(10)117 『Comrades』

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「ねぇねぇみんな聞いた?」
目を輝かせて『リゾナント』に入ってきたのは、里沙。いま店内にいるのは、れいなと小春だけ。
(しめしめ。おあつらえ向きのメンバーじゃない)、と自らの幸運を再確認する里沙。
「新垣さーん、この前の激辛ダイエットはひどい目にあいましたから。
もうだまそうとしてもダメですよ~」
はなから信じる気のなさそうな小春。
「ガキさんはしっかりしとるように見えるっちゃけど、詰めが甘いけんね。
人のことぽけぽけぷぅとか言うとる場合やなか」と、れいなの鋭い指摘。
(詰めが甘い?甘いってなによ、今はそんなに詰めてないんだから)
里沙はムキになって反論したくなるのを抑えて話を続ける。

「ふふん。今日の私は一味違うんだから。聞かなくてもいいの?後悔するわよ」
精一杯もったいぶった言い方で、二人の興味をひく里沙。
「こ、れ。精神を集中すると胸が大きくなるんだって。つまり、ってことは・・・」
(愛ちゃんの話は聞くくせに私の話は聞かないんだから。今日くらい素直に聞いてよね)
などとぼんやり考えつつ、メモをぴらぴらと振りかざして説明する里沙。

「新垣さん、今度は信用してあげてもいいですよ」なぜか上から目線の小春。
「言ったでしょ?話は聞いてみなくちゃわからないって」
「でも、そんな情報どこでつかんできたと?れいな、早起きして録画したドラマとか
見とるっちゃけど、CMでもそんなこと言っとらんかったし」
「ぐ、偶然よ、偶然。街を歩いてたら、ね」
(田中っち、女の子は噂の出所なんか気にしなくていいから)
と心の中で突っ込む里沙。


「ま、いっかぁ。でも、それみんなに秘密でお願いしますね。光井ちゃんをびっくりさせてやるんだ」
と、メラメラと闘志を燃やす小春。
(年が近いとそういう確執もあるよね、うんうん)と納得する里沙。
「れいなも、さゆと絵里を驚かせてやりたいっちゃ」
こちらも思うところありのれいな。
(そういう意味じゃ、田中っち、あなたも不幸だよね)と、同情する里沙。
「よーし、あと一週間で1サイズアップするぞー」
「しょい!」円陣を組んで気合を入れる三人。
共通の悩みを抱える同士を得た里沙は、古来より伝えられてきた言葉を思い出しつつ、
最高に幸せそうな表情を見せる。
『一人より二人がいい、二人より三人がいい』


謎の組織内、薄暗い部屋で密談を交わす二人の人物。
「それで、計画の進捗はどう?」
「予定通りです、Dr.マルシェ。例の情報を広めておきました」
「そう。楽しみね」


「むむむむむ・・・・」
れいなの部屋では、里沙と小春とれいな、三人だけの秘密特訓中。
意識を集中させながら、能力(ちから)を発動させると、それぞれの指先がほのかに輝き始める。
「ちょ、ちょっと小春休憩!」
「小春休んじゃダメ」里沙の厳しい叱咤。
「メニュー考えましょうよー。ただ能力を使うだけでなくて、普通のバストアップ方法も
組み合わせれば、もっと効果出るような気がしませんか?」
「小春たまにはいいこと言うっちゃね。腕立て伏せ50回も入れとくとよ」
「ふぇーん」
(戦いの基本は常に身体。小春は恵まれた身体しとるんやし・・・胸以外は。そのくらいやって当然ったい)
と思うれいな。


その頃、階下の『リゾナント』店内。
「最近れーなたち、作戦会議終わったらすぐどっか行っちゃうけど、さゆ知ってる?」と、絵里。
「知らない。小春も一緒だから、また部屋にこもってゲームでもやってるんじゃないかと思うの」と、さゆみ。

耳をつんざく警報音が平和な空気を破る。
「みんな、出番やで。リゾナンター出動!」愛のかける号令のもと、リゾナンター達は一斉に出動していく。
「ラジャー!」

見渡す限りの黒い帯が視界を埋めるなか、勢い立って血路を開くブルーとイエロー、
15秒後の予測を元に攻撃対象の指示を下すパープル。
中距離の敵を幻惑して、戦闘能力を奪う合体攻撃を仕掛けるライトグリーンとレッド。
近距離に入り込んだ敵を容赦なく叩く、インディゴとグリーン。
そして、同じく能力の有効範囲に接近した敵を切り刻む、オレンジとピンク。

