(05)021 『登場!新メニュー!』

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少し涼しくなったおかげか、なんだか、体の調子もいいんだよね。
そんな中、れーなから「助けて」とメールが来ましたよ?
何事かと思ってすぐに電話をかけてみる。
「もしもしれーな、絵里だけど、なんかあったの?」
「絵里、悪いっちゃけど、明日、極秘でさゆと三人で集まりたいけん、
ちょっと相談にのってくれると?」

『リゾナント』に着くと、もうさゆも来ていた。
「さゆ、れーな、おはよう」ドアを開けて、とびっきりの笑顔をふりまく。
「おはよう」さゆは明らかに不満な顔をしている。なんでだろう。
「でも絵里、30分遅刻なの」
「さゆ、絵里いつもこんな感じで遅れてくると?」
「だから、絵里と待ち合わせるときは、その分を計算に入れておくの」
「れいな、そんなん知らんかったけん、そのまま10時って伝えたとよ」

さゆも、れーなも言いすぎ。絵里だって、遅刻したくて遅刻するわけじゃないんだよ。
ただ・・・そう、お布団があまりに気持ちよすぎるのが悪いのだ。
うん、悪いのはお布団よね。

いや、そんなことで来たんじゃなかった。さっそく疑問をぶつける。
「それで、極秘にしないといけないほどの相談って何?」
「ここ1ヶ月、『リゾナント』の売り上げが落ちてきとると」
「どういうこと?」愛ちゃんはそんなこと、何も言ってなかったよね。
「近くにコーヒーショップのチェーン店ができたの。
うちより大きいし、メニューの数も多いから、お客さんがそっちに流れてるの」
「れいなの見るところやと、キャラメルマキアートが評判いいっちゃね」
「それはれーなが好きなメニューでしょ。この間、ウィンドウ正面の席に
座ってるの見たんだけど」さゆの情報収集能力はあなどれない。
「あ、あれは偵察やけん!たまに行っとうだけやし」
「もー、話をそらさないでよ。とにかく、ライバル店のメニューが
うちより魅力的ってことね」
三人のなかで年長という点をいかして、まとめてみる。


決まった。完璧だ。しばし満足にひたる。
 ・・・いや、何か騒がしい。
「さゆみが200円出したんだから、このシールはさゆみがもらうの」
「そうやなくて、シールめくらんと、ゲームのプレゼントに応募できんやろ。
れいなも100円出しとうと」
何のことはない、お菓子に付いてきたシールの取り合い。
「ちょっと、さゆもれーなもいい加減にしてよ!何のために絵里を呼んだのか、
まだ説明も聞いてないから」
静かになるお子ちゃま二人。えへへ。少しすっきりしたぞ。

「さゆに聞いたら、絵里が料理作るの、上手やって言うとったけん・・・」
「絵里には、何か目玉になるメニューを考えてほしいの」
二人に詰め寄られる。
一部の人からはpppなどと言われるけど、絵里はクールな、デキる女を自認している。
でも、実は人情にもろい。困った顔をされると弱かったりする。

「わかったわかった、それじゃ何か考えてみるよ。でも、このこと愛ちゃんは知ってるの?」
「れいなが勝手に動いとるだけっちゃ。具体的なアイデアが出たら話してみると」
「今日は愛ちゃん、店も定休日だし、お休みなの」
「・・・もしかして、今から絵里に何か作れと、そういうわけ?」
「そう」
やれやれ。
深刻な悩みでなかったのは幸いだけど、これは本腰を入れて
取り組まないといけないよね。

「じゃあ、今から新メニュー開発緊急会議を始めます」
「よーし!さゆみ、がんばっちゃうぞ!」
「れいなもがんばれいなやけんね。負けられんとよ」
さゆもれーなも、気合だけは一人前だなぁ。


「えー、まず最初に各自、新メニューのアイデアについて意見を自由に出してください」
なにごとも最初が肝心。主導権は渡さない。これが司会のコツ。
「れいなは焼肉っちゃね」
「さゆみはパフェがいいの」
「絵里はねー、チャーハンかな」
ひとまず、全員の発言を記録してみる。
これはブレイン何とかっていう形式だし、反論その他は我慢するんだよね。

