうしたとー?」 『………』 「もしもーし、絵里?」 『田中、だっけ。君の同期の2人、預かったから。』 「は?え、何言いよると? あんた、誰?」 『だから、預かったって言ってるだろ。 ギャルっぽい見た目どおり、頭悪いのか? とにかく、今夜12時、街外れの工場跡まで来い。 来ない場合、2人の命の保障はない。 後、仲間を連れてくる場合も命の保障はしない。 分かったな』 そう言って、切れる電話。 突然のことに、れいなの思考は停止する。 心の中で、絵里だけを呼ぶ強い声を幾ら上げても。 ―――その声に応えるはずの声は、聞こえない。 今度はさゆみだけを呼ぶ強い声を上げてみた。 こちらも、やはり返事がない。 全身から、サーッと血の気が引いていく。 体が勝手に震えて、カチカチと奥歯が音を立てた。 絵里やさゆみを攫える、その時点で。 ただの一般人であるわけがない。 相手は間違いなく、ダークネスの人間。 罠だとは分かっていた。 だが、れいなはこのことを誰にも言うべきではないと、心の声のボリュームを下げた。 誰にも聞こえないように、小さく細く。 さゆみはともかく、戦闘系能力を使える絵里までも攫ってしまう程の能力者。 自分1人では手に負える可能性は限りなく低い、そんなことは誰よりも自分がよく分かっていた。 それでも、れいなは1人で乗り込むことを決意する。 相手の声音から感じられたのは、言うとおりにしないと本当に2人をどうにかするであろう、殺気。 相手の要求を飲んだところで、相手が必ずしも約束を守るとは限らない。 だが、あの2人を守るにはその要求を飲まざるを得なかった。 (絵里とさゆを巻き込むなんて、やっぱりダークネスは名前通り、やり口が汚いと。 れーなを相手にしたいだけなら、直接れーなを攫えばいいだけのことなのに) 唇を噛みしめながら、れいなは携帯をスカートのポケットにねじ込む。 12時までは余り時間がない、急がねば指定された時間にそこに付くのは難しいだろう。。 この間のジュンジュンとリンリンのことがある以上、おそらく無事に帰れることはありえない。 卑劣な罠が待ち受けていると分かっていながら、それでもれいなを勝ち目の分からない戦いへと赴かせるのは。 ジュンジュン、リンリンを激しく傷つけたダークネスへの怒り。 そして、絵里、さゆみというれいなの同期を攫ったダークネスへの怒り。 絶対に、2人を助け出してみせる。 ―――キャップを深くかぶり、れいなは夜の街へと飛び出していった。 ---- ---- ----

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