ほどなく、戦場を駆けまわるブルーとイエローは生じ始めた異変に気づく。
「ハァ、ハァ・・・イエロー、今日のダークネス、ちょっと多すぎん?」
「ブルーもそう思っとるかの。あーしもおかしいと思っとったがし」
個々の戦闘においては優勢なはずなのに、いつのまにか、また囲まれているという状態に。
リゾナンターの他のメンバーにも、疲れの色が見え始める。

「そこまでだ!この戦い、正義が勝つ!」
崖の上に仁王立ちになり、よく通る声で勝利を宣言する人物。少年のようにも見えるが、
リゾナンターの面々は逆光のため確認できない。
「ティフォン・ブリュ!」
呪文とともに蒼い旋風が巻き起こったかと思うと、瞬く間に近くの敵が弾き飛ばされ、
麻痺したかのように動かなくなる。
「さぁ、今だ!敵は退却し始めた!このチャンスを逃さずに」
ポカーンと見ているオレンジとレッド。無理もない。中~遠距離系の攻撃。
オレンジは風、レッドは電気の能力を使うが、とても先の旋風とは比べ物にならないほど威力は弱い。
あっけにとられていたリゾナンター達も、我に返って戦いを再開。
謎の戦士の助力もあって、なんとか敵の撃退に成功する。


「あなたのおかげで敵・・・ダークネスを撃退することができたわ。ありがとう」手を差し出すイエロー。
「大したことはないよ。戦いは勢いって言葉もあるしね」握手に答える戦士。
「あんた、いったい何者と?」全身の毛を逆立てて威嚇するブルー。
「僕は”青”の能力を持つ者。事情があって、素性は明かせないけど、また会うこともあると思う」
パステルブルーに彩られた戦闘服を翻すと、一瞬後にはかき消えたかのようにいなくなる戦士。

「すごいねー」「あの子、ちょっとカッコよくない?」
変身を解いて口々に賞賛の言葉を述べるメンバーをよそに、ひとり浮かない顔の里沙。
「ガキさん、何か気になることでもあるん?」そんなガキさんに声をかける愛。
「いえ、別にないんだけど、ただ・・・なんとなくね」
「愛佳は何か感じとると?」
「いいえ、何にも。でも、敵意は感じられへんかったですよね」うなずくメンバー。
「とにかく、味方やって言ってくれとるし、疑うんもよくないから、今日のところは置いておくね」
ひとまずその場をまとめる愛。


再び謎の組織”ダークネス”内部。
上級幹部出席の戦略会議で、自らのプランを発表しているのはDr.マルシェ。
「・・・さて、高齢化が進む我がダークネスにおいては若い人材の不足が深刻化しておりまして・・・」
ウォッホン!幹部の間から咳払いが聞こえ、あわてて取り繕うDr.マルシェ。
「・・・と、とにかく”リゾナンター”のリーダーである高橋 愛をうまく篭絡できれば、
この作戦はうまくいったも同然」
「それで、刺客は?」
「現在候補に挙がっているのは、一名。コードネーム・雪野という者が、既に作戦行動中です」
「任せる」
「ありがとうございます」


