(21)539 『蒼の共鳴-Game? It's not a GAME!!!』

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&br() 「…意外と大したことないね」 「そうだね、でも…前までのさゆみ達だったら、まず侵入すら出来なかったと思うの」 襲いかかってくるダークネスの構成員達など、最初から存在しないかの如く振る舞う二人。 リゾナンターの中堅、“亀井絵里”と“道重さゆみ”である。 武器を持って襲いかかってくるダークネス構成員達を、常人では視認不可能な速度での攻撃であっという間になぎ倒す。 構成員達が弱いのではない―――二人が強すぎるのだ。 海上の牢獄の警備に当たる構成員は、厳しい訓練を乗り越え、試験を突破した者の中から選定される。 その辺の能力者程度なら、赤子の手をひねるかの如く一瞬で抹殺することができるとまで言われる戦闘集団。 だが、今の二人にとっては―――有象無象と言っても何の差し支えもない、“雑魚”の集まりに過ぎなかった。 海上の牢獄へと、捕らわれた仲間“新垣里沙”を救い出すためにやってきたリゾナンター達。 以前のままの強さであれば、彼女達の言う通り侵入することすら叶わなかったであろう。 元“M”の能力者兼機器開発技術者である“保田圭”。 海上の牢獄に侵入する際、彼女の元で数日間、リゾナンター達は自分達に宿る力を完全に開花させるために時間を費やしてきた。 “共鳴因子”をその身に宿したリゾナンター達は、今までは自分達の力を完全に引き出せていない状態であった。 圭の元を訪れ、ダークネスとの決戦に赴くことを選択したリゾナンター達は自分達が本来持っていた力を目覚めさせることに成功する。 本来、人間の脳は30%程度しか使われていない状態である。 超能力者と言われる人間達は、個体差はあるが40%~50%程度。 超能力者はその、本来普通の人間が使えない領域を超えて脳を働かせることにより、常人では想像も出来ない超能力を行使し、並外れた身体能力を得ているのである。 圭がリゾナンター達にしたこと、それは―――今まで使われていなかった領域部分を完全解放するということだった。 それにより、リゾナンター達は今までとは比べものにならない力を得る。 そして、得た力は―――共鳴因子の働きで何倍にも増幅され、強大な敵を撃ち倒すに事足りるだけの巨大な力へと変わるのだ。 絵里もさゆみも、海上の牢獄に潜入してからまだ一度たりとも能力を行使していない。 己の身体能力のみで屈強な戦闘集団を瞬く間にねじ伏せていた。 「しっかし、何人いるんだか…絵里、飽きてきたんだけど」 「いい加減先に進ませてほしいよね、てか、時間勿体ない」 華麗に敵を撃ち倒しながら、絵里とさゆみは焦っていた。 基地内に潜入してから、20分弱―――海上の牢獄に何が起こったのか、既にダークネス本部にも伝わっている頃だろう。 今回の目的は里沙の奪還、そして全員で生還することが目的である。 余計な“援軍”を呼ばれるよりも先に、この基地の何処かに監禁されているであろう里沙を救い出し脱出しなければならない。 こんなところで手間取っている場合ではないのだ。 「さゆ、絵里の後ろに立って…一気に決めるよ」 「…ちゃんと急所は外してね、後、終わったらさゆみの手を引いてすぐに部屋出てよ。 “余計なもの”は見たくないんだからね」 「はいはい」 さゆみが自分の背後に下がったのを確認して、絵里は構成員達に向かって手を翳す。 刹那、数メートルにもなる巨大な“風の刃”が生み出され、構成員達めがけて飛んでいく。 目を閉じた絵里がまるで演奏会の指揮者のように手を動かすその度に、風の刃は方向を変え、構成員達の体に鮮やかな朱線を生み出した。 やがて、辺りに轟いていた絶叫が小さなうめき声へと変わった頃、絵里は指をパチン、と一つ弾く。 風の刃は途端にその場から消失した。 辺りに広がる朱の海に視線を向けないようにしながら、絵里はさゆみの手を引いて一気に部屋を抜け出した。      *    *    * 「しかし、脳の領域を開放するだっけ? それだけでこんなに変わるもんなんだね、みっつぃー」 「本来使われない部分を使うことが出来れば、人間の能力ってかなりのものらしいってのは知ってたんですけど、 実際、自分がそうなって見るとホンマ仰天するしかないっていうか…てか、久住さん、もうちょい緊張感持ちましょうよ」 「えー、いや、うん。 持ちたいのは山々なんだけど、ね」 「…ま、愛佳もあんまり久住さんのことは言えへんけど。 こうも歯応えないと、ホンマにここがもう一つのダークネスの基地なんか疑わしくなってきますわ」 絵里とさゆみよりも、奥のポイントから潜入したのは“久住小春”と“光井愛佳”のチーム。 暢気すぎる会話とは裏腹に、二人は襲いかかってくる敵を拳で、蹴りで鮮やかになぎ倒していた。 