お互い突っ込みたい気持ちを抑えて2巡目。
「えっと、カキ氷とか、おいしそうやろ?ブルーハワイとか。」
「さゆみは、リゾナント風リゾット。略してリゾリゾ。可愛くない?」
「絵里は手づくりハンバーグがいいな」
「これで6品出たの」
「じゃあ、他になければ、この中から新メニューの候補を決めます」

その言葉をきっかけに、アピール合戦開始。
「れーな、焼肉とか言ってたけど、ここは喫茶店だよ?」
「絵里こそ、チャーハンて。ここは中華やさんやないけん」
「そうすると、さゆみのリゾリゾに決まったの」
「ちょいちょいちょい!今は絵里が司会ですよ?勝手に決めないでください」
つい、使い慣れた突っ込みを入れてしまう。習慣って怖いよね。

「えと、焼肉とチャーハンはボツ。これはいい?」二人がうなずくのを確認する。
「あとは・・・さゆ、どうしてパフェがいいの?」
「れーなと愛ちゃんとガキさんがジャンボパフェ食べてる写真、お店に貼ってあるやつ。
あれ、すんごくおいしそうだったから」
「ふーん。れーな、どうだった、あのパフェ?」確かにあれ見て、さゆはうらやましがってたね。
「ラーメンとか点心とか、食べた後やったせいかもしれんちゃけど。
三人やと食べきれんかったとよ」
「じゃあ、却下。第一、あんな大きな器、用意するの大変じゃない。
小さな器も、パフェ専用になっちゃうから、ボツにするよ」


「残りはさゆみのリゾリゾと、れーなのカキ氷と、絵里の手づくりハンバーグだけなの」
口をはさんださゆをジロッとにらむ。司会はあくまで絵里だもの。
「さぁ、2回戦開始ですよ?」
「はーい。リゾリゾのいいところ。名前が可愛い」
「さゆ、中身のアピールはせんでいいと?」
「名前を考えただけで、まだ具とか何も決めてないの」

「れーなはどうよ。カキ氷っていってもいま5月だし、時期はずれだよ」
「リゾナントブルーにちなんどると。単価安いっちゃけど」
「うーん。さゆのリゾットは、時間がかかるから、喫茶店には向かないと思う。
あと、れーなのカキ氷だけど、うちはカキ氷の機械ないのに、どうすんの?」
「それは、絵里の能力でかまいたちを・・・」
軽く精神を集中させる。周囲の空気がかすかに動き、れーなの前髪が2~3本はらり、と落ちる。
「うわっ!ちょ、絵里!れいなの前髪が!何すると?」涙目のれーな、ちょっとかわいそうかな。
でもれーなのようなタイプは、圧倒的な力で屈服させておくと楽だよね。
野生の動物は、自分より強いものには絶対逆らえないんだって。これ豆知識ね。
「一般の人の前で能力を使っちゃダメって、愛ちゃんからいつも言われてるでしょ!」
軽く凄んでみせる。絵里はいつだって正しい。
さゆが意外そうな目で見てるけど、ほんとの絵里は、こう見えてせっかちなんだよ。

「さゆのリゾットと、絵里の手づくりハンバーグの対決になったと」
まだ気になるのか、前髪を触りながら説明してくれる、れーな。
「個人的にはリゾットがピッタリ合うと思うんだけど、調理に時間がかかるんじゃない、さゆ?」
「ハンバーグも仕込みしておく必要があるし、結局洋食やさんになるから、
どっちもよくないような気がしてきたの」
「候補がなくなってしまったとよ!どうすると?」
切り札は最後まで取っておくものだよ、れーな君。
「はーい。そんなときのために、絵里とっておきの、チーズケーキ?」
これには二人とも納得、してくれたよね、よね。