敵を撃退した後に治療等の必要がない場合、リゾナンター達は『リゾナント』に戻り、
その日の戦闘についての反省を行うのを日課としている。

「れーな、今日の動きよくなかったの」気になったことを口にするさゆみ。
「そうだよー。愛ちゃんと連携取れてなかったじゃん。夜更かししてイケナイことしてたのかなー?ウヘヘヘ」
(イケナイこと・・・愛ちゃんとガキさんがないしょ話しとったアレのことやろか?
それとも絵里とさゆがこの前・・・いかん、いろいろ想像してしまったと!)
顔が赤くなるれいな。
「ゆ、ゆうべはトレーニ・・・いや、な、なんもやっとらんし!なんもないっちゃ、なあ小春?」
「そーですよー。小春もトレー・・・むぐむぐ」とっさに小春の口を押さえるれいな。
(小春!秘密やって言うとるやろ)
(あ、そうでした、えへへ)
「全然全然。小春、ぐっすり寝てますから」
「ふーん。あやしいなあ・・・。ねぇガキさん、どう思いますか?あれ、脂汗かいてる」
絵里は、里沙の額の汗を拭う。
(かめって、こういうときはなぜかこだわるんだよね。田中っちと違って、私は肉体派じゃないし
ばれなかったかな・・・。やだ、肉体派って言っても、そういう意味じゃないから!)
「わ、わたし?そ、そうねぇ、かめたちの気のせいじゃない?」
内心では動揺しつつも平静を装う里沙。

「ガキさんが言うならそうかもしれないの。れーな、夜中にメガバーガー食べ切れなかったら
手伝ってあげるから、いつでも言ってなの」
「だけん、何もしとらんって言うとると。食べ物の話やないし!れいなの話聞いとらんやろ、さゆ」
「はーい、そのへんで。他になければ、これで終わります。みんなお疲れ様」
引き上げるリゾナンター達。

愛はれいなの様子が気になるのか、声をかける。
「れいな、疲れとるんか?早めに休んで、ぐっすり寝たらええよ」
「愛ちゃん・・・」秘密を共有できないもどかしさをこらえるれいな。


ウチは今、すごく緊張してる。センスのいい壁紙も、シンプルなソファも落ち着かない。
なんとか『リゾナント』のアルバイト面接までこぎつけたのだ。履歴書とか、必要な書類は組織のほうで
用意してくれた。相変わらずDr.マルシェは手回しがいい。
ただ、どこか抜けてるのか、写真はウチのもうひとつの顔、『シルキーウェイ』のときの衣装だった。
こんなのバレバレじゃん。速攻で指摘して、制服の写真と換えてもらったんだけど。

面接の担当は事前の情報どおり、店長の高橋さんと、田中さん。
「お名前は?」
「ぁぉ・・・間違えました、のえるといいます」
危ない危ない。いつもの癖で”ぁぉ”って言っちゃった。みんなはなぜか、ウチのことを
”のえる”じゃなくて、イメージカラーの青、”ぁぉ”って呼ぶから。
「背が高いっちゃね」
「よく言われます」160ちょっと超えてても、近頃はみんな大きいからそれほど珍しくもない。
あ、このお店は背が小さい人が多いんだっけね。高橋さんも田中さんもちっちゃくてかわいらしい。

「のえるちゃん・・・。悪いけど、脱いでもらってええが?」高橋さんの指示に思わず耳を疑う。
え、待って待ってこれ、ほんとに面接なの!?
「ちょ、愛ちゃん!」田中さんが止めてくれてるけど、いくらなんでも早すぎない!?
      • でも、これも『リゾナント』内偵任務のため。それにしても、芸能界より厳しくないかなぁ。
「・・・わかりました」
唇をかみしめて服を脱ぐ。『シルキーウェイ』の仲間、ピンクと黄がいたずらでウチの衣装を
隠すことがよくあって、ウチは下着姿で衣装を探し回ることもあるけど、初対面の人たちの
前で・・・とか考えてたら、すごく恥ずかしくって、興奮してきちゃった。

「チャーミングな腹筋やねぇ、ちょっと触ってもええ?」きたきた!確かに6つに割れているけど。
あっ、待って待って!昨日ウチの腹筋、ピンクと黄にマジックペンで落書きされたんだった。
マジックペンの影のせいで、余計に腹筋がたくましく見える。
「愛ちゃん!のえるちゃん、れいなも悪かったとよ、ほんとは靴脱いでもらおうと思ったっちゃん」
下着姿を見て、田中さん赤くなってる。高橋さんはもう傾きかけてるし、あとは田中さんを
こっちの世界に引きずり込むだけね。靴脱がないでよかったぁ。

