(08)395 『リゾナンター外伝』

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《・・・キコエ・・・ル? レ・・・イナ・・・ ワた・・・しの・・・声が聞こえる?》

心地よい眠りを妨げられれいなは不機嫌になる。

(うるさいなぁ。誰ね? 気持ちよーく寝てる人の耳元で騒いでるのは)

《起きて。目を覚まして、そこから起きて》

(うっさい! れいなは眠いんだ。邪魔するな!)

《いいから起きなさ ── いっ!!!》

頭の芯を揺さぶられるような怒声にれいなの瞼がぱっちり開いた。
見覚えのない天井。ここがどこか考えるより先に視界の隅に映った光るものを避けるため、れいなは反射的に転がった。
さっきまでれいなの頭があった場所、白い枕の真ん中に銀色に輝くナイフが突き刺さる。
れいなは素早く身体を起こし辺りを見回した。

(病室? いや手術室か実験室って感じか)

さほど広くないタイル張りの部屋。その真ん中に置かれた手術台の上にれいなは寝かされていた。
黒づくめの男たちが手術台を取り囲む。男たちの手には大型のナイフが握られている。
男の繰り出した刃を避けるため、れいなは手術台の上から跳んだ。

(え!?)

れいなの身体は予想を超え、まるで重力を無視したかのように宙を舞い、一回転すると男達の背後に着地する。
再び襲いかかってくる男達をひらりと躱すと、一瞬で全員の急所に手刀をたたき込んだ。

(なんでこんなに身体が軽いと?)

倒れている男達と自分の手を見比べながら考える。


それよりここはどこ? なんでここにおるん? さっき耳元で叫んでいた女はどこいったと?
と思いを巡らしてると、部屋の扉が開きさっきの数倍の男たちがなだれ込んでくる。

「ちょっ! おまえら! なんね? なんで!? れいなのこと襲ってくるん?」

襲いかかってくる男を次々と打ち倒しながら訊ねるが、それに答える者は誰もいなかった。

《こっちへ!》

頭の中に直接さっきの女の声が響いてくる。
“こっち”という抽象的な言葉にもかかわらず、れいなには行くべき道が解った。
どこにいるのかもわからないはずなのに、その複雑な建物の構造が脳裏に浮かびあがる。
起き上がってくる男には目もくれず、れいなは部屋から飛び出し通路を走り出した。
向かってくる男をなぎ倒し、次々に現れるトラップを避けるように通路を全力で跳ぶ!
ご丁寧にそのイメージはトラップの位置まで教えてくれていた。
数階分に相当する階段を一気に駆け上がり、通路の突き当たりにある大きな扉を勢いよく開け放つ。
そこは大きな吹き抜けのホールだった。

「よぉ~こそ、ダークネスへ!」

正面のせり出したところに立っている白衣を着た男が叫ぶ。

(やっぱり罠か!?)

れいなは反撃に備えて身構えたが白衣の男から殺気は感じられなかった。
れいなの動揺など無視して白衣の男は話し始める。

「君は満点の成績でテストに合格だよ!れいな君。
 戦闘能力、トラップの回避、そしてここにたどり着けるだけの判断力、どれをとってもベストだ。
 その素晴らしい力を是非ダークネスの役に立ててくれたまえ!」


「はぁ? おっさん、なに言ってんの?」

れいなが呆れた風に眉をしかめた。
仰々しい身振りを交えながら白衣の男が演説を続ける。

「わたしはおっさんではない。ここはダークネスのESP研究所。わたしはここの所長を務めておる」
「そんなこと聞いとらん!」
「まあ聞き給え。50人の暴走族と乱闘の末、瀕死の重傷を負った君を助けたのは我々ダークネスの医学だ。
 もっとも君はその暴走族全員を病院送りにした訳だが・・・
 その力が何倍にもパワーアップしていることはすでに君も気付いているだろう。
 その恩を裏切るというのかね?」

「断る! れいなは誰も命令も受けん!」

毅然とした態度でれいなは言い放つ。

「あくまでも我々に従わないというのであれば、ここから生きては帰すことはできんぞ」

所長がパチンと指を鳴らすとホールの左右の壁から兵士たちが現れ、れいなにサブマシンガンの銃口を向ける。
その数はざっと10人。れいなと兵士との距離は20mくらい。
今のれいななら銃を持つ兵士の2、3人を倒すことは可能だが、その間に間違いなく反対側にいる兵士に撃たれるだろう。
いくつもの脱出パターンを頭の中でシミュレーションしては没にしているれいなの頭上で所長が話を続ける。

