(08)472 『RとR(1)』

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――意外と落ち着いているな、私――

その少女は、郊外の廃ビルのコンクリートに立ち、両の瞳を階上の黒いボンデージに身を包んだ女 ―粛清人R― にむけていた。

風は、しきりと動いている。
風は、エントランス、階段、崩れかけた壁、砕けた窓ガラスのあいだを吹き通りつつ、
少女の袖口から伸びた鋼線をなぶっていた。

能力者のたたかい。――

「私は、負けませんよ」

と少女はつぶやいた。
粛清人の恐怖を知る者がきけば、気がふれたと思うだろうか。
Rはそれをただの虚勢だと受け取った。事実、双方の実力は懸絶していたのだから。

「あんた、私に勝てるって本気で思ってんの?」


やたらトーンの高い声が返ってきた。
相変わらずだな、と少女は目を細める。
少女の名は里沙。共鳴者と呼ばれるグループの一員だ。
マインドコントロールという他人の精神に入り込む特殊な力をもち、
鋼線を使った暗殺術の心得もある。

――かつては闇の組織に属し、スパイとして生きてきた。
かつての里沙にとって、生きることは連続する苦痛と暗黒を意味していたが、
愛たちとの出会いが彼女の世界に色彩を与えた。

温もりと、友情と、笑顔と、愛しさと、――後、なんだろうな。
仲間たちと過ごした日々が、里沙の脳裏を彩る。

今の私は、リゾナンターだ。
少女は風の中を跳躍した。




















最終更新:2012年11月24日 12:53