(06)104 『Part(y)ing!!』

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「パーティ?」

光井愛佳の予知によって導き出された今宵の出撃は、
とある大物政治家の立食パーティ。
そこで闘う高橋のイメージが出てきたらしい。

あらかじめ潜入しておくのが一番であるとの結論が会議に諮られた。
当然手を挙げたのは、田中、久住の両名。
ジュンジュンは通訳して貰っている。
亀井は寝ている。

しかし、やる気と適性とは悲しいかな一致しないことが常だ。
「小春は顔が知れてるし…どう考えても、未成年にしか見えない人は入れないわ…」
新垣にその言葉で片付けられ、喜ぶ久住と落ち込む田中。

「じゃ、ガキさんも無理やな。アッヒャー」
長年の付き合いからのリーダーの遠慮のない一言に、発した本人でなく、
周囲のメンバーを一瞥するガキさん。目は口ほどに物を言う。

―あんたたち今、胸見たんでしょ?―
刺す様な、それでいて悲しげな表情に一同は涙した。



「ぱっとやって、けちらしてきよっせ!」
今会場となるビルの前に立つのは、高橋愛、ジュンジュンの偽りなき成人グループ。
リゾナンターって基本童顔。その事実を改めてつきつけられた。

お名前と招待券を…
「木下花梨です。」「ジュン…子です。」
田中作成のなんちゃって招待券で無事に関門を突破した二人。
華やかな会場に入ってゆく両名とは裏腹に、
熱いリゾナンカーの中でモニターを覗く7人。

「初めまして。木下財閥のお嬢さん、ですかな」

入った途端、えろそ…失礼、偉そうなおじさんに話しかけられるリーダー。
マイクを握る新垣の口から滑らかな言葉が
高橋、いや花梨の耳にある小型レシーバーへ告げられる。

『はい、そうです。いつも父がお世話になっております』
「はい、そうです。いつもちちちがお世話になっております。』
甘噛みした。完全に。
むしろいつもの彼女から見たら上出来な部類だが、
目の前のえっさんはそんなこと知らない。

『笑って、愛ちゃん』
慌てて彼女が微笑めば、えっさんの苦笑も微笑みに変わった。




「さっきの人なんか臭いでしたね」
「あっひゃ!あーしも思ったーほんまやのー」
えっさん(えろいおっさん)と別れ、
大声でそんなことを話す、木下財閥の令嬢達に頭を抱える新垣。

立食パーティという事で、中央のテーブルには処狭しと料理が並ぶ。
リゾナントのような一見あやしいメニューはない。

それにも関わらず、ジュン子は両手でバナナを貪り、
花梨は手をグーにして何も食べようとしない。

「いい、愛ちゃんはちょっと食べ方が…うん、自由だから、
 なるべく自重する感じ。摘まむ程度に…」

素直な高橋は、入る前の新垣との約束を堅く、いや過剰に守っているらしい。
相当我慢しているようで、唇を噛むクセが盛大に発動している。
いかん変な二人だ。お名前を借りた木下家を思い胸が詰まる。

「ガキさん、自分を責めないで」
ありがとう、さゆみん。そう言って目元を拭った新垣の耳には
胸が小さいから入れなかったからって、
そう囁いた道重の言葉が到達しなかった。



パーティは進み、
高橋はそれなりにお付き合いをしていた。
話し役には適していなさ過ぎるが、
聞き役としては感情豊かな彼女が上流の方々には新鮮だったらしい。
帰国子女ジュン子のミステリアスな魅力もなかなかウケた。

「通云駒先生が来られました!」
『はくしゅううううう!!!』
新垣の指示に、周囲とワンテンポずれて手を叩き出す二人。

本日のぱーちーの主役。
このほどお好み焼き屋を開いた
ちゅー議院議員都云駒先生が壇上に上る。

『愛ちゃん、きっとこの時を狙ってく…愛ちゃん?』
突如、マイクとカメラの電波が消えた。
敵襲だ、間違いない。

「みんな、行くよ!」
7人の指揮を執り、新垣が外に出ると、そこには黒山の敵だかりが。

「ガキさん…これ…」
今まで寝ていたくせに急に起きてきてシリアス決め込む亀井の
頬のよだれラインを嘲笑しながら、新垣は頷いた。




「(ガキさん?ガキさん?)」「(どしました?高橋さん?)」
高橋とジュンジュンも異変に気付いた。
「(ガキさんらと連絡出きんくなった)」

二人に緊張が走る。
悲鳴と共に、何処からともなく、ダークネスの下っ端兵が出てきた。
この様子だ、おそらく外も敵でわんさかなのだろう。
高橋はそう判断する。よそはよそ、うちはうち。
中の敵は二人で倒さないといけない。

あばあばする政治家は、SPが無理やり奥に引っ張っていった。
逃げ遅れた一般人を庇いながら、闘う木下家の二人。
能力をおおっぴらに使うのはまずい。
あくまで、ちょっぴり動ける一般人を装わなければ。

「高橋さん、けっこ辛い!」
「もう少したら、ガキさんたちが来てくれるはずや!」

背中を合わせて二人が会話している間に、
一人の女性を敵が切りつけようとした。間に合わない!