翌日からウチ、のえるのアルバイト試用期間が始まった。



『リゾナント』の朝は早い。
ウチは通いで、8時に着くけど、田中さんと高橋さんはもう起きて、お店の準備をしている。
開店の11時までにその日の仕込み、掃除とセッティング、などなどを終えないといけないので、
これが意外と忙しい。
新入りの仕事は掃除から。お店の周辺を掃除したあと、店内をモップがけ。
手順を教えてくれる田中さんは小柄なのに、重いバケツも、テーブルもスイスイと動かす。
力には自信があるけど、まだ慣れないせいか、ウチにはなかなか難しい。
掃除を終えて、テーブルをセッティングしたらもう9時半。
一通りキッチン内の設備の説明を受けて、復習しているうちに、10時半。開店30分前だ。

それにしても。この制服。
田中さんや高橋さんは、普段着の上におそろいのエプロンを着けてるのに、ウチに支給されたのは
セパレートの、水着・・・?みたいなの。戦隊もののヒロインじゃあるまいし、
おへそが出てるのは喫茶店のウェイトレスとして、どうかと思うのだけど。

おっと、こんなことをしていたら開店時間。
カランコローン
「いらっしゃいませ~」練習した甲斐があって、ちゃんと声が出せた。
はじめてのお客様にコーヒーをお出しするのは、すっごく緊張したけど、いい経験になった。
ちょっとカップに指が入ったけど、見つかる前に指を抜いたから見つからずに済んだ。
その次のお客様は・・・途中でティーサーバーのレバーを押しちゃって、
すっごく濃い色になってたんだけど。苦情来なかったから、まあいいか。

合間に田中さんのところへ行ってみる。ウチの虜にして秘密を聞き出すべく、話しつつそっとボディタッチ。
あっ、田中さん怖い顔してる。ごめんなさい。今度はなんかウチの胸を見て、悲しそうな顔をしてる。
うーん、例の胸に関するリーク情報、効いてないのかなぁ。Dr.マルシェが研究成果だって言うから、
新垣さんに伝わるよう噂をばらまいてみたけど、効く人と効かない人もいるのかもね。

午後の忙しい時間を過ぎて、ようやく一息。
そういえば、『シルキーウェイ』のピンクこと久住小春も『リゾナント』に出入りするから、注意しないと。
とか言ってる間にいつのまにかピンク、じゃない、久住さんこっちを見てる。軽く会釈。


ウチは久住さんに隅っこに引っ張って行かれる。
(ちょっと!ぁぉ!学校は?ってか、あんた何でここにいるのよ!)
(あの、今日からバイトすることになりました、ごひいきに)
(ここはダメ!よそ行ってよ)
そんなこと言われても、ウチの目的はここ『リゾナント』の潜入調査なんだし。

隣のテーブルにお客様が来て、水を持って行こうとしたらけつまづいて転んだ。
でも、お客様には迷惑をかけなかった。
こぼしたお水はきれいな放物線を描いて、向こうの窓へ飛び散ったから。
たしかにウチはドジでマヌケでノロマだけど、これは足をかけた久住さんのせいだ。
文句を言おうと思ったら、姿が消えている。久住さんのバカ!

田中さんにはあんまり効果ないんだけど、高橋さんには評判いいんだよね、制服。
もしかしてこの制服のデザイン、高橋さんなのかなぁ。
高橋さん、「ちょっと力入れてみて」とか言って、「うわー硬い」とか喜んでる。
よーし、ちょっと聞いてみよう。
「田中さんって、女の子苦手なんですか?なんか、一定距離以上近寄ると
避けられてるみたいで・・・」
「そんなことないと思うけど、れいな人見知りやからね。そのうち慣れると思うわ」
そうなんだ。じゃあ、手っ取り早いスキンシップ、行ってみよう。
チャンスは最大限に活かさないと。

今日は、自宅に両親が留守ということにして、『リゾナント』に泊めてもらうようお願いした。
お風呂に入るのは、高橋さんの次に田中さん。さっき高橋さんが上がったから、
今は田中さんが入ってる。
タオルだけ巻いて、ウチは浴室のドアを開ける。
「おじゃましまーす。お背中流しましょう」
「わっ!き、急になんしようと!」あわてて体を隠す田中さん。
「一宿一飯のお礼です。背中流させてください」
「わ、わかったけん、ちょっと待ってくれったい」田中さんはタオルで前を隠して、背中を向ける。