「悪い話じゃあない。いままで通りの生活を保障する。たまに入ってくる連絡に従って簡単な仕事をするだけだ。
 仕事の働きが良ければもっといい待遇だって考えてあげよう。もしかしたら幹部にだってなれるかもしれんぞ。
 どうだ? 我々と一緒に世界征服を目指そうじゃないか。よぉく考えるがいい。 ファハッハッハ
 気が変わるまで閉じこめておけ!」

所長が兵士に命令しホールから出て行こうとしたとき、それは起こった。


兵士たちが悲鳴を上げ、構えていたサブマシンガンを落とす。

「なにごとだっ!? ん、あれは!」

所長が振り向くと黒い物体がブーメランのように回転しながら兵士たちを襲っている。
ただのブーメランと違い、それは常識ではあり得ない軌道を描いていた。
全ての兵士の手からサブマシンガンが離れるとホールの入口から9人の少女たちが現れる。
その中の一人、長髪の少女がさらに一歩前に出ると飛んできたモノを二本の指で軽やかにキャッチする。
彼女の人差し指と中指の間に鈍く輝く漆黒のカードがあった。

「やはり亀井君か。しかし!」

ダークネスが開発した特殊超合金をトランプ大のカード状に薄く削りだした武器だ。
敵に投げつけて戦う道具であり、カードのエッジには見ることができないほど極小ののこぎり状の刃が付いている。
投げるときの回転の方向によって打撃用にも殺傷用にも使い分けることが出来た。
ただし武器の特性からダークネスでも使いこなすことが出来たのは風を操る亀井絵里だけであった。
もう一人の少女が前に出ると、身体の前に両手を伸ばし人差し指と親指で菱形を作り念を込める。

「ハッ! ハッ!ハッ!・・・」

気合いと共に彼女の手の間から火球が撃ち出され、兵士の足下に落ちているサブマシンに次々と命中する。
マシンガンは炎に包まれ全て使用不能になってしまった。
それを見ていた所長がさらに驚く。

「チエン・リンまで!? ばかな、おまえらの能力(ちから)は封印されているはず! なぜここで使える!?」

それに答えるかのようにショートカットの少女が一歩前に進み出る。

「これはもう使いもんにならんよ。うちがメインフレームに侵入して全てのプロテクトを解除したさかいに」

そう言って自分の首に巻いてあるチョーカーを外してみせる。


それに倣うように他の少女たちも自分のチョーカーを外し床に投げ捨てる。

「光井君のハッキングの能力には今でも驚かされる。 さすがおちこぼれの『M。』だ。
 度重なる命令違反のせいで能力を封じられている最中だというのに君たちもダークネスを裏切るつもりか?」

所長は呆れたように両手を広げると苦笑いをしながら尋ねた。
少女達のリーダーと思われる少女が前に出てそれに答える。

「もう組織のいいなりになるのはごめんやよ。わたしたちはこれ以上人殺しはできないがし」

ここまでの出来事を先ほどからまるで他人事のように傍観していたれいながはたと気付く。

(この声・・・ さっきの?)

「高橋君、君たちだけでここから無事に逃げ出せると思っているのかね?
 この研究所にはESPシールドが施されてる。君のお得意の瞬間移動は無理だ。
 壁の一枚だって通り抜けることはできないのは君が一番よく知ってるはずだね。
 そのうえここには屈強な警備兵と最強の戦士達が大勢いる。
 彼らにも超能力は効かないよ。サイコバリアを持っているからね。
 新垣君の精神干渉も久住君の幻術もまったくの役立たずだ。さあどうする?」