「ジュンジュン、後、頼む」



「愛ちゃん達、気付いてるかな?」
広範囲を攻撃する新垣のピアノ線を掻い潜りながら、
一体一体仕留める田中。

「だいじょぶっちゃろ。」
それは根拠のない言葉だと、田中が一番良くわかっていた。
高橋ほど戦闘に長けた人物はいない。
彼女が倒せない敵などいない。


しかし、それは彼女が「敵」と認識した場合。

亀井も道重もその脆さに焦りを感じていた。

早く中に入らなければ、早く、中に。


高橋愛は、騙されやすい。




「高橋さん!」
ジュンジュンが駆け寄った時には、彼女のドレスは紅く変色していた。
肩口と、右横腹。
一つは敵の切り傷。もう一つは、女の刺し傷。

咄嗟に瞬間移動で助けたはずの女は、腰に隠した短刀のようなもので、
高橋を貫いた。
そして翻って、先ほど自分を殺傷しようとした兵士の下へ。

「罠ダ…」
気付いた時には、もう遅かった。
高橋が必要以下に精神感応を抑えていたのが仇となった。
玉のような汗。眉間の皺が激しい痛みを訴えかける。
いくらリゾナンターが超能力者としても、身体はほぼ差異がない。
失血は、命の危険だ。

「気付くのが遅かったんじゃない?」
会場全ての人間が、同じ声、同じ姿で言う。
最初から仕組まれていたのか?

「昔の報告を読み返してね、見つけたのよ
 あんたたちのリーダーがお人よし過ぎて、大怪我したってね。」
ジュンジュンには半分ほどしか理解は出来なかった。
むしろ、聞こうとはしていなかった。



どん!!

地面を蹴り上げ、女に突っ込む、白と黒の獣。

「あらあら」
しかし、ジュンジュンの突っ込んだそこには、何もなかった。
女の身体をすり抜けたようだ。うまく避けたのだろうか?
構わずジュンジュンは何度も攻撃した。
それなのに、攻撃の感触は得られない。

自分は幻覚にかかっているのではないか。
時間がないのに。

『あなたのちゃんとしたデータはないけれど、
 間抜けなリーダーと同じなのね。騙されるお人よし』

ご丁寧にも中国語で話しかけてくる女に
ますます苛立ちを隠せない、ジュンジュン
『おもしろい能力なのはお互い同じよ、パンダちゃん』

焦りが大振りを生み、ジュンジュンに大きな隙を作り始めていた。
『さようなら、パンダちゃん』

しまった、と思ったときには、
女がジュンジュンの大きな懐に入り刃物を煌かせていた。



「っぐ…はっ…」

ボタボタと血を吐くリーダー。
すんでのところでジュンジュンは助けられた。
意識の定まらない瞬間移動は、ランダムになる。
高橋がパンダを運んだのは当該ビルの最上階。
ビル風が余計に高橋の出血を促した。

「ジュンジュン、ごめんな、あーしが…あ、アホやった…せで…」
ジュンジュンは泣きながら、首を横に振る。
許せないのだ、自分が。そして、このリーダーを侮辱するあの女が。

『ここにいたのね、パンダちゃん』
その死に掛けに助けて貰ったのね、良かったね、寿命が3分も延びたわよ。

先ほど、怒りと焦りで冷静さを失っていたことをジュンジュンは自戒する。
勘違いしないで欲しい。ジュンジュンは馬鹿ではない。
普段は日本語が「わからない」だけなのだから