「じゃあ、行きますね」スポンジにボディソープをつけて、軽くなぞるように。
「ひゃんっ!」可愛い声をあげる田中さん。わざと水をつけておいたので、冷たいはず。
「だ、大丈夫ですか?」しらじらしいとは思いつつ、声をかける。
「ち、ちょっとびっくりしただけやけんね。続けてくれていいとよ」
背中を洗いつつ、もう片方の手は下、上とあちこち触る。あくまでさりげなく。
肝心なところに手が届くのは、もう少し。田中さんの息遣いが少し変わってきた。あと一息。
怖くないから、我慢してくださいね。

と、ドアの向こうから高橋さんの声がする。
「ごめん、れいな、出動や。のえるちゃんは、お風呂入っててくれてええから」
田中さんが真剣な表情に変わる。
「悪いっちゃけど、用事があるけんね。背中、ありがとうったい」
立ち上がってそのまま歩いて行く田中さん。
さっきまでタオルで隠していたのに、急にオープンになって逆にウチのほうが照れてしまった。
でも、田中さんの体についても隅々まで情報通りだったのは、さすがDr.マルシェ。
おっと、ウチもゆっくりお湯に浸かっている場合じゃない、行かなくちゃ。


対峙するリゾナンターとダークネス。
おびただしい数のダークネスの戦闘員は、あたりを黒く染めている。
この日の戦闘においても、前回と同様、徐々に追い込まれて行くリゾナンター。
「そこまで!悪は必ず滅びる!」閃光とともに青い戦士の登場。
リゾナンターと青い戦士の共闘により、またも敵を撃退。
が、敵が最後に放った銃弾がれいなに向かう。リゾナンターも疲弊しており、近くにサポートできる
メンバーもいない。
そんな中、れいなをかばって銃弾を受け止める青い戦士。
青い戦士は一瞬体制を崩すが、「ではまた」と姿を消す。

「れーな、大丈夫だった?」
「れいなは平気っちゃけど、あの青い人がかばって撃たれたけん・・・」心配そうなれいな。


『リゾナント』へと戻ってきたリゾナンター達。
「のえるちゃん、もう寝たやろか」
「のえるちゃんって誰、愛ちゃん?」里沙が愛に尋ねる。
「あぁ、まだ言ってなかったけど、こんどアルバイトの子雇ったんよ。
愛佳より年下なんよ。今日は遅いから、また今度紹介するね」

「ただいま~」と店のドアを開けるれいな。
「あっ!」
テーブルにもたれて動かないのは・・・のえる。
「のえる!のえるちゃん、どうしたと!?」駆け寄ってのえるを揺さぶるれいな。
腹部からの出血は、テーブルの下に血溜まりを作っていた。
「ちょっと、私に任せて」さゆみが治療を開始する。ピンクの光に包まれる、のえる。
血の気が引いたようだったのえるの顔色が少しだけ、赤みがかかったように見える。

のえるが安定したのを見計らって2階のリビングへと移す。
慎重にのえるを運ぶのは、さゆみが雲の能力により発生させたパペット、うさちゃんホールド達。
「れいな、もしかして、のえるちゃんって・・・」れいなに青い戦士のことを確かめる愛。
「れいなもまさか、って思っとったけど、さっきれいなをかばって弾を受けた人と
同じところ怪我しとるし・・・」
「うーん・・・」意識の戻ったのえる。
「あっ、みなさん。もしかしてウチ、気を失って・・・」
何か言おうとした愛を止めるれいな。
「気のせいやろ。寝ぼけとったんかもしれんとよ」
のえるは腹部をさすってみるが、傷跡も残っていないことに驚く。
「あれ、ウチさっき撃たれて・・・あ、なんでもないです」
「ほら、やっぱり寝ぼけとった。もう遅いけん、寝とったらいいとよ」
「のえるちゃん、明日は休みでええよ。一日ゆっくりしとって」
「いろいろすみません。それじゃ、おやすみなさい」


ウチが一晩考えた結果。お店を出よう。
こんな暖かい人たちを裏切るなんて、やっぱりできない。
リビングのテーブルに書き置きを残しておく。
『いろいろ、ありがとうございました。もっとちゃんとお仕事覚えて、役に立ちたかったのですが
家の事情で、急に遠くに行くことになりました。
次に会うときは違う名前になっているかもしれませんが、またお会いできるといいですね  のえる』