所長は挑発するように身を乗り出した。
だが高橋は強気に笑って答える。

「だから警備の薄くなる今日この日をずっと待っとったんやて。ついでにこの子も預かっていくわ。
 わたしたちは絶対に逃げ出してみせる!」

その言葉を合図にリンリンが炎の柱を伸ばす。
亀井が風を操り炎は渦を巻いて少女たちの前にはだかる壁となった。
それと同時に少女たちは一斉にホールの外へ飛び出す。


目の前で起こっている状況がまったく理解できていないれいなだけが動かない。いや動けなかった。
その腕を高橋が掴んで引っ張る。

「あなたも」
「なんしよー!?」

れいなは掴まれた腕を思わず振りほどいてしまった。そんなれいなの瞳を高橋はじっと見つめる。

《お願い、一緒に来て》

さっきの女の声が頭の中に響く。

「この声はやっぱりあんたか?」
「ええ」

れいなの問いに高橋は首を縦に振った。

「わたしの名前は愛、高橋愛。いまは何も聞かずに一緒に来て。訳はあとでゆっくり話すわ。
 あなたの目的も同じ、ここから出ることでしょ?」

高橋はぎこちないウィンクをする。
れいなは一瞬だけ迷ったものの彼女たちについて行くことに決めた。
れいなにはさっぱりわからないことばかりだった。
あとでいろいろと聞き出さなければならない。とれいなは思ったからだ。

亀井のカードが向かってくる兵士達をなぎ倒し、リンリンの作った火の玉が追っ手の道を塞ぐ。
目的は小型ジェット機が置いてある格納庫。
非常ベルが鳴り響く研究所の通路を少女たちは走った。


「DEF-DIVAはいるか!?」

所長が壁に備え付けられているインターホンに呼びかける。
その場にいた兵士達は炎の壁に遮られて少女達を追いかけることが出来なかった。
インターホンのモニタにリビングルームとくつろいでる4人の女が映る。

「『M。』の連中が逃げた。捕まえてくれ。新入りのテストのために要員を割きすぎて兵士の数が足りん。」

少女たちの前では大見得を切って見せたものの、れいなに半数近くの兵士を倒されたうえ、
れいなが行動しやすいように研究所のセキュリティの一部を解除していたのである。
高橋は見事にその隙をついて行動を起こしていた。

「やだ、めんどくさーい」
「へぇ、小春が逃げたって? やるじゃん」
「あの子達に手をかけるなんて、なっち出来ないべさ」

どれもこれも非協力的な答えが返ってくる。
その中で「じゃあ、わたしがやっちゃっていい?」という甲高い声がインターホンに響いた。

「いいよ」
「梨華ちゃんがんばって」

お世辞にも心がこもってるようには聞こえない励ましの言葉を受けながら部屋を出て行く。
梨華ちゃんと呼ばれた女は廊下であるにも関わらず服を脱ぎだし全裸になる。
次の瞬間、人間にはあり得ない速さで駆け出すと、その後姿が徐々に四つ足へと変化していった。

「まったく、どいつもこいつも勝手なことばかり・・・ ん?」

DEF-DIVAの自分勝手な態度に苛立つ所長の後ろに立つ女の姿があった。


「なんでれいなのこと助けたと?」

通路を走りながられいなは高橋に訊ねた。
幸い今のところ追っ手の気配はない。

「れいなと『共鳴』したから・・・かな」
「共鳴?」
「そ、わたしと会話が出来たことがその証。わたしの能力(ちから)は共鳴した者と心で会話が出来る。
「『共鳴』ってゆーのは、んー言葉にするのが難しいんやけど、簡単に言うたら意志のベクトルが合ってるって感じかな」
「よーわからん」
「わたしもやよ。助けたかったから助けた。それじゃダメけえ?」

言葉のところどころに訛りの残る高橋の言葉を、れいなは信用してもいい気がしてきた。

「危ない!」

何個目かの通路の角を曲がる直前、光井が叫んだ。
予知能力を有する光井が、角の向こうに潜む危険を察知したのだ。
だが少女たちが足を止めるより早くそれは襲いかかってきた。
目に映ったのは巨大な黒豹。その前足の鋭い爪が先頭を走っていた高橋に迫る。
(間に合わない!)れいながそう感じた瞬間だった。
れいなの脇を追い越して黒豹に飛びかかっていく大きな人影を見た。
それは黒豹の爪をなんなく受け止めると、そのまま黒豹を廊下の反対側に放り投げる。
常人にはありえない力とその愛くるしい姿に、れいなは自分の目が信じられなかった。

「パ、パンダ?」

黒豹は低く唸るとパンダに向かって飛びかかった。
パンダは黒豹の爪を躱しその肩を捉まえると、そのまま絡み合って床を転がっていく。
史上稀に見るパンダと黒豹の戦いがここに始まった。