―あの時高橋さんを刺したのも、ワタシを刺そうとしたのも、
 刃物ではなかった。あれは鋭く尖ったガラスだった―

―幻覚のようで、幻覚でない―
―女の身体は、目で見るのと近付いた時とでは大きさが違う―



『そろそろ良いかしら?お別れは、天国でどうぞ。』
女の慢心。

―なぜ、会場をここに選んだ?
 なぜ、パーティなのにあんなにムードのない明かりが?―
ジュンジュンの思慮。

痺れを切らして初めてあちらから走りこんできた女の身体が三つに分かれる。
その歪な形を見て、ジュンジュンは全てを理解した。

ギリギリまで彼女をひきつけると、
何もないところ目掛けてその拳を振り上げた。

ぱりーん!!
今まで女がいた場所に女はいなくなり、
今まで何もなかったはずの場所に身体がひび割れた女が
横たわった。

『ば、馬鹿な!!』

女は目を見開き、ジュンジュンを睨んだ。
『お前の力は、ガラス、つまりレンズを使った、屈折による攪乱だ。
 もっともワタシは、レンズを狙ったつもりで、
 今実像とレンズが一体を成しているとは思わなかったがな』

「ガラスにんげ。そーいったところだろ?」



「驚いた…ふふふ…そうね、ワタシはガラス…
 ただね、この力、使い捨てなのよね…もう二度と、元には戻れない…」

―道連れにするからね、あなた達の頭を―

女は不気味な微笑を配ると、
ひび割れた身体はさらに細かい粒子になる。

ジュンジュンは咄嗟にそれを掴もうとした。
しかし、掴めたのはわずかで、ほとんどは蜂の大群のように
群れをなして飛んでいく。

「くそっ」
その言葉を習ったリーダーの下へ急ぐジュンジュン。
あの粒ひとつに殺傷能力は低い。
だが、ぽっかりと開いた高橋の傷口では話が別だ。

大きな個体を相手にするならば、
自分は長けた能力者だ。

しかし、ああいう広範囲に渡る小さなものを打ち落とすのは
専門外と言っても差支えがない。
盾になるより他はないのだ

「お願いダ、間にあってヨ!!!」
ジュンジュンの悲痛な叫び虚しく、
高橋をガラスの風から守る盾とはなりえなかった。



「せぇぇいっ!!」
「ふ・アイヤー!」

亀井の風によって強化されたリンリンの炎柱が
ガラスを一粒残らず溶かし地面に這い蹲らせたからだ。

「愛ちゃん、ジュンジュン!!」

黄色と青色を除くリゾナンター達が、外から馳せ参じてくれたのだ。

「は、早く高橋さんを!」
両の手に桃色のエネルギーをためた道重が高橋の傷を癒していく。

「高橋さん、すんません。愛佳がもっとちゃんと予知できたら…」
「ううん…あ、しが…悪いし…」
「愛ちゃん喋らないの!」
どうやら高橋は一命を取り留めたようだ。

「お疲れ、ジュンジュン」
安心して、しゅるしゅるとパンダ化を解いたのを見計らって、 新垣が肩を叩いた。

「あの様子じゃ、愛ちゃん騙されちゃってた訳ね」
「はい…すみません」
「ううん、仕方ないよ。
 それよりありがと、愛ちゃんを守ってくれて」

メンバー皆が、高橋に駆け寄り、声をかけている。
新垣もまた、高橋の元へ向かった。



ジュンジュンはコンクリートと接合した、
もともと敵であったものの側に歩いた。
ビル風に、それはほとんど冷え、もとの透明なガラスになっている。

『まるで使い捨てじゃないか…お前はそれで幸せだったか?』
ジュンジュンは人知れず涙を零した。
それは、この女と自分自身に何の差異があるかわからなかったから。

自分は高橋と出会い、
彼女はダークネスと出会った。
違いは、そこだけだ。

能力は、強さと孤独を生む。そこに差はない。
彼女は前者を補強し、自分は後者を癒された。

高橋は、一度も味方を見捨てたことなどない。
その優しさが、今回の大怪我に繋がったとしても、
誰もそのことを責めるものはいない。

わかっているからだ、その優しさに自分たちが救われたことを。

いくら力があっても、それが何になる?
本当に苦しいのは自分たちの心なのだ。
その心を利用して、苦しみの元である能力を利用して
能力者を搾取する、ダークネスのやり方に、ジュンジュンは改めて怒りを覚えた。



「ジュンジュン、帰るよー」

そう言われ、ジュンジュンはガラスを地面から剥がした。
ガラスが土に還るかはわからないが、せめて墓を作ってやろうと思ったからだ。

久住と道重が肩を貸して歩いている高橋の小さな背中を見る。

『お前は、出会う人を間違えた』
ジュンジュンは何も言わないガラスにそう囁くと、
軽すぎるはずのリーダーの重みにさえ耐えれず
明らかにふら付く道重側から手を入れ、
高橋をリゾナンカーへと導いた。


―もうすぐ夜明け―


自分が出来ない遠距離攻撃は仲間がしてくれる
騙される高橋は仲間が導く


リゾナンターには、要らないものなど一つもない




















最終更新:2012年11月24日 08:44