今までの自分達だったら、こんな会話をする余裕どころか、今頃とっくに屍になっていてもおかしくはない。 たった数日、その間自分達がやったことは殆どなかった。 圭の生み出した装置に寝転がり、起きた後の殆どの時間は圭や麻琴が収集してくれていた海上の牢獄に関するデータを頭に叩き込んだ程度である。 もしも、里沙を救い出すのにもう少しの猶予が与えられていたなら。 それを考えると、自分達のことなのに背筋が寒くなってくる。 小春も愛佳も、今まで組織などで厳しい訓練を積んできたわけではない。 だが、まるで…今の自分達はもう何年もの間厳しい訓練を積んできた戦闘員のように、身体能力のみで華麗に敵を打ち倒している。 自分の体が自分のものでないかのような、不思議な感覚だった。 敵の攻撃はまるで止まっているようにしか見えなかったし、ほんの少し力を込めて殴っているだけなのに、敵の体は宙を舞う。 「みっつぃー、ここ来て何分経った?」 「…20分超えましたね」 「一気に片付けて奥の方進もうか。 そろそろ、一筋縄じゃいかないようなのも出てくるだろうし」 「ですね、ここで無駄な体力消費しててもしゃーないですし」 「―――決まりだね、じゃ、みっつぃー、下がってて」 小春の声に、愛佳は小春の背後へと下がる。 刹那―――部屋の中心に生み出されたのはバチバチという激しい音を放つ、赤く蠢く電流。 まるで意思を持っているかのように、電流は四方八方へと一瞬で伸び、構成員達をあっという間に行動不能にしていく。 見た目よりも遥かに威力が高いのだろう、一部分でも電流に触れた瞬間、声すら出すことも出来ずに倒れていく構成員達。 数十秒程でこの部屋に居た構成員達を全て行動不能に陥れた小春は、愛佳と共に奥を目指して駆け出した。      *    *    * 「…亀井サン達と久住達は、奥に進ンだみタいだ、リンリン」 「ジゃあ、私達も早ク行かナいト」 小春と愛佳が侵入したポイントとは対角のポイントから侵入したのは、“ジュンジュン”と“リンリン”チームであった。 遠くの方で、大きなエネルギーが間隔を置いて二回弾けたのを感じ取ったジュンジュンとリンリン。 どっちも、パートナーは非戦闘能力保持者というチームが先行し、どちらも戦闘系能力を使えるチームである自分達が遅れを取っている。 戦闘中だというのにも関わらず、悔しそうな顔になるジュンジュンを見て小さく苦笑いするリンリン。 ジュンジュンとリンリンは視線を交わすと、バックステップで一気に後方に飛ぶ。 焦ったかのように距離を詰めてくる構成員達に向かって、二人はそれぞれ手を翳した。 刹那、二人の手からそれぞれ藍色、深緑色の“念動刃”が幾つも放たれる。 避けきれずに倒れていく構成員もいれば、運良く避ける者もいた。 だが、運良く避けた構成員は次の瞬間―――距離を一気に詰めていたリンリンの手によって焼き尽くされる。 そして、ジュンジュンの方へと飛び込んできた構成員は―――獣化したジュンジュンの手によって、一瞬にして吹き飛ばされた。 部屋の中で動いている者は自分達以外にいないことを確認した二人。 獣化の解けたジュンジュンは、腕に付けたブレスレットに力を込めた。 一瞬にしてジュンジュンの体は海上の牢獄に来た時と同じ、黒い戦闘服に包まれる。 「リンリン、行くゾ」 「ウん…新垣サン、きっト待っテまス」 二人は風のような速さで奥へと続く通路へと駆け出した。 *** 『こちら亀井・道重チーム、ただいま順調に奥に向かってます!』 『久住・光井チームも、グングン奥に向かってますよ!」 『ジュンジュンリンリンチーム、バッチリ奥に向かってまース!』 “共鳴”の仕組みを上手く利用したインカムを通じて、次々に仲間達から報告が上がる。 ジュンジュン、リンリンチームよりも奥のポイントから侵入したのは“田中れいな”、“高橋愛”のチームであった。 他のチームが自分達よりも先行したことに、戦闘中だと言うのにも関わらず愛の唇に小さな微笑みが漏れる。 れいなは背後から忍び寄ってきていた敵に回し蹴りを放ちながら愛に向かって声をかけた。 「―――だってさ、愛ちゃん。 ちょっとうちら、ぐずぐずしすぎたかもよ」 「そうやね、でも、能力の消耗は抑えておきたかったしの。 っと、れいな、そいつでラスト!」 「はいはい、本当、愛ちゃんは人使い荒いんだから」 軽口と共に、れいなは最後の一人目がけて鮮やかな正拳突きを繰り出す。 相手が崩れ落ちたのを確認し、れいなと愛は数秒程辺りを見渡した。 新たな敵が現れないことを確認し、れいなと愛は奥へと続く通路へ駆けだしていく。 リノリウムで出来た長い通路に響く、自分達の足音。 他のチームも今頃、同じ場所を目指して突き進んでいるに違いない。 インカムで都度連絡を取り合いながら、それぞれ奥を目指す。 