黒豹と戦っているパンダの口から片言の日本語が発せられる。

「オマエラ、イマノウチニイケ! ワタシモ、スグイク」
「ありがとう、ジュンジュン」

高橋が返事をすると少女たちは再び走り出す。
格納庫の扉を開くとピンク色に塗られた小型ジェット機がカタパルトに準備されていた。
非常ベルが聞こえたらこのジェット機を準備するようメカニックにあらかじめ後催眠をかけていたのは久住である。
催眠にかけられてることが本人に悟られることのないよう、何週間も前から少しずつゆっくりと行動した成果だった。
道重と久住がコックピットに座りテキパキと計器をチェックする。
残りの少女たちも小型ジェット機に乗り込んで後部座席に座る。

「セーフティー回路オールグリーン!」「エンジン始動!」

ジェットタービンが唸りを上げ格納庫が轟音に包まれる。

「いつでも飛べるの!」

道重がコックピットから叫ぶ。

「ジュンジュンがまだ!」

小型ジェット機のハッチのところで高橋が叫ぶ。
(早く!)祈るような気持ちでジュンジュンを待つ。
時間が経てばそれだけ捕まる可能性が高まるのだ。
リーダーとして脱出するタイミングを間違えてはいけない。
そのとき通路を走ってくる全裸の女が見えた。

「ジュンジュン!早く!こっち!」

全身に痛々しい切り傷を負っているものの、その足取りはしっかり地を蹴っている。


高橋はジュンジュンを一秒でも早く捉まえたくて思わず機体から身を乗り出してしまった。
別の通路から入ってきた兵士の銃口が高橋に向けられる。

「危ない!」

それに気付いたのは彼女だけだった。
だが危険を知らせるその声はエンジンの轟音にかき消され高橋の耳に届いていない。
彼女はとっさに高橋に覆い被さるように抱きつき兵士との間に割って入った。







「まことっ!」

高橋を庇い兵士の凶弾に倒れたのは小川麻琴だった
ジュンジュンが跳躍し機体に飛び乗るのとすれ違いに小川の身体がタラップに崩れ落ちた。
外の異変に亀井が気付き、投げたカードが兵士の構えていた銃を兵士の腕ごと切り落とす。
高橋が小川のもとに駆け寄りその身体を抱き起こした。

「今さゆを…」

コックピットへ向かおうとする高橋の手を小川が握りしめる。

「あたし、能力が弱くて不器用だからいつも足手まといだったけど・・・やっと役に立てた。
 今、重さんがこの飛行機を操縦しなきゃ全員が捕まる。あたしは大丈夫だか・・・ら早く行って、ゴホッ!!」
「まことっ! 一緒に戦った仲間じゃないか! 一緒に行くよ!」

高橋は動かなくなった小川を抱き上げると小型ジェット機に入った。
ハッチが閉まり小型ジェット機は轟音とともに外へ飛び出す。


れいなが小型ジェット機の窓から外の景色を見て驚く。
ダークネスのESP研究所は山脈をつくる山の一つをくりぬいて作られた自然の要塞だった。
山の中腹に自分の乗っている小型ジェット機が飛び出してきたと思われる穴が小さく開いている。
幸い後を追ってくる敵機はなさそうだ。今はできるだけ遠くに逃げること。



れいなが見ていた穴の隣に肉眼では見えないほど小さな窓があった。
その窓に映る二つの影が先ほど飛び立った小型ジェット機を見送っている。
この研究所の所長と白衣を着た女性。

「ありがとうございます。所長」
「これでいいのか?」
「ええ、これ以上暴れられて施設を破壊されるのも嫌ですし」
「Dr.マルシェ、いや紺野くん。君は一緒に行かなくていいのか?」
「わたしは研究ができればどこにいても一緒です。それに…」
「それに?」
「スパイがいますから、彼女たちの行動は全部筒抜けです」
「ほう」

マントの男は楽しそうに口元に笑みを浮かべた。
紺野はすでに見えなくなった小型ジェット機の行く先を見つめるように窓の外を眺めながら囁く。


「ね、里沙ちゃん」


小さな湖の湖畔に燃料切れで不時着し大破した小型ジェット機があった。
その脇に小さなお墓が作られている。
お墓を囲むように9つの影。
その中でもひとり泣き崩れている少女がいた。

「わたしがもっと早く気付けば・・・」
「さゆのせいじゃないやよ」

高橋は優しく道重の肩を抱いて小型ジェット機を見つめた。


燃料計に細工が施されていることに気付く者は誰もいなかった。
エンジンが不調を訴えて初めて、燃料タンクに燃料が入っていなかったことを知る。
道重と久住は必死に操縦桿を操作し機体をコントロールする。
遙か先に小さな湖が見えた。