「異論がなければ、絵里ちゃん特製レアチーズケーキでいいですか?」
ぐうの音も出ないさゆとれーなを見下ろして、勝ち誇った笑みを浮かべる。司会っていいな。


お昼前にケーキの材料を買いに行ったから、さっそく三人で作ってみることにするよ。
「役割分担を決めます。ケーキ作ったことのある人?」誰も手を上げない。えーん。
「さゆみ、生クリームをクルクルしてみたいの」
「れいなは、卵の片手割り、やってみたいっちゃ」
「さゆ、今回のレシピは、生クリーム少し使うけど、ホイップしないんだよ。
あとれーな、卵は使わないよ。だいいち、そんな割り方して殻が入ったら面倒じゃん」
悲しそうなさゆとれーな。そんな目で絵里を見ないで。

レシピ
  • クリームチーズ   250g
  • プレーンヨーグルト 500g
  • 生クリーム     大2
  • バター       50g
  • ビスケット     適量
  • 砂糖        40g
  • レモン汁      適量
  • ゼラチン      7g
  • シナモン      適量

「はいれーな、ヨーグルトをざるにあけて、水切りして。
さゆは、土台にするビスケットを砕いて、溶かしたバターと混ぜたら型に敷き詰めて」

「どうしたの、さゆ?」動きを止めたさゆに聞いてみる。
「さゆみはこの間、絵里に塩味のケーキ食べさせられたから、少し疑ってるの」
「ちょっとした間違いじゃん。よくそんなの覚えてるよね」
細かい性格だなぁと時々思うことはある。べつに今言わなくてもいいじゃんね。
「じゃあ絵里も言わせてもらうけどさぁ、さゆが前に作ってくれたお弁当のおかず、
あれ焦げてたのに『さゆみが食べるんじゃないから、いいや』とか言ってたらしいじゃん。ひどくない?」
「そ、それはお互い様やけん、ドローにしたらいいと」
れーなが仲裁してくれて、ひとまずおさまる。さゆには、あとで謝っておこうかな。


ヨーグルトの水切りを終えたれーなが、ケーキの材料を不安そうに見つめている。
「どーしたの、れーな?」クリームチーズを混ぜながら、聞いてみる。
「れいな、シナモン食べられんと。だけん・・・」
「あ、そっか。じゃあ、シナモンは使わないから。
お客さんにも嫌いな人がいるかもしれないから、何か考えようか」
「香り付けなら、オイルとかジャムとかいいと思うの」さゆ、ナイスアイデア。
「リゾナントにちなんだものやけん・・・ブルーベリージャムとかは使えると?」
「れーな、それいただきますよ?混ぜると色合いもきれいだし」
レシピ変更。もっとも、ブルーベリージャムは青といいつつ紫なんだけどね。

  • ブルーベリージャム  大4

下ごしらえが完了したら、あとはゼラチン液と混ぜ混ぜして、冷蔵庫で冷やすだけ。
「3時間は冷やさないといけないから、れーなもさゆも、指で突付いたりしちゃ、だめだよ。
いい、絶対に突付かないでね」

そして3時間寝かしたあと、ケーキを出してみる。
「ちょっと!この指のあと、さゆとれーなでしょ」どう見ても指で押したあとがクッキリ。
「だけん、ケーキがプルプルして、揺れよる・・・ハッハッハッ」
「絵里が2回言うから、前フリだと思ったの」
頭を抱えながら、解決策を思いついた。絵里ちゃん天才。頭いい。

「はい、どーぞ。召しあがれ」切り分けて二人に毒見・・・もとい、味見させる。
「絵里、このチョコは・・・」
「なんで絵里の名前が入ってるの」
「しょうがないじゃん。二人がいたずらして、ケーキがへこんじゃったんだから。
ちょうどチョコペンがあったんで、パティシエールの名前を入れてみましたよ?」

愛ちゃんが帰ってきたので、試食してもらったら、大好評。
正式メニューに加えてもらうことになった。
「あ、でも絵里、お店に出すときは名前は書かんでね」
はぁ。現実は厳しい、よね。



























最終更新:2012年11月24日 07:48
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