追っ手や新たに現れた敵を倒しつつ、同時に何か変わったところがないか確認しながら移動していくリゾナンター達。 見取り図があれば、もっとスマートに行動出来るのだろうが、 生憎、海上の牢獄の地図データだけは圭と麻琴の数日にも及ぶ懸命な検索作業にも関わらず、見つけることが出来なかったのである。 必死に基地内部を駆け回るリゾナンター達の前に突如現れたのは、白衣に身を包んだ女性の立体映像であった。 それぞれその場で足を止めて、立体映像に見入る4つのチーム。 『リゾナンターの皆さん、初めまして。 私はダークネスの超能力研究機関“Awesome God”の最上位研究者、紺野あさ美と申します。 裏切り者のためにわざわざこんなところまで乗り込むなんて正気の沙汰とは思えませんが…まぁ、それはいいでしょう。 ―――これから、あなた達にはあるゲームに参加して貰います』 「ゲームとか、そんなもんにあーし達が付き合うと思っとるんか!」 『まぁまぁ、落ち着いて下さい。 ゲームのルールはいたってシンプルです。 これから、あなた達各チームにそれぞれ、能力者を送り込みます。 あなた達がこちらの送り込んだ能力者全員を倒すことが出来れば、新垣里沙が監禁されている部屋へ通じる通路へ案内しましょう』 「…どうせ罠にきまっとーと! れーな達が全員能力者を倒して弱ったところを叩くつもりに違いないっちゃ!」 『例え、罠だとしても…あなた達はそれを拒否することなんて出来ませんよ。 この海上の牢獄のメインコントロールは、我々ダークネスの本部にあります。 それが何を意味するか分かりますか? あなた達がどれほど血眼になって探しても、新垣里沙の元へ辿り着く通路は見つけられない、それどころか こちらは―――その通路及び新垣里沙がいる部屋を一瞬で爆破することだって可能ということなんですよ』 立体映像から告げられた言葉に、リゾナンター達は唇を噛みしめ、拳をキツく握り込む。 何も言えなくなったリゾナンター達を嘲笑うかのように、立体映像は再び口を開いた。 『あなた達は新垣里沙を奪還しに来たつもりかもしれませんが、こちら側からすれば飛んで火に入る夏の虫。 保田さんの元で本来持っていた力を目覚めさせたあなた達のデータを、私は一刻も早く手に入れたい、そう思っていたんですから。 大丈夫です、私は約束は守りますよ』 信用できない、と口に出すことは出来なかった。 否、信用するしないという問題ではない。 向こうは里沙の命をちらつかせ、逆らえば瞬時にその命を奪い去るとプレッシャーをかけてきているのだ。 誰もがこれはゲームなどというお遊びではない、卑劣な罠だと感じ取っていた。 例え向こうが約束を守ったとしても、その先に本当に里沙がいる保証など何処にもない。 れいなが言った通り、能力者との戦闘で傷つき消耗したリゾナンター達を倒すべく、 強力な能力者が今か今かと待ち構えている可能性の方が遥かに高いのだ。 だが、それでも―――皆の答えは、たった一つだった。 「分かった、そのゲーム―――リゾナンター全員、受けて立つ」 リゾナンターのリーダーである愛の言葉と同時に、皆それぞれ目の前に立つ立体映像をキツく睨み付ける。 卑劣な罠を打ち砕き、絶対に里沙を助け出してみせる、その想いは重なり合い、激しく共鳴した。 海上の牢獄へと攻め込んできた時よりも、遥かに強いエネルギーがリゾナンターの中に湧き起こる。 立体映像越しでも分かるというのか、“紺野あさ美”は満足げに微笑んだ。 その場違いな微笑みに強い苛立ちを募らせる八人。 『交渉成立、ですね。 では、今からあなた達の前に…能力者がいる部屋への通路を出現させます。 また、お会いしましょう―――もっとも、あなた達が生き残る保証はどこにもありませんけどね』 不愉快な言葉を残し、立体映像はかき消えた。 それと同時に各チームの目の前に出現したのは、奥の方へと伸びる暗い通路。 愛はインカムを通じ、別の地点にいる仲間達へと話しかける。 「…多分、ここから先はインカムで連絡を取り合うことは出来ん。 皆―――絶対に敵を倒して、そして全員で里沙ちゃんのところに行こう」 『当然、ここまで来てやられたら格好悪いもん』 『絵里とさゆみチームは絶対勝つの』 『あー、愛佳達だって負けませんよ、ね、久住さん』 『もちろん、絶対に新垣さんを助け出します!』 『ジュンジュンも、絶対勝ツ!』 『皆、頑張りマしょウ!』 インカムを通じて聞こえてくる仲間達の声に、愛とれいなは顔を見合わせて微笑む。 遠く離れていても、皆気持ちは一つ。 里沙を、絶対に助け出す。 それぞれのパートナーと視線を交わし合った後、目の前に出現した通路へと一斉に駆けだしたリゾナンター達。 ―――卑劣な罠が待ち受ける、絶対不利なゲームが幕を開けた。 ---- ---- ----

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