「おはようっちゃ。あれ?のえるちゃんおらんと?」れいなはリビングでコーヒーを飲む愛に声をかける。
「あー、出て行ったみたいやねー」
「せっかく友達になれると思っとったのに・・・」少し涙ぐむれいな。
「うん。何かいろいろ事情があるんやろね」書き置きのメモをじっと見つめる愛。


ウチは指定されたポイントに移動して、本部に収容の要請をする。
「こちらコードネーム・雪野。転送願います」
「こちら本部。その必要はない。昨日の戦闘において君は敵対分子だと認識された。
よって、以降身分の保証はしない。繰り返す。本部への収容はできない」

途方に暮れて、どこへ行くあてもなくても、足は自然と『リゾナント』へと向かってしまう。
お店の前まで来たとき、ちょうどガレージから派手な車が発進するのが見えた。
「戦闘・・・!?行かなきゃ」
ウチも変身して、風に乗って移動する。


「愛ちゃん、もう駄目かもしれんと」膝を折り、荒い息のれいな。
「あきらめちゃ駄目!共鳴パワーを使えばなんとかなるはず」リーダーとして懸命に士気を保とうとする愛。
「でも、こう数が多いと集中する時間もかせげないの」能力の連続使用で息が上がっているさゆみ。

ウチは田中さん、高橋さん、道重さんを確認して近づく。
「僕が敵に切り込んで時間をかせぐから、その間にみんなは攻撃の準備を」
「でも、のえる・・・やのうて、あんたは怪我治ったばかりやし・・・」
「風の障壁が守ってくれるし、僕はそう簡単にはやられない。また会おう」

最大レベルの障壁を発生。普段の2倍。
残ったパワーを一点に圧縮して、爆発させる。・・・今だ!
敵の半数を巻き込んだ爆発。
ウチの意識が途切れる寸前、田・・・れいなさんの顔が浮かんだ、ような気がした。


轟音とともに吹き飛ぶ戦闘員。
共鳴パワーを同調させて、増幅。一気に放つリゾナンター。
「アタック!」愛の号令と同時に消滅する戦闘員。

「のえるちゃん!おらんとよ!のえるちゃん!」爆心に駆け出して必死にのえるを探すれいな。
「愛ちゃん、どういうこと?」他のメンバーを代表して絵里が尋ねる。
「あのね、のえるちゃんはね・・・」


それから一ヶ月後。
「田中さん、まーだそれやってるんですか?胸なんか大きくなるはずないですって。新垣さんの情報ですから~」
れいなをバカにしたような口調の小春。
「うっさい!これは絶対効くんやけん。小春は小さいままでおったらいいと!」
聞く耳を持たないれいな。
「小春、あとでちょっと来なさい。田中っちもいい加減あきらめなよ・・・」れいなの強情さにあきれる里沙。
「ガキさんも小春も、あきらめたらそこで終わりったい!」
(れいな、のえるちゃんのくれた情報、絶対本物やと信じてるけんね!のえるちゃんが戻ってくるの、待っとると!)


”ダークネス”本部。
「マルシェ君、例の潜入作戦はどうなったかね」
「申し訳ありません。残念ながら・・・」
「そうか。研究のほうを続けてくれたまえ」

研究室で端末に向かうDr.マルシェ。
「あーあ。せっかく準備した計画が全部パァか・・・
のえるが普通の生活を送れるように、いちおうデータは改ざんしておくけど、
あの子帰ってくるかなぁ・・・?うん、抹消、っと」一連のコマンドをキータイプ。
しばらく後、「承認」の文字がディスプレイに浮かぶ。

デスク脇に置かれた水槽。その中の金魚に話しかけるDr.マルシェ。
「例の作戦で流した噂、精神集中を繰り返すと胸が大きくなるかどうかは、
被験者の体質による、ってわかっちゃったんだよね・・・。
ガキさんと小春があきらめたらしいから、もうこの手は使えないか。
敵三名を疲労させて戦力ダウンって、けっこうおいしい作戦だったんだけどね」


「・・・そういえばあのレシピ、とうとう手に入らなかったなぁ」
デスクの上に置かれた一枚のチラシを眺めるDr.マルシェ。

ケーキセット 550円
  喫茶 『リゾナント』




















最終更新:2012年11月24日 15:40