「高橋さんっ!」

亀井がシートベルトを外し椅子から立ち上がり高橋のところに駆け寄る。
高橋も亀井の意図をすぐに理解したようだ。
高橋も立ち上がり二人が抱き合うと二人の姿は機内から消えた。

次の瞬間、二人は湖の対岸に立つ。
亀井は気を集中すると遠くに見える小型ジェット機に向かって風を送り続けた。
普段カードのような小さな物しか飛ばしたことのない亀井にとって、小型といえどジェット機を持ち上げるなんて不可能に近い。
それでも亀井はやらなければならなかった。みんなを助けるために。
送り続ける小さな風が紡ぎあい湖面にさざ波を立たせる。
やがてそれは人が立つことすら出来ないほど激しい風へと育ち、湖面は荒波へと変わっていった。
高橋が亀井の身体を支え、亀井はひたすら風を送り続ける。
小さかった機影は徐々にその大きさを増し、湖面スレスレをまっすぐ亀井の方向に向かってくる。
道重は小型ジェット機のフラップを最大まで開き、亀井が送ってくれている風を精一杯受け止めながら機体の速度を落としていく。

「みんな! 何かにつかまって!」

道重が叫んだ。墜落寸前の小型ジェット機をギリギリのところまでひっぱった道重は機体を湖面に重ねる。
と同時に強い衝撃が機体を揺さぶった。
降ろした車輪がはじけ飛び、湖面を滑りながらその速度は急激に落ちていく。
機体が傾き主翼が湖面を叩くと、小型ジェット機はその向きを変えて止まった。
そこは亀井から僅か数mのところだった。

治癒能力を持つ道重は不時着後、すぐに怪我をした仲間の治療にあたる。
そこで初めて小川麻琴の生命が事切れてることを知ったのだった。



ジェット機の部品で作られた十字架に手を合わせてから高橋は立ち上がりれいなの方を向く。

「わたしたちは街に降りて平和に暮らすつもりだけどあなたはどうする? 良かったら一緒にこない?」
「言ったっちゃろ。れいなは誰の命令も受けん」
「そう、残念だけど仕方ないわね。でもダークネスがこれで諦めるとは思えない。くれぐれも気をつけて」

高橋は寂しそうな顔を見せる。

「だけど・・・」

れいなは恥ずかしそうに続ける。

「れいなは借りたものは返す主義やけん。あそこから逃げる手助けをしてくれたことには感謝しとーよ。
 だから、もしあんたたちがダークネスに狙われるってゆーんだったら、そん時はれいながみんなを助けなきゃダメやん」
「ありがとう」
「そのためにも、いつも一緒におらんといけんね」

れいながニヒヒと子供のような笑顔を見せた。
高橋が右手を差し出す。

「ようこそ、リゾナンターに」
「リゾナンター?」
「『共鳴する者たち』っていう意味。わたしたちの新しい名前。わたしたちは今から生まれ変わるの」

れいながその手を握る。
そして9つの影がひとつになった。


                                     ─ END ─





追記

「あのくそパンダ! 今度あったらタダじゃおかないんだから! ってイタタタッ」

体中に包帯を巻いてベッドに寝ている石川の姿があった。

「石川さぁ~ん、そんなにカッカすると血圧上がってもっと傷が痛みますよぉ~」
「ほっといて頂戴! もう薬はまだなの!?」

半獣同士のタイマンに負けた悔しさと、明らかに相手が手加減しているのが判った石川はわき上がる苛立ちを唯にぶつけていた。

「おーい、追加の痛み止めもらってきたよ。具合どう?」
「あ、エリカちゃ~ん、なんとかしてくださぁ~い。石川さんがじっとしてなくてぇ~」
「ふふん」

三好は痛み止めを2錠自分の口に放り込むとコップの水を含み、石川と唇を合わせる。

「・・・ん」

無理矢理流し込まれた水と薬を石川はゴクンと飲み込んだ。

「ちょっとエリカ、なにすんのよ!」
「そんな恰好じゃ夜トイレにもいけないじゃないですか。今夜はわたしが精一杯看病してあげますから、唯を虐めないでください」
「もぅ、バカぁ」

頭まですっぽり毛布にくるまってすっかりおとなしくなった石川であった。





















最終更新:2012年11月24日 12:48
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